【運動としての経営指針づくり】沖縄同友会の実践

 中同協が活動方針で経営指針(理念、方針、計画)づくりを提起した1977年から約30年。経営指針は実践を伴って初めて企業を変え、地域を変える力となっていきます。本紙連載第6回目は、創立当初から経営指針の作成を活動方針の柱に掲げ、経営指針の実践促進に取り組んできた沖縄同友会を紹介します。

目標は全会員の指針確立・実践

 指針づくり運動のシステム構築【沖縄】

創立初年度から経営指針セミナーを開催

 沖縄同友会は、創立時の1987年以来、経営指針作成を活動方針の柱に掲げ、活動を進めてきました。共同求人参加企業を中心に、社内規定の整備とあわせたセミナーとしてスタートし、形を変えながら、今年で第30期を迎えました。

 沖縄同友会の経営指針づくり運動は、大きく3段階に区分できます。

 第一段階は、創立から全国総会を沖縄で開催した1997年までの時期です。この時期は、1泊2日の「経営指針作成セミナー」を軸にしながら、例会での報告やフォロー講座などで推進していました。

 セミナーへの関心が高まる中、共同求人参加企業中心から全会員での取り組みへと広げ、「よい会社づくり」「魅力ある企業づくり」の視点で経営指針をテーマにした例会やシンポジウムを開催。作成の意義やその実践を会員へ広げました。

 また、セミナー受講生を対象にしたフォロー講座を設け、指針作成の推進を図るとともに、会員の実践に生かしてきました。

 そうした状況の中、「厳しい時代を乗り越えるには経営指針の確立が重要」と、宮古・八重山の離島2支部でもセミナーを独自に開催するようになりました。

講師団の結成と独自のパンフレットを発行

 1998年から2000年が第2段階です。この時期は、沖縄同友会の経営指針づくり運動のシステムが構築され、全会員へ大きく広げた時期です。

 システムの1つは、経営指針づくりと例会、自社での実践というシステムを構築したことです。2つには、経営指針作成セミナーを受講した人を中心に、専門家(公認会計士・税理士)の協力も得て経営指針講師団を発足させ、各支部例会での報告をはじめ、フォロー講座の講師を務めてもらいました。3つには、沖縄同友会独自のパンフレットを7種類発行し、中同協のパンフレットをテキストに、その補助的役割と沖縄の事例を掲載して、より具体化・実践に生かせるものにしました。

 第3段階は、これまでの1泊2日のセミナーを「経営指針作成塾」にリニューアルした2001年から現在までの時期です。これは、単発の講義ではなく、経営理念から数字の分析などをじっくりと学べると同時に、経営指針書を完成させるカリキュラムで、全5講を2カ月かけて行います。

 特に、経営理念の講義は1泊2日で行い、自社の存在意義を自問し、お互いに発表することによって、より深いものにしています。さらに、「労使見解(「中小企業における労使関係の見解」、中同協発行『人を生かす経営』所収)」の精神を生かした経営理念と中小企業憲章とのかかわりについても学んでいます。

 支部でも独自の「作成塾」が開かれ、指針づくりが会内へ広がるとともに、受講生の自社での実践が促進されるようになりました。

21世紀型企業づくりの要=経営指針の確立

 現在の特徴としては、(1)経営理念の見直しを図る企業が参加するようになってきたこと、(2)1社から複数の参加があり、幹部社員と一緒に見直し・作成する企業が出てきていること、(3)新会員の申し込みが目立つようになっていることの3点があげられます。

 経営委員会では、全会員が経営指針を確立できるよう、「経営指針作成塾」を軸に、半日コースの「経営理念作成セミナー」や「人事制度セミナー」、「就業規則学習会」など時代にあった学習会を企画しています。

 課題としては、現在年1回の「作成塾」を年2回開き、毎回10名以上の受講生を確保することがあげられます。そのことが、会員の要望にこたえていくことでもあります。また、経営指針の成文化と実践が進めやすいカリキュラムへと、より充実させることも課題の1つです。

 経営指針は、金融機関はじめ地域が企業を評価する重要な基準の1つです。企業の社会的存在意義を問い直し、科学性・社会性・人間性の3つの視点から自社の理念を確立し、また経営指針の浸透・実践を通して社員の自主性を引き出すことが大切です。経営指針の作成・実践は、同友会が提起している「21世紀型企業」づくりの要であり、強じんな企業づくりへとつながります。

沖縄同友会事務局 當眞 永子

社員と共に顔の見える経営めざす

 総合包装(株) 社長 宮城 勇氏(沖縄)

 宮城氏は、沖縄が日本に復帰した翌年の1973年、総合包装の中部営業所に営業配達係りとして入社。半年後には営業所長をまかせられました。

 1976年、本社で労働争議が発生し、本社あわせて半分の社員が退職しました。またそのころ、関連会社の倒産のあおりを受け、総合包装も倒産の危機に直面しますが、社長の退陣を条件に支援融資を受けることになりました。宮城氏はその後、取締役営業部長、常務、専務を経て社長に就任しました。

 「管理職を社外研修に派遣しても、しばらくは元気が良いが、すぐ元に戻ってしまう状況でした。会社の土壌が良くないことに気づき、社内で管理職の勉強会(コンパス会)を立ち上げました。今年で100回を数えます」と語る宮城氏。1996年に同友会の「経営指針作成セミナー」に参加し、自社の存在意義や経営理念の必要性を痛感しました。「コンパス会」で1年近くかけて自社の経営指針を作成。理念や方針の浸透には5年間を費やしました。社員も「生活向上や家族を養うため」といった主観的価値観から、「能力を高めお客様の喜ぶ顔が見たい」と働く目的が明確化されました。

 現在、パートも含めて月1回の学習会を開催しています。

 「入社から30数年。技術も資格もなく、お客様を想(おも)う心だけでやってきました。社長就任3年目。最近、営業マンから『お客様から、社長の顔を見たことがないと言われた』と聞き、TOP営業の必要性を痛感しました。社員と共に学び、顔の見える経営を目指して頑張っていきたい」と話す宮城氏の言葉から、経営指針を社員と共有し、「共に学び、共に育つ」ことの大切さが伝わってきます。

【会社概要】
設立
 1976年
資本金 2000万円
年商 15億5000万円
社員数 36名(パート4人含む)
業種 包装資材、包装機械、食品、機械、物流機器等の販売、ISO―HACCPシステム構築支援
所在地 沖縄県西原町字小那覇1181
TEL 098-946-5411

「中小企業家しんぶん」 2006年 12月 5日号より