歴史に何を学び未来を構想するのか

元日の新聞各紙の社説を読んで

 今年の元日の各紙社説は「戦後60年」の節目の年として岐路にあるという問題意識で各紙が一致しました。還暦を迎えた戦後日本は、世界にどう向き合い、どう自らの課題を解決していくのか、という議論を展開しています。

 元日の社説は今のマスコミ状況を反映し、憲法の基本理念である「戦後日本の平和主義」を否定するか、肯定するか、の2つに論旨がはっきり分かれました。もっとも、否定派の読売新聞などの社説は、自分の主張したいことが先走り、論理の飛躍が目立ちます。一方、地方紙などでは、生活感覚に基づいた平和に生きる主張が印象的です。

 各紙は「戦後60年」を切り口としながら、さまざまな角度から2005年が歴史の節目を刻む年であることを論じています。

 阪神・淡路大震災から10年であることも大きな節目。「阪神・淡路大震災は、近代都市を直撃した初めての大規模災害だった。都市の生活構造は、モノとしても、仕組みとしても、なぜあんなにもろく、危ないものだったのだろうか。その問いは、戦後の繁栄を支えてきた政治の意思、行政制度、産業構造、そして、わたしたち自身の暮らし方など『日本型システム』に対する疑問そのものだった」「内外の環境が大きく変化する中で、現実対応を迫られていることは否定しない。しかし、ひとまず立ち止まり、わたしたちは自国をどんな国にしたいのか、世界の中でどう生きたいのか、から問い直したいと思う。過去に学ぶことは、未来を探ることである」(神戸新聞)。

 また、日本経済新聞はプラザ合意から20年であることをとらえ、「プラザ合意後のバブルの発生と崩壊、そしてデフレの進行」した「第2の敗戦からの再出発」を呼びかけます。では、「戦後60年の教訓は何か。おごりが自らを見失わせ手痛い打撃をこうむる。過信と悲観の振れは大きかった。過去の成功体験にこだわるあまり転換が遅れた」ことだとします。そして、本物の「競争力プラス協調力」を身に付け、「多様な価値を認め合い、チェック機能が働く柔軟な社会。そんな明智ある国際国家こそ歴史が教える日本の道である」と説きます。

 その他、地方紙・ブロック紙の元日社説からタイトルだけ拾うと、「平和の構想力を高めよう」(北海道新聞)、「戦後60年、かみしめたい平和の重み」(中国新聞)、「戦後還暦、歴史の逆回転を恐れる」(南日本新聞)、など「平和」や「過去に学ぶ」がキーワード。

 「敗戦から60年。見回すときな臭さが漂い、この国の行き先に不安を感じます。武力によらない新しい国際秩序への努力はできないか。新年の模索です」(中日新聞・東京新聞)。還暦とは、10干12支の組み合わせが60年で一回り、生まれ直すという意味。「武力を使わない新しい国際的な秩序づくり―日本にふさわしく、より現実的な役割ではないでしょうか。『戦後零年』に還った元旦、あらためて思います」(同前)。道理ある見識。生まれ直す気持ちで2005年に向き合いたいと思います。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2005年 1月 15日号より