連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第27回は、(株)アミゼ(根本保雄取締役会長、福島同友会会員)の取り組みです。今回は、同社の実践を支援する大内政雄氏(大内法務行政書士事務所代表、福島同友会会員)にも話を聞きました。
根本氏は、高校卒業後10年間、農業に従事していました。しかし、農業の先細りを感じ、将来を見据えて新たな道を模索。リースキンのレンタル事業から(株)アミゼを起業し、産廃収集や遺品整理などへと事業を多角化してきました。リースキンは安定的な収益源となる一方で、遺品整理のニーズが高まっていることから、今後はこちらへの注力を見据えています。
支部の仲間とタッグを組む
同社がSDGsに本格的に取り組み始めたのは、2023年1月。コロナ禍で勉強会など社員同士が集まる機会が途絶える中、根本代表は「これからはSDGsが大切になる」と考え、社内での学びの場づくりを決意しました。取り組みを進めるうえで大きな力となったのが、福島同友会いわき支部の仲間である大内法務行政書士事務所との連携です。
同事務所は支部内でSDGs導入支援や勉強会を展開しており、「SDGsに取り組まないことは企業存続のリスク」という考えをアミゼと共有。戦略的パートナーとして、社内教育から情報発信まで幅広く支援しています。
事業と環境保全の融合
同社は「誰1人取り残さない、家庭から職場、未来の地球環境を考えるアミゼ」というビジョンを掲げ、環境活動を自社事業と一体化させた取り組みを進めています。
例えば、遺品整理や不用品整理の現場では「5R」の原則を徹底。回収した不用品の中で再利用可能なものは、社員が磨き上げてリユースショップ「なんだかんだ」に並べています。これらの商品はネットショップでも販売しています。第3土曜日には「なんだかんだ市場」としてイベントも開催。ショップ名は社員の発案によるものです。
2000年には根本氏が購入した山「アミゼの森」に自宅を新築。住んでみると希少種の植物が多く、そこを活動拠点に環境保全面で保護活動を始めました。副産物のまきを社内暖房に活用するなど、エネルギー削減にも寄与しています。
また、ミツバチプロジェクトでは社員が空き時間を使って下草の刈払い、ミツバチが喜ぶ蜜源植物などの植栽をしたり、採れたはちみつは「小町のしずく」として地元の道の駅やふるさと納税の返礼品でも販売されています。
「アミゼさんの取り組みは、“環境に悪さをしない”段階から“環境にプラスを生む”段階へ進んでいます。趣味や地域貢献から始まった活動が、会社の理念と事業に結びつき、人が集まり理解が広がる好循環を生んでいる」と大内氏は語ります。
社員教育と全社参加型の学び
社員教育の場としてのSDGs勉強会も定着しています。2023年に始まった定例勉強会は、当初は選抜メンバー制でしたが、現在は全社員参加へと拡大。大内氏の進行による対話型研修では、社員が「自分の仕事とSDGsの関わり」を考え、意見を出し合います。
「かつては受け身だった社員が、今は自ら学ぶ姿勢を見せている」と根本氏は手応えを語り、大内氏も「社員が“ジブンゴト化”することで、SDGsが理念から実践に変わる」と応じます。
さらに、活動の可視化と発信力強化を目的に『月刊アミゼ新聞』を毎月発行。社員が順番で記事を執筆し、勉強会での学びや社内の取り組み、顧客の声などを反映させています。紙の削減を意識してメール配信も増やすなど、持続可能な社内広報の形を模索しています。
同友会活動と地域への波及効果
2024年8月には、同支部環境委員会による「アミゼの森」の視察も行われ、行政関係者や支部会員が参加。地域の課題解決や環境教育への貢献が高く評価されています。社員が主体的に参加することで、地域との接点も拡大。議員や銀行支店長も勉強会に関心を示し、地域全体でSDGsに取り組む機運が高まっています。
今後の展望
アミゼは、SDGsを単なる社会貢献ではなく、事業の中核に据えて組織文化として根づかせることをめざしています。今後は対話型研修の深化やデジタル化による効率化を進め、地域とともに「持続可能で働きがいのある会社」をつくります。
「アミゼはフランス語で“楽しそうな”という意味です。楽しい会社をつくっていきたい」と笑顔で話す根本氏。経営理念に根ざしたSDGsの取り組みを行うアミゼの挑戦は、持続可能な未来を共に描く仲間づくりの実践でもあります。
会社概要
創業:1978年
資本金:1,000万円
社員数:18名(役員・パート・委託社員含む)
事業内容:リースキン事業、ハウスケア事業、一般・産業廃棄物収集運搬処理事業など
URL:https://www.amuse-ami.net/
「中小企業家しんぶん」 2025年 10月 25日号より









