8月5日、オンラインにて2026組織強化・会員増強全国交流会が開催され、40同友会と中同協から444名が参加しました。本号では、問題提起と3つの事例報告の内容を紹介します。
【問題提起】
全国の組織強化・会員増強の課題と今後の仲間づくり
中同協 幹事長/5万名推進・組織強化本部長 中山 英敬氏
小規模事業者が増える中、そうした会員のニーズに合った学びの場づくりや工夫などが必要になっています。同友会は専門委員会などさまざまな活動を展開していますが、全会員に共通することは経営指針に基づく全社一丸の経営です。それを地域の中で実践することで、それぞれの活動が有機的につながり、新たな事例として発展しています。同友会運動の新しいステージに向け、まずは経営指針に地域課題や社会課題を位置づけて取り組むことが重要です。
役員育成と事務局体制の確立は運動を進める上で欠かせません。また、厳しい経営環境が続き、中小企業の倒産が増える中、各同友会が永続的に発展するためには、財政基盤の強化がとても重要です。会員数が伸びない、あるいは減少傾向にあると財政が逼迫(ひっぱく)してきます。会員増強の結果が財政の状況に直結しますので、会員増強の目標と計画がとても重要な局面に入っています。
各同友会の実態調査から
4月1日時点の全国の会員数は4万7786名と、3年連続で過去最高会勢を突破できました。しかし、コロナ禍からのV字回復の勢いが弱まり、近年の入会者数は横ばいで推移しています。昨年は退会者が落ち着いた印象ですが、今年度に入り増えています。全国には508の支部・地区があり、そのうち237が純増できましたが、半数に届かず46・6%という厳しい数字です。近年は、市区町村単位で対企業組織率を捉えようと訴えており、10%を超えている市町村は55ありました。最も組織率が高いのは岩手県陸前高田市で、28・3%という素晴らしい数字です。また、会員企業が存在している市区町村は80・8%となり、空白地域は19・2%です。市区町村別の純増数は兵庫県神戸市中央区がトップで39名、組織率も8・8%と高い数字です。
全国の女性会員比率は13・8%で、前年よりわずかに増加しました。各同友会の役員・理事の女性比率は12・7%と少し伸ばしましたが、中同協の役員は8・4%と1・8ポイントの減少となりました。
続いて例会づくりです。例会の開催数は大きく減りました。減少した同友会は理由をしっかりと捉えてほしいと思います。平均グループ討論時間は微増しました。気になることは、新会員オリエンテーションの延べ回数も大きく減らしています。なぜなのか、この点も各地で捉えてほしいと思います。役員研修会は41同友会で開催され、1年間に複数回開催している同友会も増加しています。
人を生かす経営を実践する上で特に重要なのが、経営指針の成文化と実践運動です。経営指針成文化セミナー(創る会)の開催数もまた、減少しています。一方で、セミナーに関わる会員数は調査開始以降初めて5000名を超え、5031名となりました。経営指針を作成して終わらせるのではなく、1年を通して実践し、振り返りをして成果と課題を整理し、課題解決の方策を次年度の経営指針に盛り込んで更新する。それを毎年継続していくことで必ず企業成長につながります。成果を伴う具体的な行動として、経営指針を毎年更新すること、ここまでを徹底してフォローしてほしいと思います。
【事例報告(1)(岩手)】
理事・役員が結束し大増強運動
岩手同友会 相談役理事/(株)高田自動車学校 取締役会長田村 滿氏
岩手同友会 組織委員長/(有)小川原自動車鈑金 代表取締役 小川原 一成氏
〈田村氏〉
2007年、18名で気仙支部が設立されました。当時から、地域の衰退について会員同士で話し合い、「地域を守ることは自社を守ることにつながる」という問題意識を共有していました。そして、「地域を守るために同じ志を持つ経営者を増やそう」と、勉強会や意見交換を重ね、地域の経営者に積極的に働きかけた結果、3年足らずで約70名まで会員を拡大しました。
2011年の東日本大震災で、地域企業は甚大な被害を受けました。全国の同友会からの支援を避難所に届けるとともに、避難所で生活されている皆さんに「中小企業家同友会」の存在や理念を伝えました。高田自動車学校にはプレハブの気仙支部臨時事務所を設け、会員が定期的に集まり、地域や企業の状況を共有しました。震災後も活動を止めず、会員数を減らすことなく組織を維持し、「地域を守る」という結束をさらに強めました。
その後、岩手同友会の会員数は300~400名台で推移していました。昨年、中小企業問題全国研究集会(全研)の開催を機に「500名達成」と掲げましたが、当初は理事・役員の間にも他人ごとという雰囲気がありました。そこで私は、「このままでは達成できない。自分ごととして捉え、問題意識を持つことが必要だ」と問題提起しました。すると、理事の1人が「やりましょう。500名、やろうじゃないですか」と声を上げてくれました。私自身は13名の入会を実現しました。代表理事が率先して動くことで、他の理事にも「自分たちもやらなければ」という意識が広がっていきました。
会員増強の目的は、中小企業を取り巻く環境をよくし、地域や中小企業を守ることです。「中小企業は、経済をけん引する力であり、社会の主役」という中小企業憲章の理念を実現するためにも、会員数という「数字」を力に変え、国や社会への発言力を高めていく必要があります。
退会を防ぐことは、日常的な関わりによってできるのではないかと思います。気仙支部では、日常の例会に加え、「地域経営を実践する会」を設け、経営指針を成文化している方も、していない方も、年代や立場を超えて経営者として一緒に学ぶ場をつくっています。「何のために経営するのか」「お客さまは誰なのか」といった経営の根本を考え、利益や経営の実態も含めて率直に情報を交換しています。こうした学び合いを続け「経営指針をつくる会」につなげ、継続的な関わりを深めることで退会防止につなげようとしています。
〈小川原氏〉
500名を達成できたのは、特別な方法があったわけではありません。各理事が候補企業をリストアップし、事務局と共に1社ずつ訪問・勧誘した結果です。同友会が大切にしてきた「地に足をつけた地道な活動」を徹底したことが、結果につながりました。
500名という数字を達成したことで、県や市など行政からの見方も大きく変わり、同友会への期待も高まりました。中東情勢をめぐる危機への対応でも、聞き取り調査や行政への提言、新聞報道につながるなど、地域社会への発信力が高まっています。
一方で、500名達成後は退会者も出始めています。経済環境が厳しい中、経営指針づくりなどを通じて関わってきた会員からも退会者が出ており、今後は会員の増強だけでなく、いかに会員数を維持していくかが課題です。
退会防止にも特効薬はありません。日常的なフォローと「地に足をつけた活動」を続けることが大切です。厳しい経済情勢だからこそ、同友会で学んできたことを地域に広げ、組織を維持・発展させていくことが、経営者としての責任だと考えています。
【事例報告(2)(神奈川)】
創立60周年で会勢1000名突破―SNS広告活用とオリエンテーション
神奈川同友会 前組織委員長/横浜電子(株) 代表取締役神田 一弘氏
組織委員会の再構築
神奈川同友会では、組織委員会が新入会員オリエンテーションやグループ活動などを展開しています。私が委員長に就任した後、組織体制の大幅な見直しを行い、担当副委員長を6名指名しました。具体的には、ウェブ戦略担当、仲間づくり担当、例会づくり担当、女性部担当、青年部担当、統括担当を配置し、私を含めた7名体制としました。これにより各人の役割が明確になり、組織委員会が組織的かつ自走して動ける体制になったと考えています。
組織づくりの5つの視点として、(1)理念と目的を共有すること、(2)経営を学べる場にすること、(3)温かな組織にすること、(4)会員が企画・運営に携わること、(5)会員と事務局が共に担うことを掲げました。あわせて組織を横につなぐことも意識し、次世代を育てる役割である青年部・女性部や、運動を具体化する役割である専門委員会との連携を強化しています。特に、ウェブ戦略においては、効果的な外部発信を行っていく必要があるため、広報委員会との密接な連携を図っています。
ウェブ戦略とオリエンテーション刷新
コロナ禍で社会の動きが止まる中、「目の前の時間を未来への投資へと変えよう」との考えの下で「ウェブ戦略プロジェクト」が始動しました。
運用面では、Facebook広告とGoogle広告をチームで運用し、配信範囲やキーワードを毎月見直しているほか、配信終了後も一定期間内に効果検証を行うPDCAサイクルを徹底。こうした「実行した結果を検証し、次の学びへとつなげる」サイクルは会社経営にも役立つ学びとなっています。
初年度の2020年度は総費用が約86万円、ウェブ申込約70件、実参加39名、ウェブ経由入会10名(入会単価約8・6万円)でしたが、継続的な改善により、2025年度にはウェブ経由入会が51名に増加し、入会単価は約3・1万円まで改善しました。また運営面でも、ランディングページや広告の作成を輪番化し、担当者が代わっても継続できる仕組みを構築しました。
また、従来の手続的な新会員オリエンテーションも、ゲストの悩みや課題に真剣に向き合う場へと刷新しました。さらに2025年11月ごろ、前述の広告のキーワードから「起業準備」を除外したことで、実際の創業後に悩みを抱える経営者の参加が増加。ゲストが起業後の生の悩みを発表することで、既存会員も自分ごととして捉えるようになり、より丁寧な対話と助言を行うようになっています。
学びを実践に
2025年6月には1000名会勢を達成し、大きな喜びとなりました。今後は2026年からの5年計画で2030年に1200名会勢を達成するというビジョンを掲げて動いています。「人は指示され行動するのではなく、納得したときに自ら行動する」ことを念頭に置きつつ、今後は製造業部会の活動強化や他同友会との連携などにも注力していきます。単にウェブ戦略がうまくいったから増強できたのではなく、学び、改善し、仕組み化することこそが仲間を増やすのだと確信しています。
【事例報告(3)(京都)】
幸せに暮らせる地域づくりを実践する経営者集団をめざして
ビジョンを力に「オール京都」で仲間づくり
京都同友会 代表理事/丸福産業(株) 代表取締役出野 哲也氏
京都同友会は、昨年に29年ぶりとなる会員2000名への回復を達成しました。ただし、2000名はあくまで通過点です。私たちがめざしているのは、対企業組織率10%。その過程として、まず7%にあたる2222名を目標に掲げました。語呂合わせではなく、組織率から逆算した数字です。しかし、その分かりやすさもあり、目標が会内に浸透、「オール京都」で達成をめざす機運が生まれました。
「何のために」をビジョンで共有
大きな転機となったのが、第8次ビジョンの策定です。メインテーマに「幸せに暮らせる地域づくりの核となる経営者集団になろう!」を掲げ、めざす同友会像を「地域との繋がりを深め、人を大切にする仲間が増える団体となろう」と定めました。
会員を増やすこと自体が私たちの目的ではなく、幸せに暮らせる地域をつくるために、人を大切にする経営者を1人でも多く増やす。その「何のために」を共有したことで、限られた役員だけではなく、会全体に仲間づくりの意識が芽生えたのです。実際、昨年は190名弱の会員が新しい会員を紹介し、入会につなげています。
全活動を仲間づくりへ
委員会活動も見直しました。会員定着のためのチェックシートづくりを契機に、それまで別々に動いていた委員会が連携し、例会や研修、仲間づくりを一気通貫で考えるようになりました。専門委員会の研修会も広く発信することで、毎回100名を超える参加者を集め、ゲストとの接点にもなっています。また、組織委員会も単に数字を確認する場ではなく、各支部がそれぞれの戦略や実践を共有する場へと変化してきました。
地域連携も仲間づくりにつながっています。京都同友会では行政との関係を深めるとともに、地元金融機関と包括連携を進めています。金融機関との連携では、同友会で共に学んでほしい経営者をゲストとして例会に紹介してもらっています。一昨年には約50名が紹介されゲストとして参加し、その後10名ほどが入会しました。入会に至らなかった参加者とも関係を継続し、将来の仲間づくりにつなげています。
さらに広報委員会と連携してウェブ広告も始めました。毎月数名がウェブ広告を通じてオリエンテーションに参加しています。
循環型組織への発展
これらの取り組みは、それぞれ別のものではありません。ビジョンを共有することで仲間づくりの裾野が広がり、活動を通じて新たな仲間が加わる。その仲間が学び、成長し、また次の仲間を呼ぶ。すべての活動が有機的につながりながら、仲間づくりが進んでいます。
2026年度から始まった2030年ビジョンでは、「経営力」「地域力」「組織力」を柱に掲げ、人が人を呼び、成長がめぐる循環型組織をめざしています。京都では2028年に青年経営者全国交流会、2030年に中小企業問題全国研究集会を控えており、これらの全国行事を、ビジョンをより深く共有し、会員増強と組織強化を進めるための大きな機会と捉えています。これからも「オール京都」で、幸せに暮らせる地域づくりを実践する経営者集団をめざして取り組んでいきます。
「中小企業家しんぶん」 2026年 9月 15日号より










