連載「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて 第6回 「社会に開かれた教育課程」の事例紹介(2)

 2020年度から、新しい学習指導要領に基づく学校教育が始まります。新しい学習指導要領がめざすのは「社会に開かれた教育課程」の実現です。前回まで解説した新しい学習指導要領の理念である「社会に開かれた教育課程」の実現には、さまざまな方面からの取り組みが必要です。最終回は、前回に続いて学校関係者と地域の企業などが連携して取り組んでいる自治体の事例を紹介します。

 前回に続き、「社会に開かれた教育課程」の実現に取り組んでいる自治体の事例をご紹介します。今回は山口県周防大島町の事例です。

 周防大島町は山口県の最東端に位置し、瀬戸内海に浮かぶ屋代島とその周囲の島々から成る町です。山口県内で人口減少率が2番目に高い自治体となっており、「人口減少をどう止めるか」「地域コミュニティをどのように維持していくのか」「地域の文化の維持・継承をどのように行っていくのか」が課題です。一方、町唯一の県立高校である周防大島高校は、生徒のキャリア意識や地域への愛着をどう高めるのかといった課題を抱えていました。そこで、周防大島高校は、全国から生徒を募集し、多様な交流を通じた活力ある教育活動を推進するとともに、将来の地域を支える人材を育成するために、故郷への誇りと未来を拓く力を生徒に身につけさせる学校教育を進めています。具体的には、1年生は総合的な探究の時間に、2・3年生は独自教科「地域創生」の時間に、島を学びの現場にして、島の魅力・よさを調査・発信したり、島の課題を知りその解決策を考えたりする「島・学・人プロジェクト」に取り組んでいます。

 このプロジェクトでは、例えば、英語を使った地域貢献活動として、「小学校への高校生出前授業」「観光ガイドブックの翻訳」「外国人向けの島内体験ツアーの企画と実践」などを行います。また、地元の海産物や農作物が販売される「海の市」で生徒が販売実習や運営補助などを行っています。

 このプロジェクトの実施には、地元の企業や漁協、観光協会等が協力しています。前回ご紹介した岩手県大槌町と同様、周防大島町においても、学校と企業等が連携・協働しながら、よりよい社会を創るための学校教育が実践されています。

全6回の連載により、新しい学習指導要領がめざす「社会に開かれた教育課程」の理念、そしてこの理念の実現に取り組んでいる自治体の事例をご紹介させていただきました。新しい学習指導要領は、本年4月以降、小学校から順次全面実施されます。皆様におかれましては、4月から進化する学校教育にご期待いただくとともに、今後とも学校教育に積極的にかかわっていただけると幸いです。

文部科学省初等中等教育局 教育課程課

「中小企業家しんぶん」 2020年 2月 5日号より