「振動」では世界に通ずる優良企業 (株)村上精機工作所 社長 橋本尚二氏(福岡)

「振動」では世界に通ずる優良企業
ものづくりへの丁寧さで価格競争に巻き込まれない
(株)村上精機工作所 社長 橋本尚二氏(福岡)

ダイヤモンドの発掘に不可欠

 (株)村上精機工作所(橋本尚二社長、福岡同友会会員)のメイン商品は、「ユーラスバイブレータ」という振動発生装置(振動モータ)です。バイブレータの両軸端にアンバランスウェイトを取り付けて回転させ、その遠心力で振動させる装置です。

 創業は1946年。57年に取引先大手メーカーから、ドイツ製バイブレータのスケッチ図で、バイブレータを製作しないかとの相談を受けました。

 試作機を作ってはみたものの、軸受寿命は10~20時間しか持たず、モータコイル及び付属ケーブルの早期断線など、さまざまな問題がありました。いろいろな改良を行い、何とか軸受寿命が1000時間を上回るようになって、一般市場へ発売することになりました。現在では軸受寿命も1~数万時間を超えるようになっており、累計で80万台近くを製造販売しています。

海洋鉱床のダイヤ採掘でも活躍

 「ユーラス」という商標登録をしていますが、これは「揺らす」という日本語が語源です。6~7年前までは輸出比率が20%程度でしたが、現在では約50%が輸出されています。主な輸出国は南アフリカ、アメリカ、カナダ、オーストラリア。みな鉱山関係のところです。

 南アフリカでは、現在海洋鉱床といって、海の底からバキュームポンプで砂を吸い上げ、ダイヤモンドを採掘しています。船の上で振動篩(ふるい)機にかけ、20ミリ以下の原石は取り除きます。この篩機に振動を与えて輸送しながら選別する装置に、「ユーラスバイブレータ」が使われています。こうした船は、いったん出航すると、2年くらいは寄港しません。そこで、性能が良く、寿命の長い「ユーラスバイブレータ」が、お客様に選ばれているのです。

「揺らす」で自動車からたこ焼きまで

 「ユーラス」の取り付け構造、振動振幅数により、材料を一定方向に運んだり、散らしたりすることも可能です。そこで鉱物の選別だけでなく、鉄鋼・砕石・粉体業界はもとより、化学・食品・医薬品などの分野でも使われています。鋳物砂の充填(じゅうてん)や、鋳込み後のワクバラシ(シェークアウトマシン)にも使われており、自動車のエンジンを作る鋳物工場では欠かせません。

 おもしろい使い方では、たこ焼き器です。たこ焼きを作る過程で、少し固まりかけたとき、振動を与えてやると、くるくる回り、自動でたこ焼きができるというものです。

丁寧なものづくりの精神を製品に

 振動発生機の分野で、国内シェアは6~7割を誇ります。大型の振動機は村上精機工作所でしか作れません。振動モーターは自分自身が振動発生装置ですから、小型軽量で、なおかつ大きな振動力を発生するのが理想です。

 ネックとなるのは、軸受けの寿命です。そこでシャフトの設計において、曲げ応力とたわみの適正基準を定め、回転ロータの内径はギリギリのところまで加工を加えています。

 技術と製品に対する思いも他社と違います。アッセンブルの段階では、作業員2人でシャフトを回しながら対角線上に同時に締めてバランスを整えるとか、グリースの入れ方も作業者が手で回しながら押し込むなど、ものづくりに対しての丁寧さは現場にいくと感じます。さらに、組み立て後、製品全数を30分以上なじみ運転を行い、異音や機械的ロスの発生がないかを点検して出荷しています。

 トップメーカーの自覚として、「価格競争に巻き込まれないように努力しています」と橋本社長。

 「ユーラスバイブレータ」単体では価値を実感することはできにくいのです。しかし末端のお客様は、いい品質の物がほしいと思っているはずです。とはいえ機械メーカーは少しでも安いものがほしい。海外からは価格の安い物も入ってきます。村上精機工作所ではそうした動きには「どうぞお使い下さい」と無視することにしています。

 「(仮に海外の安い物をお客様が買われても)使い勝手が悪いとか、故障や問題が発生した時の対応とか、結局は『ユーラスバイブレータ』を使おうとお客様は戻ってくる」と橋本社長は語ります。ものづくりに対する丁寧さに自信を持っている様子がうかがえます。

 同友会には2000年9月入会、経営指針をさらに全社に浸透させるために始まった「同友会経営革新プログラム」(経営品質の考え方を学ぶ研究会)に、第1期から参加、自社の課題を解決するために積極的に学んでいます。また、景況分析会議のメンバーとしても活動しています。

【会社概要】
創業
 1946年
資本金 4000万円
年商 21億3500万円
社員数 105名
業種 マグネット技術及び振動技術による各種製造機械製造
所在地 北九州市八幡西区洞北町
TEL 093-601-1037
URL http://www.murakami-seiki.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2007年 5月 25日号より