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すべての人の幸せにつながる感動農業めざして~農業生産法人 グリンリーフ(株)社長 澤浦彰治氏(群馬)

地域農業者が連携、新規就農者の支援も

有機無化学農薬で栽培するコンニャク畑に立つ浦澤彰治氏

 コンニャク畑が広がる群馬県昭和村。この地で、いち早くコンニャク芋の有機栽培に取り組み、さらに地域の有機農業者グループと「野菜くらぶ」を立ち上げ「感動農業」を展開するグリンリーフ(株)社長の澤浦彰治氏(群馬同友会会員)を訪ねました。

安定供給の仕組みづくりで付加価値創造

 グリンリーフ(株)は、現会長(澤浦彰治社長の父)が1962年、開拓農家が離農した跡地を購入したことから始まります。その2年後に生まれた澤浦氏は、「だから、自分は農家の生まれ」と胸を張ります。すでに中学の卒業作文で、「大規模な会社にして農業を行う」と宣言。今では、資本金9000万円の会社を率い、その夢を着々と実現しています。

「無農薬野菜がほしい」の声に燃えて

農業・食品産業競争力強化支援事業も活用して建てたパイプハウス

 夢の実現に向け、大きな転機となったのが、有機低農薬野菜の宅配事業を行う「らでぃっしゅぼーや」との出会いでした。

 学校卒業後、いざ農業に従事してみると、違和感がつきまとい、夢が持てない現状に直面します。少しでも曲がっていたり、虫食い跡があれば、それだけで商品価値は2束3文。そこで、農協や市場の言うまま、見栄えをよくするために農薬を多用し、家族にも食べさせられないような野菜を出荷していました。しかも、価格は買う人が決め、自分では決められない。自分の努力だけではどうにもならない、仕事として成り立たない農業の現実。

 そんなとき、無農薬野菜がほしいという「らでぃっしゅぼーや」と出会います。「市場が求める『いい野菜』と、食べる人(消費者)が求める野菜は、こんなにも違うんだ」とカルチャーショックを受けた澤浦氏。早速同じように既存の農業に行き詰まっていた仲間に声をかけたところ、「それこそ自分たちのやりたい農業だ」と燃えたった3人で、1992年に有機農業者グループ「昭和野菜くらぶ」を立ち上げました。

有機農業者で「野菜くらぶ」

 「市場の都合ではなく、本当に消費者が求めているものを生産し供給する農業」へと夢の方向性がしっかりと定まることで、次々と新たな挑戦が始まります。96年には、(株)モスフードサービスが無農薬野菜を栽培する農家を募集していると知り、「飛び込み営業」で契約成立。地域の農業者が連携し「安定供給」の可能性が高いことが決め手になりました。契約締結のため、「野菜くらぶ」も法人化しました。

 3人で始めた野菜くらぶも、今では54戸(個人と農業生産法人)が参加。生産する有機野菜も、コンニャク芋から大根、ニラ、レタス、小松菜、ホウレン草など40品目に及び、規模も拡大の一途をたどっています。

 野菜くらぶでは、年間の生産計画を立て、その後、定期的に集まって品質管理や進捗(しんちょく)管理を行い、4カ月に1回の集まりでは、栽培基準について検討。栽培状況や市場の動向などの情報交換も行っています。「理念を共有し、一人ひとりのやり方を尊重しながら、ボトムアップでやっていくのが一番」と澤浦氏。

積極投資で規模拡大

 グリンリーフ(株)(関連会社含む)では、有機野菜の栽培だけでなく、コンニャク芋の栽培・加工でJAS(日本農林規格)の有機認証を取得したり、2003年にはアグリビジネス投資育成(株)からの投資も受け、資本金9000万円に増資。その資金で、漬物、冷凍野菜を製造する野菜加工場を建設し、JASの有機認証も取得。05年には群馬銀行引き受けで私募債1億円を発行し、有機ホウレン草のハウスを30アール増設、80坪の冷凍保冷庫を建設するなど、有機野菜を大規模生産・加工し、安定して流通させる体制づくりを急速に整えてきました。

 06年には、モスフードサービスとトマト生産で提携し、同社のほかアグリビジネス投資育成(株)などからの出資も得て、(株)サングレイスを設立。さらに大型のパイプハウスを合わせて90アール増設し、トマトだけでなく、葉物野菜の通年栽培も実現しました。

新規就農者を育てる独立支援研修制度

 新規就農者の育成にも力を入れています。「独立支援プログラム」で1年間の研修を経て、独立。生産物の販売は「野菜くらぶ」が引き受けます。農業で一番苦労する生産物の流通・販売の場を「野菜くらぶ」が確保することで、農業で独立したいという若者を応援しようというものです。

 01年に独立第1号となった新規就農者は、青森に会社を設立し、レタスを栽培。初年度から黒字を計上しました。静岡でレタス栽培の会社を設立した女性など、これまで独立した新規就農者は3人、関連法人に就職した人が1人となりました。

安定供給の仕組みづくりがカギ

 新規就農者の育成に力を入れるもう1つの理由は、「野菜くらぶ」と提携する農業経営者を全国各地に増やすことです。それは、「付加価値を高めていくには、生産力の将来性や安定供給が重要なポイントになる。各地の農業者と提携することでリスクを分散し、その地にあった野菜をその地にあった時期に栽培する適地適作が重要」と考えるからです。

 また、既存の流通システムの活用も重視。澤浦氏は、「市場に左右されず、有機農業をやり、自分で価格を決め、消費者に宅配で直接販売していく方法で農業経営をしていこうとするには無理がある。それより既存の流通システムをうまく活用して、その中で付加価値を高め、価格決定権を持っていけるような仕組みづくりを考えていった方がよい」といいます。

 現在、グリンリーフと取引関係にある流通業者は216社にも及び、野菜くらぶも80社と取引関係があります。

 今、日本の農業が危機にあるといわれますが、澤浦氏は「顧客が求めているものを作っていけば、必ず売れる。農業でやっていける」と断言。「市況に振り回されるのではなく、顧客が求めるものを、年間を通じて安定した適正価格で安定供給できる仕組みづくりがポイント」だと強調します。そのことで、生産者にとっても顧客にとってもメリットのある取引関係が継続できる、というわけです。

人材育成こそ

 グリンリーフでは今、食品の安全や品質管理に関する国際標準規格ISO22000の取得に全社あげて取り組んでいます。また、群馬同友会の経営指針成文化セミナーには幹部社員と参加するなど、理念を共有した社員が、現場で臨機応変に判断しながら自律的に働ける組織づくり・人材育成に力を入れています。

 「今、若い人が農業をやりたいと、目を輝かせてやってきます。同友会でもいつも言われますが、働くことを通して人格形成ができ、自分の夢を実現していけることを伝えていきたい」と語る澤浦さん。経営理念に「感動農業」と「人づくり、土づくり」を掲げ、「すべての幸福と豊かさの創造」を使命とするグリンリーフに、日本の農業の1つの希望を見た思いでした。

会社概要

設立 1993年
資本金 9000万円
社員数 110名(グループ全体)
業種 有機農産物の栽培・加工・販売
所在地 群馬県利根郡昭和村赤城原
TEL 0278-24-7711
http://www.akn.jp/

「中小企業家しんぶん」 2008年 10月 5日号より

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