連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第17回は、(株)成和設備工業所(藤井孝章代表取締役会長、岡山同友会会員)の取り組みです。
総合設備業を事業とする成和設備工業所。藤井氏が3代目として代表に就任した直後、会社は大型負債を抱えました。そんな時、藤井氏はアウトプットをしっかりと行う同友会の学びに衝撃を受け即入会。真っ先に経営指針成文化に着手しました。指針書に基づいて社員が自ら主体的に動くようになると、顧客のリピート率は90%以上に向上するとともに、新規優良顧客も次々と増えてきました。そしておよそ7年で会社を財務的に立て直すことに成功した藤井氏ですが、「本当の意味で指針が社内に浸透し、成果が出るまで10年かかりました」と笑いながら語ります。
環境経営で社内のチーム力を高める
未来のために環境経営に取り組まなければ地域から取り残される、そして社員がPDCAを回すことで社内のチーム力を高めたいという思いから、エコアクション21に取り組みました。すると、社員からは従来以上に積極的に意見が出るようになり、3S活動も徹底されるようになりました。社内に設けた「3S活動委員会」が中心となって本社倉庫の全面改修を行い、資材や工具を探す時間が大幅に削減されたことで作業効率もアップしました。
災害時にも頼れる会社に
同時にBCPの一環として、停電時にも業務が遂行できるよう社屋屋上全面にソーラーパネルを設置し、蓄電池も併用し始めました。現在、太陽光発電の電力は年間の電力総使用量の約40%以上を占めており、副次効果を含め省エネにも大きく貢献しています。
また、岡山市の協定企業として、災害時に市民の避難場所になる建物などのインフラ設備の復旧を最優先とすることを行動規範としています。社内BCPにおいても、災害発生時には対策本部を設置し、社員とその家族の安全を確認するとともに、岡山市などと連携して、市民の命と生活を守ることを定めています。
その一方で、能登半島地震の際には岡山市管工事組合として水道管復旧のために1週間ごとにグループをつくって支援に当たるなど、地域を超えた社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。
未来をつくる人材育成を
同社では、会議で決定したことはその場で5W1Hを明確にし、翌朝8時には社内の掲示板に張り出すことで、小さなことでもPDCAサイクルを明確にしています。仕組みが定着するまで時間はある程度かかりましたが、一旦定着すると、1人の提案をみんなで対応し、1人はみんなのために動く社風が自然にできていきました。
20年度には建設大臣認定建設マイスター認定を1名(全国10名)、23年度には建設大臣建設ジュニア認定を1名(全国2名)が受けました。書類づくりが難しく社内的な負担もありますが、社員の成果をみんなで共有して褒めたたえることは全員のやりがいにつながっています。
さらに昨年には、本社近くに「成和アカデミー」という新工場・研修施設を建設しました。業界の今後の技術者不足に対応するため、現場と連携して社内で加工する作業形態を創出し、OBたちが優先して講師を務めます。ここでは、女性や高齢者、障害者など多様な人々を一緒に育成し、共に成長することをめざしています。
会社は社員とその家族のために
同社は、「会社は社員とその家族のために」という姿勢を明確に打ち出しており、社員の成果を反映して、賞与は年3回出すことができています。
また、「家族感謝食事会」として定例的に家族との食事会の補助(1万5000円)を行っているほか、隔年で社員旅行と協力会の旅行を実施。今秋は社員と共に協力会社員(夫婦)合同で北海道に行く予定です。
「社員とその家族のため」を会社が実践することで、社員たちもぶれずに「自分の家族の将来のために」をビジョンとして強い会社づくりをみんなでめざしています。
「さすがと言われる成和設備」に
藤井氏は業績好調の今年6月に事業承継を行いました。新しい経営者のブレーンをつくることから始め、承継準備には10年の歳月をかけました。めざすのは経営理念に掲げている「さすがと言われる成和設備」。その「さすが」という一言には社会性・科学性・人間性の全てが熱く込められています。
魅力ある企業づくりを続けながら、社会的にも中小企業憲章の理念実現をめざす藤井氏。「人材不足が進む建設業において、夢が持てる、将来安心して家族を守れる、小さくてもキラッと光る会社が地域にあることを発信していきたい」と語ります。「社員のために」を徹底して成長を続けてきた成和設備工業所は、これからも地域と共に歩み続けます。
会社概要
設立:1966年
社員数:20名、契約社員15名
事業内容:空調・給排水衛生設備・消火・危険物設備設計施工
URL:https://seiwasetubi.com
「中小企業家しんぶん」 2024年 9月 25日号より