【わが社のSDGs】
「人を生かす経営」の実践で、誰もが参画できる社会をめざす 
(有)京美容室 代表取締役 関原 英里子氏(新潟)

連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第28回は、(有)京美容室(関原英里子代表取締役、新潟同友会会員)の取り組みです。

 京美容室は、関原氏が1993年に個人店として開業し、1997年に法人化。美容室、エステ、ブライダル事業を通じて、社員と共に顧客との感動を共有し続けています。

「京美SDGs」17の目標

 同社では、SDGsの目標に合わせて独自の「京美SDGs」17の目標を策定し、経営指針書に明記しています。社員には、各家庭で取り組めることも記入してもらい、すでに学校でSDGsを学んでいる子どもを持つ社員の理解を深める取り組みを始めました。

 活動の1つがフードバンクへの協力です。同社では、貧困家庭やひとり親家庭で育った子どもを対象に、年間120名を無料でカットしています。このサービスは社員の売り上げとしてカウントされ、子どもたちは他のお客さまと同じように予約して来店し、丁寧なサービスを受けることができます。また、年間5名を対象に、振袖のレンタル、着付け、ヘアメイク、写真撮影を無料で提供し、家庭の事情で成人式に出席できない子どもたちを支援しています。

 同社は新潟県の「エコ事業所」にも登録されており、自社のCO2排出量の把握をはじめ、全店舗のLED化、ハイブリッド車への切り替え、薬剤容器のリサイクルなど、環境経営にも積極的に取り組んでいます。

経営姿勢の確立~社員と共に歩む企業へ

 関原氏は2005年に新潟同友会へ入会し、2009年に経営指針セミナーを受講したことが、経営者としての大きな転換点となりました。それまでは、財務諸表や福利厚生などの知識がないまま経営を続け、社員の名前すら覚えていなかったと言います。しかし、社員への反省から「何のために経営しているのか」という思いが芽生えました。

 2015年には、周囲の反対を押し切って3店舗目をオープンしました。ブライダル事業のために必要との考えでしたが、固定費が高く、費用がかさんで、6名の社員に退職してもらわざるを得ない事態となりました。さらにその後のコロナ禍では、売り上げの3分の1を占めるブライダル部門がゼロになるという危機に陥ります。

 関原氏は「労使見解」を読み返し、経営数値を社内で公開しながら社員と共にやるべきことを模索。その中で生まれたのが、まったく異業種である「雪室焼きいも」販売への挑戦でした。県の補助金を活用して機械を購入し、美容師やエステティシャンの社員たちが協力して焼き芋をつくり始めます。さらに、同友会仲間の障害者就労支援施設と連携して干し芋などの販売にも取り掛かり、売り上げを事業所に還元するコラボ商品も生まれました。

 「大きなピンチを社員とお客さんに助けられた」と振り返る関原氏。「いかに環境がきびしくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任」があるという「労使見解」の文言は、常に胸に刻み続けています。

女性活躍推進企業

 女性社員の多い同社では、女性活躍推進企業を認定する「えるぼし(3段階目)」を取得しているほか、「Ni-fulゴールド認定(ニーフル、新潟県多様で柔軟な働き方・女性活躍実践企業)」を県内の美容業界で初めて取得しています。関原氏は「女性が働き続けるのはとても大変なこと。特に地方は女性のキャリアアップに難しさがあり、働きたくても働けない状況もある」と指摘しますが、ライフステージの変化に合わせて就業時間や出勤日数を柔軟に設定することができ、社員1人1人に合わせた働き方を提供しているのが同社の特徴です。各店舗は車で10分以内の距離に配置されており、子どもの急な発熱などがあった場合もフォローできる体制にしています。子育てしやすい環境も整備されており、毎年誰かしらが産休や育休を取得していると言います。

 経営指針書を作成する際には社員アンケートを実施し、社員はチャレンジしたいことや取得したい技術・資格などを「キャリアアップ表」に記入します。コロナ禍の経験から美容以外への挑戦も促進しており、収納アドバイザーや小型船舶免許の取得をめざしている社員もいます。また、関原氏が大事にしているのが、月1回実施している全社員との交換日記です。SNSなどは使用せず、心情が現れる手書きにこだわって社員の機微な変化を捉えています。

働くことは、生きること

 関原氏の信念は「働くことは生きること」。年齢を重ねても働いて社会参画することが重要との思いから、企業目的には「一生涯働ける人をつくる」と掲げています。「経営指針との出合いが、自社の働き方改革や社員の定着率向上につながった。同友会の全国行事に積極的に参加し、さまざまな人の話を聞いて交流を深めてほしい。本音で語り合うからこそ信頼関係ができ、全国の会員と共に学び合えるのは同友会ならでは」と、関原氏は笑顔で語りました。

会社概要

創業:1997年
社員数:19名
事業内容:美容室、エステ、ブライダル美容
URL:https://www.kyo2.info/

「中小企業家しんぶん」 2025年 12月 5日号より