労使見解発表50年 
真の人間尊重の社会をつくり新しい歴史を創造しよう 
中同協第57回定時総会in神奈川

7月3~4日、中同協第57回定時総会が神奈川で開催され、全ての同友会と中同協から1141名が参加しました。今回の特集では、開催地あいさつと主催者あいさつ、補足報告とまとめなどを紹介します。

【主催者あいさつ】
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜 泰久氏

本日まで設営していただいた本多実行委員長、田中実行委員長をはじめ神奈川同友会の皆さんに心から感謝申し上げます。また、神奈川同友会では目標としていた会員数1000名を見事達成されました。本当におめでとうございます。

今年は、「労使見解」発表から50年の記念すべき年です。同友会運動は「人を生かす経営」に記されている「真の人間尊重」が貫かれており、同友会の先進性や普遍性のベースとなるものはやはり「労使見解」です。今年の「中小企業白書」「小規模企業白書」では、異業種間の広域ネットワークが有効である、経営理念や経営計画を作成することが経営力の向上につながる、また、従業員を大切にする人材経営(人的資本経営)は特に有効ということも書かれています。私たち同友会が50年も前から実行してきたことであり、経営指針に関わることや異業種ネットワークなど自分たちが当たり前にやってきたことが、白書では時代の最先端として紹介されているのです。同友会の先進性と普遍性は確かなものだということを確認することができます。この歴史の中に身を置いている私たちです。これから先の同友会運動に誇りを持って前に進めていきましょう。同友会運動をさらに広げていくことを皆さんと確認いたしまして、主催者を代表してのあいさつとさせていただきます。

【開催地あいさつ】
神奈川県中小企業家同友会 代表理事 田中 勉氏

猛暑が続く中、横浜までお越しいただき、ありがとうございます。今日は横浜、明日は神奈川のいろいろな名所をぜひご堪能いただければ幸いです。今回の総会にあたり、神奈川同友会では皆さまの会社がよりよくなるための準備として、グループ長研修から始まり、「労使見解」の学び直し、議案を自社にどう生かしていくか議論を重ねてきました。これから始まる分科会では、報告を聞き、グループ討論で深め、議案に関しても学んでいきましょう。

今総会のテーマ「真の人間尊重の社会をつくり新しい歴史を創造しよう」は開催意義の2番目に記載しています。世界では各地で戦争が起こり、罪のない子どもたちが傷ついている中、私たちが「真の人間尊重」を全人類的な運動で進めていくことこそが平和につながるとあらためて確信しています。今総会は「労使見解」50周年、神奈川同友会60周年などさまざまな記念づくしで歴史に残る総会になると感じており、この総会を機に世の中が動いていくのではないかと思っています。私たちの方向性も新たなステージに変わっていくと確信しています。2日間よろしくお願いいたします。

【補足報告とまとめ】
中小企業家同友会全国協議会 幹事長 中山 英敬氏

近年、世界経済は先が見えない状況が続いており、日本経済への影響も甚大です。歴史的な円安傾向を背景に原材料、エネルギー価格高騰などが続き、賃上げ問題、人材不足も深刻化しています。大企業との格差が広がりつつある中で、今年は「労使見解」発表から50年を迎えました。同友会運動の新しいステージに向けた今年のスローガンは「真の人間尊重の社会をつくり 新しい歴史を創造しよう」としました。このスローガンの意味するところと新しいステージも含め3点にまとめます。

1点目は、真の人間尊重についてです。昨年から政治、社会、経済の急激な変化に私たちは直面しています。私たちは31年前に「21世紀型中小企業づくり」を提起しました。それは激変する社会に対応するための経営課題として掲げてきました。21世紀型中小企業づくりをめざすうえで欠かせないものは、「労使見解」の学習と人を生かす経営の実践です。人間尊重といって安易に社員に手を差し伸べることでよいのでしょうか。甘えと本当の意味での優しさは違います。人間の本質を考え、学ぶことが大事です。同友会と関わりが強かった大田堯先生の「人間は自ら変わる力を持っています。人間はみんな違い、人は関わりの中で生きています」という言葉に学びました。この「人間は自ら変わる力を持っている」は「自主」に共通するものを感じ、「人間はみんな違う」は「民主」的な考えにも通じ、「人は関わりの中で生きている」は「連帯」の精神につながると感じます。

「労使見解」の「経営者の責任」のくだりに、「高い志気のもとに労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立する努力が決定的に重要」とあります。今日も鋤柄さんから「労使見解」を4点にまとめてお話しいただきました。特に「経営者の責任」「経営姿勢」に重きを置かれていたと思います。会社が成長できるかできないかは経営者の姿勢で決まるということです。学んで実践していった成果を見ればわかることです。「労使見解」の話から同友会らしさ、経営者としての生きざまを学ぶところが同友会であることを確認しました。「労使見解」は常に私たちに経営者としてあるべき姿を問いかけてくれます。「労使見解」の創造的発展こそ企業成長の原動力であると示しています。どんな時代にあっても労使の団結こそが難局を乗り越える確かな保証であるということです。

2点目は、「自主・民主・連帯の精神」の実践です。同友会のさまざまな活動の中で「自主・民主・連帯の精神」がしっかりと根づいて生かされています。すべてに自主が尊重され、何事も民主的に図られ、それぞれの違いを尊重し合い議論を尽くします。自助努力が基本にありますが、自主・民主・連帯の精神を、会運営や会活動を通して自らが実践して腹に落とし、身に付けて社内に生かすことが重要です。人を生かす経営の全社的実践を通して共に育ち合う教育を重視し、社内においても「自主・民主・連帯の精神」が企業風土として醸成されるように取り組むことが重要です。

3点目は、経営指針の成文化と実践から確立へ深く考えようということです。今から50年前の1975年に、人間尊重の精神による長年の議論の中で「労使見解」が発表されました。1977年の神奈川総会では、経営指針を確立する運動を提唱しています。「労使見解」から2年後、ぼんやりと見えてきた経営の方向や人間尊重の考え方を明確に成文化することで、社内全体のやる気を引き出し、全社的実践で成果につなげていく運動を展開しました。経営指針は全同友会会員がつくること、成文化で終わらずに実践につなげること、実践を振り返って課題を整理し、経営指針を見直すことです。こうして経営サイクルを確立させ、成果につなげることが重要です。PDCAサイクルを回し、企業変革支援プログラムを活用することで成果につながります。経営指針の中に人間尊重の精神を反映させることは言うまでもありません。

もう1つ大切なことは、自社の存在意義をあらためて問い直すということです。この激変する世の中では、今までのやり方の延長線上では成長はありません。社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で答えられる企業になりましょう。

私は第11分科会に参加しました。「地域課題・社会課題に取り組む企業づくり」というテーマで、この企業は学校教育にも積極的に関わっていました。今の教育は昔と変わって先生が生徒に教えるのではなく、子どもたちが自分で考え、学んで気づき、行動に移します。地域の生き物の観察や、地域の歴史を調べるなど、学びの場に中小企業が関わっているという報告でした。子どもたちも先生も一緒に向き合って学んでおり、参加した中小企業経営者たちも学んでいるという、まさに3つの立場で成り立つ共育ちです。そこに社員も巻き込めば4つの立場での共育ちになります。もっと中小企業を地域に見せていかないといけません。子どもたちと関わることで子どもたちが地元の中小企業の輝きに気づくのです。こんなに素晴らしい会社が私たちの地域にたくさんあるということを知ってもらいたいと思います。報告者は「地域に開かれた学校を通して、私たちは地域に開かれた中小企業になりましょう。そうすることで子どもたちを通して中小企業の魅力が親たちに伝わり、中小企業の社会的地位の向上につながります」と話していました。

このような事例が全国各地で生まれています。それぞれの地域で共同求人や社員教育の活動、環境経営推進の広がり、中小企業憲章・条例推進運動などが地域で有機的につながって素晴らしい成果になっているという新しいステージに入っています。中小企業憲章推進運動は、国民1人1人を大切にする豊かな国づくりの運動であり、まさしく人間尊重の運動です。条例推進運動は各地域に実現していこうとする運動です。地域で仕事をつくり、人を雇用し人を生かす経営を実践し、仲間を増やして人を生かす経営の輪を広げていきましょう。全ての地域が条例推進運動に取り組めば日本も元気になります。企業づくりも地域づくりも仲間づくりも地域の中で一体として取り組むことで活動が有機的につながります。経営指針の成文化と実践を深く考えるとつながりが見えてきます。さまざまな切り口から人間尊重の精神をベースにした活動を有機的に展開し、同友会運動の新しいステージに向けて真の人間尊重の社会をつくり新しい歴史を創造していきましょう。

中小企業家同友会全国協議会第57回定時総会 総会宣言
「労使見解」発表50年 人を生かす経営の実践で真の人間尊重の社会を

7月3、4日両日、私たちは「真の人間尊重の社会をつくり新しい歴史を創造しよう」をスローガンに掲げ、第57回定時総会を神奈川の地で開催しました。

私たちの先人は1957年日本中小企業家同友会を創立して、労働問題に対応し、真摯な議論と企業での実践を積み重ね、1975年に「中小企業における労使関係の見解」(以下、労使見解)を発表しました。

中小企業家同友会全国協議会第57回定時総会 総会宣言

当時、従業員を1人でも雇用すれば、中小企業といえども資本家だとする「総労働対総資本」の考え方が主流でした。労資が対立関係にあった中で、徹底した話し合いを通じて全社一丸の体制をつくることこそが中小企業の生きる道だと考え、さまざまな苦難を乗り越えてたどり着いたのが「労使見解」でした。ここで謳(うた)われる「人間尊重」の精神は、1977年「経営指針の確立運動」の提起から、社員教育や共同求人、障害者問題への取り組みなどのさまざまな活動へと展開され、全国に広がりました。

企業づくりの土台に労使見解を据え、1993年には「21世紀型中小企業づくり」を提起。社会、そして地域における中小企業のあり方や役割にまで深められ、2010年には中小企業憲章の閣議決定へと結実しました。こうした人間尊重を根底とした同友会運動は、SDGsや「ビジネスと人権」などの世界的な潮流とも共鳴し合う普遍性を持っています。

現在、物価高や人材不足、賃金上昇などさまざまな経営課題や社会課題が顕在化する中、人々の転職に対する価値観の変化など、雇用の不安定化や流動化が進み、労使の問題は複雑さを増しています。しかし、そうした問題は今に始まったわけではなく、これまでも対等な労使関係を築く努力を真摯に続けてきたからこそ、労使が一体となり、さまざまな難局を乗り越えることができたのです。この厳しい経営環境の中で対等な労使関係を築くことは、経営者の責任です。社員を最も信頼できるパートナーであると位置づけ、労使双方にとっての共通課題の解決に向けて、誇りと希望をもって共に育ち合い、労使関係の新しい次元への発展を成し遂げましょう。

本年「労使見解」発表50年を迎えました。「労使見解」の歴史的意義と今日的課題を改めて確認するとともに、第1に労使見解を学び直して、経営指針を確立し、人を生かす経営の実践で21世紀型企業づくりを運動として進めること。第2に同友会運動の新しいステージに向けて、地域に仕事と雇用を生み出し、真の人間尊重の社会をつくり新しい歴史を創造することを誓い、本総会の宣言とします。

2025年7月4日
中小企業家同友会全国協議会第57回定時総会

「中小企業家しんぶん」 2025年 9月 15日号より