【あっ!こんな会社あったんだ】障害者問題 誰もが働きやすい会社をめざして

(株)オグネット 代表取締役 小串 康博氏(大分)

 企画「あっこんな会社あったんだ」では、企業経営にかかわるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「障害者雇用」をテーマに、小串康博氏((株)オグネット代表取締役、大分同友会理事)の実践を紹介します。

接点ゼロからのスタート

 大分市内で建設会社と自動車販売会社を経営する小串氏は、現在3名の障害者を正社員として雇用しています。しかし、当初は障害者雇用についてまったく知らず、あまり関心がなかったと言います。

 きっかけとなったのは、2013年に同友会のメンバーから就労支援施設の実習生受け入れの話を持ちかけられたことです。はじめは「絶対に無理、障害者の方はウチの会社では働けない」と断っていました。

 しかし、実際に働いている現場を見てみると、その姿は小串氏が持っていた「障害者のイメージ」とはまったく違うものでした。

 障害者雇用とは無縁だと思っていたのが先入観だったということに気づき、そこから就労支援施設との関わりが始まりました。

障害者雇用が難しいと言われる業界での挑戦

 自動車販売会社で実習を受け入れていたある生徒は、能力も理解度も高く、小串氏や支援学校の先生は一般就労を考えていました。ところが、本人から「この仕事はまったく楽しくないし、車は全然好きではない、興味がない」と言われてしまいます。

 そこで、建設会社での実習に切り替えるべく、現場の安全管理体制を整えるなど受け入れ準備を進めていきました。しかし、障害者雇用が難しいと言われる建設業界での実習受け入れに対して、小串氏や社員は「建設現場の仕事は障害者には絶対にできない」と考えていました。

 そして迎えた実習初日。本人から「ものすごく楽しかったです!」と予想外の感想が返ってきました。社員たちの反応も「こんなにまじめに働くなら採用した方がいいですよ!」と、とても前向きなものでした。本格的に働いてもらおうと考えた小串氏は、採用するにあたって会社に何か問題点はないだろうか?と社内を見直すようになります。委員会を立ち上げ、社内規定や就業規則、給与規定などをすべて見直し、職場環境を整備したうえで、翌年の4月に正式に雇用することができました。

 障害者雇用をすることが社内を見直すきっかけになり、社員の意見を聞きながら環境を整えていくと、誰もが働きやすい会社へとどんどん変化していきました。ある社員が出産する際には、育休や産休をフルで取得できるように社内規定などを見直し、出産後も働き続けられるように環境を整備しました。そして、2019年には「大分市子育て支援中小企業」の表彰を受けます。それがきっかけとなり「もっとよい会社にしていこう」という思いが強くなり、有給取得率や男性社員の育休取得率の向上などにも取り組んだことで、昨年には厚労省の「ユースエール認定企業」にも選ばれました。

 「同友会運動と会社経営、そして障害者雇用は不離一体だと思います。入会していなければ障害者と関わることは絶対になかった。学んだことを少しずつ実践していきます」と語る小串氏は、地元に住むさまざな人が活躍できる企業づくりに邁進しています。

【会社概要】

【(株)オグネット】
設立:2009年
資本金:300万円
事業内容:ダイハツピット店、新車・中古車販売
従業員数:4名
URL:https://ogunet3819.com/

【サンワテック(株)】
設立:1987年
資本金:2,000万円
事業内容:法面工事、一般土木工事、とび工事
従業員数:13名(うち障がい者3名)
URL:http://sanwatec.com/

「中小企業家しんぶん」 2021年 6月 5日号より