企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「経営指針」をテーマに、大村英幸氏((株)パレット代表取締役、愛媛同友会会員)の実践を紹介します。
倒産からの再出発、孫請けから自社受注へ
大村氏は2012年4月、勤めていた造園会社の倒産を機に、四国中央市にて個人住宅の庭や外構の設計・施工を手掛ける(株)パレットを創業しました。2017年に経営指針成文化セミナーを受講し、経営理念を作成。事業計画に具体的な行動を落とし込みました。その1つが事務所の移転です。2019年、古い倉庫からアクセスやデザインに優れた現在の事務所へ移転しました。コロナ禍ではメインの取引先だったハウスメーカーの仕事が大幅に減少しましたが、新事務所を構えたことで個人のお客さまからの直接相談が増え、自社受注への転換によって危機を乗り越えました。
その後、会社はパートを含め12名の体制へと成長しましたが、今度は「人」に関わる課題が表面化します。
会社の成長で見えてきた新たな課題
社員が急増した2020年ごろは、誰もが会社をよくしたいという思いを持ちながらも、それぞれの考えやめざす方向がかみ合わず、意思疎通に苦労したと言います。大村氏自身も、社員からの言葉を批判や否定と受け止めてしまうことがありました。さらに、創業時から共に歩んできた社員と意見がぶつかり、社員が出社しなくなる出来事もありました。
話し合う中で、社員が抱く思いを率直に言える関係を築けていなかったことに気づきます。この経験を機に、相手の言葉を否定ではなく1つの「意見」として受け止め話し合うこと、そして経営について共に考え、進むべき方向性を統一することの大切さを実感しました。
その後は、外部講師を招き、1年をかけて心理的安全性を高める土壌づくりに取り組みました。ミーティングでは経営理念を判断や議論のよりどころとして、社員同士が「感謝と思いやり」を共通の価値観として持つことを意識しています。
さらに社員が学生からインタビューを受ける共育型インターンシップ(インタビューシップ)にも挑戦。働くことや会社について言語化する必要のあるこの取り組みを通じて、社員がより積極的に会社経営に関心を持つようになり、理念の共有にもつながったと大村氏は語ります。
「楽しい」から始める社内環境整備
同社の特徴の1つに、人とのつながりから入社する社員が多い点が挙げられます。社員の家族や知人だけでなく、もともと同社の顧客だった人が、スタッフの仕事ぶりや庭づくりの面白さにひかれて入社した例もあります。
大村氏は、人が働き続ける上では、待遇や制度だけでなく、仕事そのものを「楽しい」と思えることが大切だと考えています。そこで、ベテラン社員がメンターとなって仕事を教え、日々の関わりの中で信頼関係を築き、仕事を覚えられる環境を整えています。まずは「出社することが楽しい」と感じてもらうことを大切にし、社員同士が普段の業務を離れて交流できるレクリエーションも設けています。
さらに今年は経営の視点を共有できるよう指針セミナーに社員と共に参加。経営指針を社長だけのものにせず、社員と共につくるものへと変えていく。そこに、これからのパレットの人材育成があります。
激動の時代を生き抜くために
今後、住宅市場の縮小が見込まれる中、大村氏は、これまでと同じ事業を続けるだけでは会社の成長は難しいと感じています。AIによって設計やプランづくりまで機械が担える時代が近づき、「これから会社が生き残るために何が必要なのか」を強く意識するようになりました。
そのためには、既存事業にとらわれず、新たな事業を生み出していくことが欠かせません。現在は、庭づくりで培った設計力や提案力を生かし、フェイクグリーンを使った事業者向けの室内空間づくりなども構想しています。
先の見えない時代だからこそ、さまざまな経営者と学び合える同友会は、自社の未来を考える上で格好の場だと大村氏は考えています。しかし、学ぶだけでは会社は変わりません。「同友会で学んだことを、本当に自社で実践できているのか」。大村氏は自らにも、同友会で学ぶ経営者にもそう問いかけます。
学びを自社に持ち帰り、1つ1つ実践していくことが会社を変える一歩になる。大村氏が大切にしているのは、そんな「学びと実践」のサイクルです。
会社概要
創業:2012年
社員数:12名
事業内容:外構(エクステリア)工事、ガーデン・植栽工事
URL:https://palette-2012.com/
「中小企業家しんぶん」 2026年 9月 15日号より










