「国策の街」で人をつなぐ同友会 呉支部(広島) 支部長 瀬島 高志氏(合同呉運送(株)社長)

 同友会活動の基礎単位は「支部」(同友会によっては「地区」)です。本欄では全国で活躍する300余名の支部長の中から、その一部の方々をインタビュー形式で順次紹介する中で、その地域や支部の活動を紹介していきます。第1回目は、15%と高い組織率を誇る広島同友会呉支部長の瀬島氏を紹介します。

―まず呉市の特徴を。

瀬島 呉市は今年市制100年を迎えます。戦前は海軍のまち、国策によってつくられたまちとして、製鉄、造船を中心とした工業集積地でした。人口も当時は今の2倍、40万人もいました。戦後も製鉄、造船などのまちであることには変わりなく、現在もIHI、日新製鋼等の大手企業があります。他の地域と比べて、企業の平均年数が高く、同友会の会員も2代目、3代目が多いです。

―瀬島さんと同友会のかかわりを聞かせてください。

瀬島 入会は1991年、広島同友会の経営研究集会が呉で開かれ、高校の同級生の誘いで参加し入会しました。初めてのグループ討論はとても新鮮でした。

 入会前と現在の自分を比較していちばん変わったと思えることは、人より儲けて人より良い家を建てたいと考えていたのが、何のために経営をするのか、だれのための仕事なのかを考えるようになったことです。

―全国行事にはかなり参加をされたそうですが。

瀬島 93年に北海道で開かれた中同協第25回総会が初参加でした。分科会で5~6時間熱心に学ぶことにすごさを感じ、総会宣言に盛り込まれた21世紀型企業づくりの提起にゾクゾクしたことを覚えています。

 このとき、5年間は総会、全国研究集会、青年経営者全国交流会のすべてに参加しようと心に決め、その通り実行しました。全国の会員の皆さんと交流することで、自分がどこまで来ているか位置を確認しています。

―支部の現状についてうかがいます。

瀬島 最高時の会員数は549名ですから、だいぶ減少しました。減少傾向に歯止めをかけたいと思いますが、こういう時こそ、あれもこれもと手を広げた活動をするのではなく、同友会らしい学び方に立ち返ることと経営指針づくりを重視することが大切だと考えています。

―支部の特徴をお聞かせください。

瀬島 当支部の一つの特徴は「高校に強い支部」です。呉工業高校からなかなか地元の中小企業に就職してくる高校生がいないことから、10年ほど前から先生との懇談会、先生による企業見学会を実施してきました。今ではこれらの企画に15~16校が参加するようになりました。昨年は呉商業高校のインターンシップを25社で50名、3日間受け入れました。これまで新卒採用をしていなかった企業にとっては大変な刺激になったようです。将来は100社くらいで受け入れられればと思います。

 呉商業高校からは当支部に対して、学校評議員への就任依頼があり、支部長の私が着任しています。

 金融アセスメント法の運動では1万名の署名目標に対して1万7000名を集め、呉市議会でも「中小企業の当面する金融上の問題を解決し、『金融アセスメント法』の法制化に向けた取り組みを求める意見書」が採択され、一定の役割を果たすことができたと自負しています。

 政策委員会の勉強会に呉信金の常務理事さんを呼んだとき、「取引先の7割は赤字企業、こうした地元企業を切ることはできない」とすぐに署名を集めて持って来てくれたんです。

 それで支部もやらざるを得なくなって。アセスの署名を取り組んだら、同友会に対する私の妻の評価も上がり、テレビの国会中継も見るようになりました。

―最後に支部長さんとしての抱負を。

瀬島 ちょうど支部長になって丸4年になりました。あたりまえのことではありますが、会員は同友会の5年先でなく、自社の5年先のことを絶えず考えています。向こう5年間で、そばからみても「あの人は同友会で成長した」とわかるような会員がどれだけ出てくるか、それが願いでもあり楽しみでもあります。

▼呉支部の概要
支部設立 1988年5月
会員数 403名
役員数 23名
対象地域 呉市とその周辺(呉市 人口約21万人、企業数約2700社)

「中小企業家しんぶん」2002年4月15日号より