社員の気づきを大事に (株)AZUMA 社長 上田裕子氏(熊本)

働きやすく効率的な仕組みづくり

父親の志を継いで

 「創業者であった父親の『使命感』を継ぐ思いでした」。

 農業の傍ら、1965年に農業資材運搬を主な生業とする「矢部運送」として、創業された(株)AZUMAは、現社長・上田裕子氏の父親である東一徳氏によって創業されました。

 上田氏は、仕事が行き詰まり、廃業を考えながら車庫の前で悩んでいる父親をみて、自ら会社を継ぐことを決意。22歳の時でした。

経営者としての学び

 その後、新たに荷主や社員を確保するため、熊本市内に事務所を構え、仕事優先ですべての業務を回し、必死の思いで奮闘してきた上田氏。しかし、社員が仕事中に大きな事故を起こし、労働環境の整備や社員教育ができていなかったことを思い知りました。

 地元運送会社の若手経営者「継運会」の第1期生として学習会に参加し、決算書の読み方を学び、2世同士で悩みを語り合えるようにもなりました。

 1992年、ダイレクトメールで同友会の例会の案内が届き、大阪此花運送の川原巧社長(故人)の報告に感動して、同友会に入会。その後、経営指針セミナーを受講し、経営者として何をしなければならないか、真剣に経営について考え、指針を成文化していきました。

「経営者の責任」を果たすために

 「『経営者の責任』を考えると、大事なのは何よりも社員とのかかわりであること。労働条件の改善だけでなく、社員が働きやすい効率的な社内の仕組みづくりをしていくことを真剣に考えるようになりました」と、上田氏。

 2007年4月には第20期「経営方針書」を発表。最初は社長の方針を発表するものだったものが、幹部との論議の上で発表するものに変わり、今では幹部で検討した方向性を各部門で小グループにおろし、具体化し計画をたてることで、社員全員のものとなってきました。

需給規制緩和、軽油高騰の中で

 トラック輸送業は、1990年に貨物自動車運送事業法施行で規制緩和がなされました。これにより、事業への参入は需給調整規制に基づく免許制から許可制に、運賃・料金は認可制から事前届出制とされ、競争が激化。しかし、(株)AZUMAでは固定給制を導入し、社員が働きがいのある環境づくりを実現してきました。

 熊本県トラック協会に加盟している会社は785社(2006年)。

 (株)AZUMAは、車両数と仕事量では県内10位。低迷する運賃や軽油の相次ぐ値上げ、安全対策や環境保全対策でコスト負担も増える中、半導体や大型精密機械の運送に対応したターンオーバーウイング(横から開く荷台)のトラックの導入など、物流事業、倉庫事業、引っ越し事業の3部門を持つ総合物流企業として、価格競争に巻き込まれないよう地歩を固めています。

 また、車検など車両整備のための別会社を立ち上げ、コスト削減の工夫をしています。

 一昨年から「運輸安全一括法」が施行され、「運輸マネジメント」が導入されました。これを先取りするように(株)AZUMAでは、ISO9001:2000を取得。

 「何よりも社員が落ち着いて働ける」ことを重視し、物流の周辺に目を向け、利益率を重視。労働時間の短縮を行うためにも、社員一人ひとりがその個性や能力を発揮できるよう、情報の共有や研修会、レクリエーションを積極的に行っています。また、社員が取引先から褒(ほ)められたことや社内の方向性を、社長のメッセージとして社員に届けています。

 社訓は昨年まで「感謝 感心 感動」でしたが、今年から「環境」を加え、「(株)AZUMA4つのこころ」としています。

 「社員に『仕事の判断基準は、経営理念』という感覚が広がりはじめた」と、にこやかに上田氏。女性ドライバーも活躍する中、「社員一人ひとりの気づきを大事にしたい」と、普段から社員への声かけを大事にしています。

経営理念

1、私達は信用を築き確実・迅速・安全に輸送することを任務とし、最高のサービスと信頼によって地域社会に貢献します。
2、私達は仕事に誇りと情熱を持ち、自己実現に向かって働きがいのある会社をつくります。
3、私達は1人1人がセールスドライバーとして、常に創意工夫を心がけ未来への創造を目指し、限りない挑戦と共に育つ。

会社概要

設立 1965年
資本金 1000万円
年商 8億円
社員数 110名
業種 一般地域貨物運送事業、引越業務、倉庫業務など
所在地 熊本県上益城郡嘉島町井寺
TEL 096-237-2378
URL http://www.azuma-inc.com/

「中小企業家しんぶん」 2008年 1月 5日号より