【同友エコ2021受賞企業】 「地中熱」利用で、 エネルギー依存社会の変革をめざす CO2排出量と冷暖房費削減への取り組み 伊駒建設(株) 代表取締役峯吉伸氏(愛知)

 伊駒建設(株)は、自動車産業をはじめとする製造品出荷額が日本一多い愛知県で、地域に密着した建設会社として創業56年を迎え、公共工事と省エネで快適に暮らせる高気密・高断熱住宅の新築、リフォーム、企業向け地中熱利用換気システムの提案・設置をしています。

「地中熱」とは

 夏の気温と冬の気温を地盤が蓄えて、愛知県であれば1年中15~18℃(地域によって多少差がある)となっている熱エネルギーです。

 この特性を生かして、外気に比べて夏は涼しく冬は暖かい室内温度をつくり出せるので、冷暖房エネルギーを削減することが可能です。太陽光や風力を発電に利用する場合、天候や立地条件に大きく左右されますが、地中熱はその心配がなく、年間の気温差と地盤があればどの地域でも昼夜を問わず、夏でも冬でもほぼ一定の熱エネルギーを得られることから、最も安定性の高い自然エネルギーといえます。

「地中熱」との出合い

 2005年に、地球上のすべての「いのち」の持続可能な共生を課題とした愛知万博(愛・地球博)が開催された際、日本政府館に導入されていた地中熱利用換気システムと出合いました。当時、下請脱却をめざしていた弊社は、競合他社との差別化として地中熱を利用した省エネで快適な家造りを始めました。

 この取り組みにより、それまで特段注意していなかった住宅の気密性能と断熱性能の重要性に気づいて、現在では気密性能を表す C値=0・3(平方センチメートル/平方メートル)以下、断熱性能を表すUA値=0・45(w/平方メートル・K)以下という具体的な数値を定めて品質管理し、地中熱の効果を効率よく体感できる魔法瓶のような家を造っています。

「地中熱」の普及への取り組み

 東日本大震災当時、政府は再生可能エネルギーで創エネすることが可能な太陽光発電を積極的に普及させる方針を取っていましたが、原発運転停止による電力不足が急速に深刻化しました。太陽光以外の再生可能エネルギーとして地中熱も注目されましたが、発電しない熱エネルギーの普及は進みませんでした。

 しかし、昨今世界的にカーボンニュートラルとSDGsへの関心が高まり、これに取り組む姿勢のない企業の製品は購入しないという新しい価値観が浸透してきた結果、さまざまな分野の企業から問い合わせが増加し、CO2削減への取り組みが本格化してきていると感じています。

 現在では、住宅に加えて企業にも地中熱利用を積極的に提案しています

カーボンニュートラルの実現に向けて

 地中熱利用の意義は、省エネルギー効果だけではなく、現代社会のエネルギー依存体質の変革という側面もあります。人々の生活様式が従来のようなエアコンに依存するエネルギー消費型のままでは、太陽光発電や風力発電でいくら電力をつくり出したところで、カーボンニュートラルへの前進にはなりません。夏は上着が必要なほどの冷房、冬は半袖でも過ごせるような暖房など、行き過ぎた冷暖房による快適性に慣れた現代人の身体を、自然に近い形に戻し、「豊かさを実感できる簡素な暮らし」を実践することが、カーボンニュートラル実現の大前提であると考えます。

 本年度から政府や自治体が地中熱導入への補助金を大幅に増やしたことで、普及が大きく進むことを期待していますが、地中熱の周知・広報が積極的になされておらず、認知度が低いままです。

 当社は、地中熱利用を普及させる事でカーボンニュートラルの実現に貢献し、世の中から必要とされ続ける企業をめざします。

会社概要

創業:1967年
設立:1978年
資本金:1,700万円
事業内容:住宅新築リフォーム、施設新築リフォーム、公共工事など
URL:https://ikoken.jp/

「中小企業家しんぶん」 2023年 1月 15日号より