2024年10月4日、(株)帝国データバンクは、「人手不足倒産、急増止まらず 年度上半期の過去最多を更新~徐々に改善する価格転嫁、『賃上げ原資』の確保なるか~」というタイトルのプレスリリースをしています。2024年4月1日以降、建設、運輸、医療に対して例外的に認められていた時間外労働の上限規制の猶予が終了。いわゆる「2024年問題」の影響と、そこから発生する諸問題もあり、人手不足倒産が急増している状況が分かりました。
人手不足倒産の推移(図1)を見ると、2014年度の65件から徐々に増加し、コロナ前の2019年には199件となりました。コロナ禍の3年間は減少しましたが、2023年度に313件と急増しています。
2024年度は人手不足による経営へのダメージが一層深刻化している状況です。従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」の件数は、2024年度上半期で163件となっており、年度として過去最多を大幅に更新した2023年度をさらに上回る記録的なペースで急増している実態となっています。
「2024年問題」に関連する業種にしぼって見てみると、建設業では55件(前年同期51件)、物流業では19件(同19件)と高水準が続き、合わせて全体の45.4%と多くを占めています。飲食店においても9件(同2件)となっていて、人手不足が深刻化している状況です。特に深刻なのは、全業種を通じて従業員数10名未満の小規模事業者が多くを占めている点で、全体の82.2%となっています。
人手不足を感じている企業の割合(図2)を見てみると、物流業70%、建設業69.8%となっており、全業種の51.5%と比較して、かなり高い水準です。一方で、価格転嫁率を見てみると、全業種では44.9%で徐々に転嫁率は上昇していますが、まだまだ価格転嫁は進んでいません。コスト上昇分の5割以上が転嫁できていないということになります。物流業で34.5%、建設業では43.7%となっており、建設業・物流業は人手不足で苦しんでいる中で、価格転嫁でも一層深刻です。
人手不足を解消していくには賃上げが求められますが、価格転嫁、付加価値向上などが喫緊の課題です。解決に向けては、やはり同友会の「企業変革支援プログラムVer.2」の活用で課題を明確化し、経営指針に盛り込んで実践することが本流ではないでしょうか。
「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 25日号より