【運動としての経営指針づくり】岡山同友会の実践

 中同協が活動方針で経営指針(理念、方針、計画)づくりを提起した1977年から約30年。経営指針は実践を伴って初めて企業を変え、地域を変える力となっていきます。本紙連載第8回目は、参加企業の発表と討議を重視した「経営指針成文化研修会」を行い、昨年から理念浸透のサーベランス(審査)も始めた岡山同友会の取り組みを紹介します。

新しい時代を切りひらく企業づくり

 経営理念が会社を変え、地域を変える【岡山】

滋賀同友会の成文化セミナーに参加

 2003年、滋賀同友会の「経営指針成文化セミナー」の最初の1泊研修会に、岡山同友会経営委員会と事務局長の4名がオブザーバーとして初めて参加しました。

 2日間のセミナーでは、「何のために経営をするのか」「どんな会社をめざすのか」「社員との関係はどうあるべきか」について2日で15時間、じっくりと時間をかけ、参加企業1社1社について徹底して議論されており、その真剣な姿勢に驚き、大きな気づきを感じました。

 岡山に帰り、早速、事務局に4名が集まり、ほかの事務局員も参加して、滋賀同友会での2日間のメモを出し合い、何を学んできたかを再確認しました。

「成文化研修会」5カ月コースを開始

 岡山同友会第10期「経営指針成文化研修会」(2003年3~7月)からは、中同協の『経営指針成文化の手引き』『人を生かす経営~中小企業における労使関係の見解』『経営理念』『人間力経営』の4冊を必読のテキストとして、理念シートを中心に、参加企業1社ずつの発表と討議(1社60分)を5カ月間繰り返し、経営理念の成文化と方針戦略3カ年・1カ年計画の作成を通じた経営指針づくりへの取り組みが始まりました。以来、2007年1月終了の第17期までに、80名を超える成文化企業が生まれてきています。

 また、5カ月コースに参加して成文化した会員には、次回からの成文化研修会にフォロー委員として参加し、もっと自社の理念・方針について深めていくことを推奨しています。1月に終了した第17期には、19社の受講生とフォロー委員38名が最後まで参加。最終の1泊の会では、10枚のシートをまとめ、自社での発表予定も含めた決意表明を全員が行い、感動の終了となりました。

21世紀型企業をめざし経営革新に取り組む

 岡山同友会では、この4年間、21世紀型企業づくりをめざして経営革新に取り組み、科学的な方針戦略の確立と、それを実行できる人材育成を、会の基本の活動として位置づけ、取り組んできました。

 理事や支部役員も、成文化研修会に積極的に参加し、幹部とともに経営理念を追求する会員企業が増えてきました。

 2005年の第14期、第15期の成文化研修会には、経営委員会を中心に40数社が参加。新会員が入会後まもなく経営指針づくりに取り組むことも推進してきました。

 成文化研修会への参加によって、各企業では経営理念をはじめとして方針・戦略、中期3カ年計画・単年度計画について、発表と討議を行い、深められるようになってきました。

経営指針サーべランスで成文化企業を訪問検証

 また、昨年からは「経営指針サーベランス」にも取り組み始めました。成文化して理念を追求する会員企業の、理念の浸透を検証するもので、支援にも努力しながら、毎月1社ずつサーベランス(審査)を行ってきました。

 経営委員会ではフォロー委員の育成と充実をはかり、60名を超える委員を養成してきました。さらに、作成した経営指針書をもとに社内で発表会を開催する会員企業がどんどん増えてきています。

 岡山同友会の重点方針には毎年、第1に「経営指針成文化運動の推進」を掲げてきましたが、やっと多くの会員に、経営指針の確立と全社的実践についての重要性が確認されてきました。

成文化研修参加会員が110名増加の推進役に

 この方針のもとに、成文化研修会に積極的に参加する新入会員が増えてきています。

 そして、その成果として1994年から2002年の会勢停滞期を脱し、2003年から4年連続で会員増加を実現しました。500名を切っていた会勢を3年10カ月で純増110名で、592社にしています。

 岡山同友会の中期ビジョンでは、2010年に向けて「1200名の会勢実現」とそれを保証する「600社の成文化企業づくり」を打ち出しています。

岡山同友会事務局長 磨田 俊司

経営理念の社員との共有で会社が変わる

 (株)ジョア 社長 神馬 孝司氏(岡山)

経営理念を再構築し、かがやく女性を応援する

 岡山県にはジーンズ、学生服などの生産では全国トップシェアの地域があり、明治以来、その伝統文化とともに地域の産業を支えてきました。

 しかし、時代の変化とともに需要は半減。新たな製品づくりに活路を見出してきました。その1つであるオフィスユニフォーム業界は、1970年の大阪万博がユニフォーム元年と言われ、15年間で上場した会社もありますが、92年より急降下し、ピーク時の60%ダウンとなります。同社も94年・95年と10~20%ダウンを経験しました。

 そして、岡山同友会の経営指針成文化研修会に参加し、再度経営理念を考え、「共に創り、共にかがやく」という理念を完成させました。

 経営指針の全社的浸透のために、幹部も経営指針成文化研修会に5カ月間参加。そこで自社の社会的使命と自社の独自性を追求し、夏物のジョア、チェック柄の素材をいかした商品企画等を強化し、人気商品を製作しました。

中小企業をターゲットに、4年連続2ケタ成長

 中小オフィス・ユニフォームメーカーの戦略として、社員数十名から100名以下の中小零細企業を顧客として、ターゲットを絞り込み、売上を伸ばした結果、4年連続2ケタ成長を実現しています。働く女性とその企業を、より一層輝かすことを使命として、「社員と共に育ち、共に生きる会社づくり」を熱く語り合う社風をめざすことで、厳しい業界の中でも、生き残り、着実に前進する企業となっています。

 同友会活動15年の積み重ねにより、数人の家族経営から脱皮し、ワンマンでトップダウンのやり方から、同友会理念を追求する真摯(しんし)な経営姿勢に社長自らが変化。社風も変わり、企業の着実な成長へとつながってきています。

【会社概要】
創業
 1986年
資本金 1000万円
年商 5億1000万円
社員数 21名
業種 女性用オフィスウェア及び メディカルウェアの関連商品の企画製造販売
所在地 岡山市内尾288-14
TEL 086-281-4446
URL http://www.joie.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2007年 2月 5日号より