ファーストリテイリングが初任給を30万円に、TOKYO BASEが40万円に引き上げるなどの報道は多くの人が驚いたと思います。しかし、TOKYO BASEは月80時間の固定残業が含まれた額ということも大きな話題となりました。このような報道とともに、大手企業が初任給を大幅に上げる報道が続き、今年の春闘も5%以上の大幅賃上げの報道も出ています。
しかし、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」では、「大企業」が全年齢で0.7%「減少」、一方で「中企業」で2.8%増、「小企業」で3.3%増と中企業と小企業では全年齢で引き上げていますが、実際は「大企業」は賃金を引き上げていないことが分かりました(中小企業家しんぶん2024年5月25号既報)。
賃上げ・初任給引き上げは採用に関して重要なことです。そこで、2024年度の採用の結果や初任給、賃上げなどがどうだったのかを見てみます。帝国データバンクは4月18日に「<緊急調査>2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」を発表しました(有効回答企業数は1,050社)。規模別に『賃上げ』する/した企業の割合を見ると、「大企業」は77.7%、「中小企業」は77.0%とほぼ同水準となり、「小規模企業」は65.2%と全体(77.0%)を11.8 ポイント下回っています。2024 年度入社における新卒社員の採用状況については、『採用あり』は45.3%、『採用なし』は53.1%となりました(表1)。規模別に『採用あり』の割合を見ると、「大企業」は76.2%と全体(45.3%)を約30ポイント上回った一方で、「中小企業」は40.9%、「小規模企業」は23.7%となり、全体を大きく下回っています。「中小企業」は採用が厳しく、「小規模企業」は賃上げ、採用ともに厳しい状況です。
新卒社員の採用がある企業に対して、初任給の金額を尋ねたところ、「20~24万円」が57.4%でトップ、次いで「15~19万円」が33.3%で続きました(表2)。初任給が『20万円未満』の企業の割合は35.2%と、3社に1社となっています。「25~29万円」は7.2%となっており、まだまだ初任給アップには課題があります。一般財団法人労務行政研究所の調査で、2024年の東証プライム上場企業152社の初任給を集計しています(表3)。「全学歴引き上げ」は86.8%、大学卒の水準は23万9,078円となりました。大学院卒では25万9,228円で25万円を超えています。
「マイナビ2024年卒大学生就職意識調査」によると、企業選択のポイントは「安定している」が48.8%(前年比4.9ポイント増)と5年連続で最多、「自分のやりたい仕事(職種)ができる」が30.5%(前年比2.3ポイント減)、「給料の良い」が21.4%(前年比2.3ポイント増)と続いています。安定志向や待遇面への関心が高まっており、採用・定着において初任給や賃上げは引き続き重要な経営課題となっています。
「中小企業家しんぶん」 2024年 6月 25日号より