4~6月に続き、賃上げの影響がほぼ反映された7~9月の財務省「法人企業統計」によれば、国内の全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は23兆124億円で前年同期比3.3%減となり、7期ぶりに減少しました。製造業は15.1%減と低迷する一方、非製造業は4.6%増と好調でした。売上高は2.6%増の377兆2,965億円で、14期連続の対前年同期比増加(製造業2.8%増で非製造業2.5%増)となっています。
規模別に見ると、資本金1億円未満の中小企業の売上高が前年比0.7%増とほぼ横ばいであるにもかかわらず、従業員給与を5.5%増加させています(表)。このため、経常利益が22.1%減少(減少額は1兆1,770億円)となりました。人件費は1兆1,277億円増、従業員給与も8,089億円増となっており、利益を削って人件費に充てていることが分かります。資本金1~10億未満の中堅企業でも、売上高が3.8%増、給与が3.5%増となり、経常利益は4.2%減、人件費は3.2%増という状況です。これも利益を削って人件費に回していると考えられ、人手不足は中小企業・中堅企業ともに共通の問題であることがうかがわれます。一方、資本金10億円以上の大企業では、売上高3.6%増、従業員給与が3.6%増、経常利益4.1%増となっています。増加した利益の全てを人件費に回すのでなく、配当や自社株買いに充てていると見られます。また、経団連が発表した2024年春闘での大企業の賃上げ率(5.58%)を考慮すると、従業員数が0.2%減少しているため、実質的には3.6%以下の賃上げにとどまると言えます。これは、実態として春闘の賃上げの対象者が少ないということになります。
7~9月までの44半期平均の労働分配率を比較すると、大企業44.7%(23年37.6%)であるのに対し、中小企業は75.3%(23年70.3%)と高い水準にあります。これは、中小企業が大企業に比べて従業員への利益還元率が高い一方で、賃上げ余力が低いことを示しています。中小企業では従業員給与の増加が売上高や経常利益を上回っており、昨年と同水準の売り上げで11.7%を給与に支払っています。また、経常利益の374%に相当する給与を支出している状況です。
7月の中同協のアンケートでは、82%の企業が賃上げを実施しており、さらに10~12月の調査でも、24年に賃上げを行った企業は78%にのぼりました。賃上げ率の内訳は、1%未満が6.8%、1~2%未満が14.0%、2~3%未満が18.4%、3~4%未満が13.7%、4~5%未満が13.9%、5%以上が11.2%、賃上げせずが13.9%、その他が8.2%でした。25年度についても、66%の企業が賃上げを予定しており、未定が19.8%、賃上げは行わないと回答した企業は9.6%でした。人手不足の中、原資が不足していても賃上げを行う企業が増えています。今後は企業間での連携を進め、付加価値の高い新商品をつくっていくことが必要とされます。
「中小企業家しんぶん」 2025年 1月 25日号より