IT支援業で、山形を、日本を元気にしたい~サンシステム開発(株) 社長 中村友祐氏(山形)

理念で共感しあえる連携めざして

 「社員のコンサルティング能力の向上に取り組む情報システム会社」として2008年版『中小企業白書』にも紹介されたサンシステム開発(株)社長の中村友祐氏(山形同友会会員)。青全交第1分科会の報告より概要を紹介します。

突然、社員から社長に

 当社はソフトウエア開発業で、スタッフ7名の小さい会社です。私が入社した1990年ころは高額の商談が簡単に決まる時代でしたが、開発がウィンドウズに移ると、手づくりソフトはコストがかかり、営業的に苦戦するようになっていきました。2002年、前社長が突然、辞任し、私が会社を引き継ぐことになりました。

 それからの私はがむしゃらに走り回り、ほとんど社内にはいない状況でした。やがて、「一緒に頑張るからと社長を押しつけ、何でおれだけが苦労する」という思いが湧いてきました。当時は社員を「こいつら」と思うようになっていたので、経営計画書も浸透しませんでした。

新しいものづくりへ

 3年目を迎え、「何とかしよう」と、社員と話し合い、新しいものづくりを目指すことになりました。

 毎週水曜日に開発会議を行いました。出てきたアイデアを整理していくと、ユビキタス、モバイルへ向かっていたので、不便なもの、あれば便利なものを探そうと、週末は町に出ました。また、「どんな山形でありたいか」「どんな会社でありたいか」も話し込みました。

 結果的に携帯電話でシステムをつくることを決め、山形県の経営革新支援法にも取り組みました。同時に、同友会の経営指針づくりにも挑戦しました。

 ところがまもなく、新規事業を任せたやる気満々の社員が自ら命を絶ちました。仕事が原因ではなかったのですが、私は彼の何を見ていたのか、何のための計画書かと自分を責めました。仕事を離れても社員と人間としての付き合いができるかと自問自答の日々を過ごし、生きていることが何より幸せであると痛感しました。「この事業を絶対成功させる」と、強い意志で再スタートするまで2カ月かかりましたが、思いはだれよりも強くなりました。

手づくりソフトに特化し、IT経営支援業へ

 経営指針書の作成に当たっては、「IT経営支援業」と定義し、自社と業界を徹底分析しました。自社の強み・弱みの分析をすればするほど強みがなくなり、残ったのは業務が分かる技術者の人間力のみでした。

 当時、山形県のIT業は108社。地元には仕事がないので、東京や大手メーカーの仕事を受注していました。当社はそういう仕事をしないと決め、ものづくりを目指していたので、いずれ業務が分かってシステムを構築する業者が少なくなり、チャンスになると読みました。今、それは恵まれた仕事になっています。

 それと、携帯向けの新商品開発でソフトメーカーになり、さらに新たな連携で新規事業を生み出していく戦略を打ち出しました。

 新商品開発には2年半かかりましたが、今年1月から大手パッケージメーカーのオプションとして営業を開始し、ある会社と別業種向けにパッケージ化した商品でアライアンスも組み、営業しています。

 社員の能力を生かすために、手づくりソフトに特化したわけです。技術者は簿記2級を持っており、会計や業務が分かる技術者が減ったため、そこに付加価値をつけています。

経営理念を日常の仕事の中に

 経営指針セミナーを受講した年は赤字でしたが、赤字を出してもやる覚悟で、今の事業とポジションを手に入れました。成文化して1年目は空回りで、2年目に見直しました。3年目の今年は大きく変化し、2008年版『中小企業白書』に紹介されました。

 会議はしつこくなり、プログラム追加の依頼がきても、技術者は「何のために必要なのか」と、お客さんにとって最良の方法を考えます。それも経営理念が実践されているからだと思います。

 毎回のセミナー受講後に開く報告会では、社員から「なぜ作成するのか」と質問攻めでしたが、発表会の時に「あなたとあなたの家族の幸せのため」と答えると、建設的な意見がたくさん出てきました。

 それでも、実践しているのは自分だけで実感がありませんでした。翌年のセミナーでヒントを得て、言葉を定義づけることにしました。たとえば、「あいさつとは、みんなが元気になるあいさつです。当然、明るく笑顔で大きな声で言わなければならない。明るい笑顔は普段の生活からくる」と、1つ1つ定義づけました。それが行動指針となり、戦略から方針、そして理念の実践につながり、自然に回るようになっていった気がします。

 私は経営指針の作成と実践を通して、ぶれない強い意志と志を持つことができました。私は試されていたのだと思います。社員たちはそばでずっと見ていたことに気付き、人の大切さを知ることができました。そして、私自身の生き方を考えることにもなりました。

市場創造をめざして

 IT関連の変化はとにかく速く激しく、この変化にどのようについていけるかが今後の課題です。ビジネス用の組込携帯は広がりがあり、ワクワクしています。私はソフトメーカーとして連携したいと思われる会社になりたいと思います。

 大手は利益を生む商品と商流、研究と製造で結び合いますが、私の判断基準は理念です。思いでつながれば、強い連携になります。持っている得意技を生かした連携で新しい市場を創り、山形を日本を元気にしたいと思っています。

会社概要

創業 1981年
資本金 1000万円
年商 6700万円
社員数 7名
業種 ソフトウエア企画開発、コンサルティングほか
所在地 山形県山形市西田
TEL 023-644-1813
http://www.sun-sys.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2008年 10月 5日号より