「経営成熟度診断」プログラムで自社の到達点を把握~27同友会419社の診断結果

 企業変革支援プログラム入門編の「経営成熟度診断プログラム」は、22項目の質問に対して、成熟度レベル0~5の6段階からなり、回答者は設問に沿って自社の成熟度を選び、回答します。これまでに中同協では、今年3月と6月に2回のテスト運用を行い、その結果をもとに、今秋をめどに最終版を完成させる予定です。

 同友会の組織活動支援システム「e.doyu」への搭載も予定されており、自社の経年変化をチェックしていくことができるようになります。

「成熟度レベル」とは

 「経営成熟度診断プログラム」の回答項目の「成熟度レベル」は、現在の自社の到達点を表すものです。

 現状を明らかにすることで、問題点が浮き彫りになり、次への経営課題が見え、どのようにすればそれらの課題が克服できるのか、その道筋を示すものでもあります。その道筋において各社の対応は当然異なりますが、そのことを前提に、同友会での学びあいのなかで課題克服の糸口を見出すことができます。

 成熟度レベルは次の6つです。

 「0=認識していない」「1=認識しているが場当たり的」「2=個別的、部分的実施」「3=手順が確立され実施されている」「4=実践され見直されている」「5=最適化され外部から評価されている」。

2回のテスト運用

 1回目のテスト運用は、プロジェクトメンバーの同友会を中心に13同友会で実施され、回答数は142社でした。

 2回目は、5月に6つのブロックで試験運用担当者向け説明会が開かれ、22同友会51名が参加。試験運用は27同友会で実施され、回答数は419社でした。

 1、2回目を併せて30同友会の協力があり、本プログラムへの理解が広がりました。

経営成熟度診断項目のツリーおよび「労使見解」等との整合性

回答企業概要

回答数 27同友会 419会社
平入均従業員数
 正規社員 24.8名
 非正規社員数 19.0名
 合計 43.8名
創業後平均年 33.7年
入会後平均年 11.3年
経営指針成文化率 83.8%

「企業変革支援プログラム」27同友会 419社の診断結果~問われる経営指針の実践

方針・計画は作るものの、実行と評価ができていない

 2回目のテスト運用集約結果を紹介します。

 全体平均の特徴は大項目「[1]経営者の責任」の部分の成熟度は他の大項目と比較して高く、特に「[1]―(4)経営主要数値の把握」は22項目中、最高点となっています。(図1)

 しかし、「[2]経営理念を実践する過程」と「[5]付加価値を高める」が相対的に低くなっており、特に[2]の「(2)経営方針」「(3)経営計画」策定のレベルに比べ、「(1)自社の情報収集・分析」「(4)方針や計画の実行と評価」が相対的に低くなっており、自社分析が不十分なまま方針・計画が立てられ、見直しも不十分であることが伺われます。

経営指針 ― 期を重ねるごとに成熟度上がる

 一方、同友会が運動として進めている経営指針成文化では、「作成していない」から「作成して10期以上」を5分類にして、成熟度を見たところ、期を重ねるごとに、成熟度が上がっています。(図2)

 また今回の統計では「老舗」と呼ばれる創業30年以上の企業(193社)では、95・5%の企業が経営指針をつくっていることが分かり、経営指針を成文化し、毎年それを見直していくことで、地域からあてにされる企業となっていっていることが分かります。

100名以上で組織的仕組みが定着

 規模別では、社員数を10名以下、30名以下、100名以下、100名以上の4分類で傾向を見たところ(図3)、組織運営を効率的に行うために、情報共有や社内の仕組みが欠かせない101名以上の規模が一番成熟度が高くなっているものの、30名以下と100名以下ではほぼ同レベルとなっています。

回答者の感想より

▼自己評価するものではあるが、自分の評価の客観性に悩み、評価の難しさを感じた。特に幹部、社員はどう思うかが気になる。(北海道)
▼自社のやるべき問題点が見えて、大変参考になり、今後のテキストにします。(青森)
▼考えさせられる問題ばかりです。小さい会社なので全部自分に課せられているようです。(茨城)
▼「経営理念」があってこそ、この内容を考えていけると確信しました。まずは、3のレベルをめざし、そのためにポイントとして頭に入れておこう。(神奈川)
▼やれてないことに深く反省しました。今後前向きに行動を起こします。(新潟)
▼自分のポジションを自分で判断できるツール。現在位置と現状認識の把握ができる。(富山)
▼自社課題(特にPDCAについて)を多数発見できた。内容が濃くハイレベル、との評価が多数を占めた。(愛知)
▼経営理念作成の必要性を体系的に認識することができた。(滋賀)
▼思いは強いが、それを生かす仕組み、分析、発信に難あり(必要性は認識している)。(大阪)
▼同友会型企業のポイントと自社の認識の甘さを知ることができた。(兵庫)
▼ほとんど2と1で、目の前の作業に追われて行き当たりばったりになっている。(広島)
▼経営レベル(特に実施)の低さを痛感。(山口)
▼市場、顧客との関係や変化などについては現状認識をさらに高める必要があると感じた。(香川)
▼自社と向き合うのにいいアンケートです。(福岡)
▼自社では高度に実践していると思ったが、診断してみると反省しきり。(熊本)
▼毎年度ごとに全会員に調査すべきです。会員としての自覚を促し、反応を見ることも大事であり、今後の同友会運営にもかかわる要素をもっていると思います。会員増強にもつながると期待しています。(宮崎)
▼経営して20年、社員もおり、利益の出せる会社になってきたと思っていたが、客観的に診断すると場当たり的経営であったと反省した。会社の存在意義、経営者の責任を再確認した。(鹿児島)
▼自社の強みと弱みが明確になりました。前から感じていたが、弱みについてなかなか取り組んでいないので、これをもとに再度チャレンジしたいと思います。(沖縄)

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「中小企業家しんぶん」 2008年 7月 5日号より