連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第33回は、(株)みなみちたフルーツ(林浩子代表取締役、愛知同友会会員)の取り組みです。
愛知県南知多町にある(株)みなみちたフルーツは、地元で採れるびわを活用した石鹸(せっけん)やお茶の販売、南知多の食材を味わえるカフェの運営など、地域資源を生かした事業を展開しています。
その根底にあるのは、「山、海、人を結び、南知多の誇りを未来へつなぐ」という経営理念です。
南知多に魅せられ、びわ事業へ
林氏と南知多町との縁は、大学卒業後、教師として日間賀島に赴任したことから始まります。最初は、不慣れな環境で戸惑うこともあったものの、地元の野菜や魚のおいしさに感動し、南知多の農業や漁業に関心を深めていきます。子育てが一段落した後は、SNSで南知多の景色や食の魅力を発信したことをきっかけに、漁師や農家からPRを頼まれるようになり、地域振興活動に深く関わるようになりました。
転機となったのは、地元の観光協会が当時販売していたびわ石鹸との出合いです。南知多の魅力発信に取り組む中で、初めて南知多がびわの産地であることを知り、自身もびわ石鹸を愛用するようになりました。販売終了を知ると「なくなったら困る」と観光協会に直談判し、事業を引き継ぎました。経営経験のない中で資金調達には苦労しましたが、各地のびわ産地や売り場を自ら調べた市場調査、地域振興への思いが評価され、「輝く女性ソーシャルビジネスプランコンテスト」で愛知県知事賞を受賞。伴走支援や融資を受け、びわを活用した事業を本格化させました。
誰1人取り残さない職場づくり
林氏は、SDGsを「後から取り入れたものではなく、自分が歩んできた経営そのもの」と受け止めています。その1つが、女性が働きやすい環境づくりです。林氏自身、出産・子育てを機に教職を離れた経験から、子育て中の女性が30分でも1時間でも働ける場をつくり、子どもの急な発熱や早退にも柔軟に対応するなど、それぞれの事情に応じて社会とつながり続けられる職場づくりを進めてきました。
障害者が活躍している点も同社の大きな特徴です。同社では発達障害の男性とダウン症の男性が「びわの葉茶」焙煎に携わっています。現在では2人が製造量の約9割を担っており、同社に欠かせない存在となっていますが、当初は常に下を向いてばかりいたと言います。しかし、顧客から「おいしいお茶をありがとう」と声をかけられる中で少しずつ表情が変わっていきました。仕事を通じて笑顔が増え、自分の役割に誇りを持つようになった2人の姿に、林氏は誰もが活躍できる場をつくることの意義を感じています。
パートナーシップで地域を支える
そのほか同社では、びわ農家と連携し、収穫体験の提供を通じて地元住民や観光客が農業に触れる機会をつくっています。こうした取り組みについて林氏は、将来的に若い世代がこの地で農業や漁業に関わる流れにつなげたいと考えており、農家や漁師、行政、学校、事業者との連携を広げながら、南知多の担い手づくりをめざしています。
一方で、経営は順調なことばかりではありませんでした。新規事業が思うように進まず悩んでいたとき、紹介されたのが同友会です。
会員からの率直な意見を受けながら自社の取り組みを見つめ直す中で、林氏の思いは「山、海、人を結び、南知多の誇りを未来へつなぐ」という経営理念に整理されました。同友会での関わりもまた、同社の地域循環事業を支える大切なつながりの1つとなっています。
南知多の誇りを未来へつなぐ環境経営
南知多のびわ畑は、地域の緑を保ち、山から海へ流れる水を守り、豊かな漁場を育んできました。
一方で、担い手不足を背景に耕作放棄地が増え、近年は太陽光発電設備の設置も進んでいます。林氏は、南知多のびわの付加価値を高め、びわ畑の需要を広げることが、山と海を守り、人が豊かに暮らし続けられる地域づくりにつながると考えています。「経営者は利益追求だけでなく、持続可能な環境への取り組みを少しでも意識してほしい」と語ります。人が健やかに過ごせる地域環境があってこそ、企業活動も成り立つ。
そうした思いを胸に、みなみちたフルーツの環境経営はこれからも続きます。
会社概要
創業:2017年
事業内容:びわを活用した製品の販売、カフェ運営
URL:https://minamichitafruit.com/
「中小企業家しんぶん」 2026年 7月 25日号より










