【わが社のSDGs】
社員の自主性を育み、持続可能な社会をめざす 
アースシステム(株) 代表取締役社長 相澤 卓司氏(長野)

連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第18回は、アースシステム(株)(相澤卓司代表取締役社長、長野同友会会員)の取り組みです。

 相澤氏は東京で20年ほどIT関連の仕事をしていましたが、1998年松本に戻り、99年にアースシステム(株)を創業しました。 2003年に同友会に入会し、経営指針合宿に2回参加。その後、人事考査と就業規則を変更したことで労働争議が起きましたが、社員と一緒に就業規則を作ることで解決を図りました。

 2008年、リーマンショックで仕事が半分ほどなくなったことで下請け脱却を決意し、2010年にクラウドサービス「イーサース」を開発。元々下請けの仕事が9割でしたが、現在はゼロになりました。

身近なところから

 リーマンショックで資金繰りが苦しくなり、電気代を削減しようという意見が社員から出ました。そこで、2010年に、環境省主催の温暖化防止を目的とした「チャレンジ25キャンペーン」に参加し、 LED照明への買い替えや、冷房の温度を28度に設定、不要電源のオフを徹底するなど身近なエコ活動に取り組みました。

 2022年には新社屋を建てました。屋上にはソーラーパネルを設置しており、社屋の1次エネルギー消費量は、省エネ基準値から75%以上削減されています。また、前述のような社員1人1人が取り組める身近な省エネ活動も引き続き行っています。

社員主導の委員会

 同社では元々終業後に有志の勉強会が行われていましたが、参加者が限定的になり議題も多くなってきたため、委員会を設置しました。社内教育委員会、環境衛生委員会など8つの委員会に社員全員を振り分け、委員会は業務時間内に行うようにしました。社員自らが会社をよくするために何をしたらよいのかを委員会内で自主的に考え、その内容を相澤氏に伝えることで、社員の自主性を育んでいます。

1人1人と向き合う社員教育

 相澤氏は2014年より、3年間長野同友会の共育委員会委員長を務め、幹部社員研修、リーダー研修などを企画・運営しました。その経験を自社に持ち帰り、社内でも社員研修を始めました。社内教育委員会が新卒入社・中途入社向け研修を企画・運営しています。

 また、社員同士の相互理解促進のために、1on1ミーティングを実施しています。社長を除く全社員が、3~4カ月かけて他の社員と2人きりでコミュニケーションを行うというものです。離職率減少のための取り組みで、独りにしないこと、相手を知ることで経営理念に掲げている「利他の心」を育んでほしいと相澤氏は考えています。

リレー・フォー・ライフへの参加

 同社は、2015年開催の「リレー・フォー・ライフ・ジャパン信州まつもと」のウォークリレー向けの ウォークシステム(周回記録)を開発しました。リレー・フォー・ライフは、がん患者やその家族を支援するチャリティ活動です。「もっとイベントを盛り上げたい」ということでシステム開発の相談を受け、ICカードを利用したウォークシステムを提供しました。

地元の専門学校をサポート

 また、同社は地元の専門学校が「職業実践専門課程」を取得するためのサポートを行っています。「職業実践専門課程」は、企業などと密接に連携して実践的な職業教育に取り組む学科に対して、文部科学大臣が認定を行うものです。同社は「学校評価委員会」、「教育課程編成委員会」に参加しているほか、講師として、生徒に授業を教える活動を行っています。

今後の展望

 現在、「イーサース」のシェアは県内6割、関東3割、その他1割となっており、今後は、より幅広く全国にシェアを拡大したいと考えています。年間休日125日、有休消化率7割以上、残業時間もほとんどない同社では、限られた時間でどのように生産性と品質の向上を図るかを模索中です。「サービスの向上は大変ですが、社員と理念を共有していい会社にしていきたい」と相澤氏は笑顔で語りました。

会社概要

設立:1999年
社員数:18名
事業内容:コンピュータのソフトウェア開発及び販売
URL:https://www.earth-system.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 15日号より