【あっこんな会社あったんだ】産学連携 
次代に通用する企業としての存在価値を高める 
コンダクト(株) 代表取締役 和田克之氏(福岡)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「産学連携」をテーマに、和田克之氏(コンダクト(株)代表取締役、福岡同友会会員)の実践を紹介します。

 同社は「地域に根ざした不動産ビジネス」をコンセプトに不動産販売・仲介、新築マンション分譲、マンション(アパート)賃貸、不動産開発、不動産買い取り、リノベーションなどを行っています。自社ブランドマンション「コンダクトレジデンス」を展開するほか、大分市では県内最大級1700区画の住宅団地「新・京が丘」を九州大学大学院との産学官連携で開発するなど、まちづくりに取り組んでいます。

多世代共生街づくりプロジェクト 那覇

 同社が手掛けた産学連携事業のひとつが「牧志下町屋台村」(正式には「酔夢芝居舞(すいむしばいまい)―クヮラクヮラ―牧志下町屋台村」)です。沖縄県那覇市の国際通りから分岐するアーケード街の1つ、平和通り近くに「美味い、ふれあい、地産地消」をキーワードに掲げて同社が企画、2024年5月にグランドオープンしました。北部九州を中心に展開してきた同社としては、初めての沖縄での事業となります。大きな特徴は2つあります。1つはSDGsに基づいた建築工事の実施、建物施設の地域との調和です。琉球大学の知財を用い、建築資材ロスの再生利用、首里城火災破損瓦の活用など「つくる責任」「つかう責任」の建築に取り組みました。建築ロス材を利用することで新たなデザインを実現しています。また、レトロな文化の波型鉄板デザインを現代の高品質な建材で再現することにより、かつて芝居小屋が密集していた地域の歴史を継承し、沖縄文化を彷彿(ほうふつ)とさせています。

 2つ目は県立芸術大学の学生らによる芸術・文化を意識した取り組みです。現役生や卒業生が飲食街の案内板や壁画、ロゴデザインなどの制作に携わり、沖縄文化にちなんだ壁画やレリーフなど芸術性の高い工夫が施されています。「酔夢芝居舞―クヮラクヮラ」という地域の歴史・方言を踏まえたネーミングも学生たちによって名付けられました。また、竣工(しゅんこう)式では県立芸術大学の学生らによる琉球芸能も披露されました。

 木造平屋建ての施設に17の飲食店が入居し、沖縄料理だけでなく、炉端炭焼、沖縄、関西、北海道の居酒屋、築地寿司など日本各地の料理が楽しめるよう工夫され、国内観光客だけではなく、特にインバウンド需要を満たしています。定期的に地域融合のイベントを開催するなど、地域関係者と連携を密にし、街のにぎわいを創出する事業成果を積み上げています。「地域の文化・人々や建物との調和を図り、地域と共存共栄するシンボル的な存在として、地域の方々はもちろん、観光客からも親しまれる施設になれば」と和田氏は言います。

絶え間ない革新で時代の最先端を

 同社は昨年創業30年を迎え、メセナ活動とウェルビーイング推進を掲げました。これまでの産学連携の中で多くの出会いがあり、九州大学の研究で活用された絵本や、久留米出身の木彫作家作品の収蔵などの相談が寄せられました。それを本社ビル内にギャラリーとして開設しました。また芸術文化を通じたワークショップの開催、台湾の国立政治大学院生をインターンシップで受け入れるなど、多様な文化と人の交流の場を創出しています。また不動産業務のDX化を加速し、健康経営、DX認定をめざし職場環境の改善を図っています。「創業以来こだわってきたのが決してマネをされることのない『らしさ』の追求です。学びが日常にある環境を創出することで、社員の教養を高めていくことを支援できればと考えています。常に新しいこと、ワクワクすることに挑戦してほしい」と同社“らしさ”にこだわっています。

会社概要

創業:1994年
社員数:35名(グループ全体)
事業内容:不動産開発・投資・分譲・管理・賃貸・売買及び仲介に関する一切の業務
会社HP:http://www.e-conduct.co.jp
酔夢芝居舞クヮラクヮラ:https://nahayataimura.com/

「中小企業家しんぶん」 2025年 2月 15日号より