地域を元気にする企業づくり―42同友会が取り組み
中同協が活動方針で経営指針づくりを1977年に提起してから30年。本紙では「よい会社をつくる~運動としての経営指針づくり」として、宮城、千葉、富山、滋賀、大阪、岡山、愛媛、宮崎、沖縄の9つの同友会の取り組みや活動上の課題を紹介してきました。本号では、「2006年度同友会活動アンケート」も参考にしながら、本活動の教訓をまとめてみました。
学んで実践する同友会役員をはぐくむ
全国的には、2006年度は47同友会中42同友会が、セミナーや創(つく)る会などの経営指針づくり活動を行い、937名の会員が修了しています。
経営指針づくりは、「よい会社」としていくための1つの活動として取り組まれていますが、各同友会ではセミナーの持ち方や助言者のあり方などで試行錯誤を繰り返してきました。
「経営指針をつくり、業界のリーディング企業になって宮城を変えよう」(宮城)との高い目標を設定して取り組む中で、結果として「同友会運動の核づくりを担ってきた」(滋賀)など、学んで実践する各同友会の役員層をはぐくんできています。
「経営者の責任」を自覚する
本紙で紹介した9つの同友会では、経営指針づくりの際に「中小企業における労使関係の見解(略称・労使見解)」の学習を明確に位置付けています。全国的には、経営指針づくりの中で「労使見解」の学習を行っているのは42同友会中38となっています。
「労使見解」の学習では、まず受講生に「経営者の責任」を問いかけ、経営を維持発展させていく覚悟を促し、「対等な労使関係」として、企業経営の要が労使の信頼関係にあることの理解を深めています。
経営理念確立の過程を丁寧に
経営指針の理念・方針・計画の策定では、「経営理念」の確立の過程を大事にしています。
「経営理念を次の3つのテーマで深めています。(1)何のために、(2)社会の一員であることの理解と責任、(3)どのような事業を通じて理念を実現するか」(滋賀)などのように、経営理念作成の過程で深く自社を見つめ直しています。
宮崎では「『経営理念の発信が、社長を、社員を鍛えてくれる』などといった参加者の声が、活動継続の励ましとなっています」としています。
社員の力を引き出し、地域を変える企業に
経営指針づくり運動の成果として、「5~10年先を見通す(分析する)ことで自社の課題が明確になり、新卒採用や社員教育に取り組む企業が増えています」(富山)、「経営情報をオープンにし、社員の力を引き出すことに傾注する企業が増えてきた。自社の存在意義を明確にし、地域との共存、共栄の視点で経営戦略を考える企業も増えてきた。リーダーシップを発揮できる役員が増えてきた」(千葉)などの成果が表れてきています。
支部例会などとの連携で実践者増やす
修了生が助言者や報告者となり、受講者と修了生が経営のありようを問いかけあうことによって、修了生はその実践が試されるという、共に学ぶスタイルが確立されつつあります。このような形式は42同友会中38で行われ、昨年度は896名が助言者などとしてかかわりました。
一方で、経営指針の実践が思うように進まないなど、活動の課題が明らかになってきました。
宮城ではその原因を「(1)経営者の経営責任があいまい。(2)社員を目的遂行のパートナーととらえる人間観確立に葛藤がある。(3)第二創業の方向性を定めることの難しさ」とし、これらを解決するため、支部例会や共同求人活動などの5つの柱の総合実践で克服しようとしています。
また沖縄同友会では「経営指針づくりと例会、自社での実践というシステムを構築」しています。
より多くの会員を
「経営指針成文化」でよい会社をつくることが、同友会の魅力となる中で、2006年度1年間では、昨年度入会した4477名に対して20%、全国の会員数(4月)の2%程度の修了生数となっています。
年間400名が入会する大阪では、昨年度から18の支部を取りまとめる5つのブロックで、それぞれ「経営指針確立・成文化セミナー」を開催。年間600名が受講し、200名が修了できる体制を確立しました。
経営理念の浸透を検証
岡山では、昨年から会員企業の理念の浸透を検証する「経営指針サーベランス(審査)」に取り組み始め、大阪同友会でも同友会独自の経営品質賞をつくり、表彰を行いました。愛媛同友会では愛媛大学や松山市との産学官連携で、自社の強み弱み分析を行い、客観的に自社の経営課題を分析し、戦略に盛り込める「企業変革支援プログラム」を完成させました。
中同協では全国で使える「企業変革支援プログラム」の検討のために、経営労働委員会内にプロジェクトを設けています。
地域を元気にする 企業づくりへの期待
中同協の今年度の重点方針の1つに「雇用、仕事、新しい暮らしをつくりだし、地域を元気にする企業づくり」があります。
経営指針をつくり、採用・教育を強化し、さらに自社を見直す。その繰り返しの中で、社内に経営課題克服のための体質ができていきます。地域を支える企業をより多くはぐくんでいける同友会活動の総合的実践に期待が高まっています。
中同協事務局次長 平田美穂
「中小企業家しんぶん」 2007年 7月 5日号より