「快眠とくつろぎ」のための工房 大東寝具工業(株) 社長 大東 利幸氏(京都)

「快眠とくつろぎ」のための工房
今年、京都市オスカー認定企業に
大東寝具工業(株) 社長 大東 利幸氏(京都)

京和晒ガーゼで寝具を

 大東寝具工業(株)(大東利幸社長、京都同友会会員)は、京都市伏見区にあります。古くは酒どころとして、今では京セラや任天堂などもあり、ものづくりの高度集積地区に指定され、大阪と京都を結ぶ交通の要所として、先端的な創造都市づくりが進んでいます。

 製綿業として1925年に創業された同社は、寝具関連商品の製造販売を手がけており、今年3月に京都市中小企業支援センターの「オスカー認定企業」となり、6月には京都府の経営革新計画に承認されました。

 認定された計画はいずれも「無添加ガーゼ寝具の商品化」で、「和晒(わざらし)無添加のガーゼにより、快適で安心な寝具を開発し商品化。インターネット通販等の新市場の開拓を行い、経営革新を目指す」というもの。

職人の力

 「和晒」とは、綿布の紡績後に脱脂・糊(のり)抜きなどをする工程で、日本でも希少な和晒釜を使い、通常40分の工程を4日間かけて行います。繊維断面が真円で通常の楕円形のものに比べて非常に柔らかく肌ざわりもよく、化学物質を使わず無添加なため、医療用の三角巾などに使用されているものです。

 この無添加のガーゼを使用し、適度な湿度と温度の理想的な寝床環境となるよう空気層を確保するため、多重織ではなく2枚重ねや5枚重ねなど、熟練職人の技術で多層構造を実現。「京和晒ガーゼ」シーツやパジャマなどを商品化しました。

大手から自営業へ転身

 大東氏は、幼いころから職住一体の生活を送りながらも、大学卒業後大手スーパーに入社。全国で350名入社した同僚の中で生き残っていくため、休みもまともに取らず、人の3~4倍働きながら、ロス率を減らし、優秀マネージャー表彰も受けました。しかし、89年に大東寝具工業の経営状態が悪化したのを機に呼び戻され、父の死後、社長となった母・和子氏(現・会長、京都同友会会員)とともに、同友会で学び、「和」から「洋」の寝具への転換をめざし、営業力の強化を図りました。

 卸部分を縮小し、インテリアやオーダーカーテンなどユーザーに近い小売へ転換することで、ユーザーの声をものづくりの現場に反映。「若いスタッフが思い描いたものを眉をしかめながらも形にしてくれる職人たちを中心に、出来上がったら一緒に笑い、売れたら一緒に喜べる。そしてお客様の笑顔も形にしてくれる…。そんな優しい古さが自慢の京都の布団屋」とホームページにあります。

ネット通販事業の成功

 一時は第2次雑貨ブームにのって100%仕入れで賄っていた雑貨も置いていましたが、ブームが下火になるとともに在庫が利益を圧迫。多品種少量型の本来の寝具づくりを見直していきました。

 また、中国製品の影響を強く受け、市場が縮小している寝具業界にあって、大東寝具工業では、小売で唯一前年の売り上げを上回っていたのは、「通販その他(インターネット)」部門でした。

 京都同友会会員でネット販売で成功した池上勝(株)白鳩社長に学び、2001年にインターネット通販事業を開始。最初の1カ月で100万円売り上げました。

 今年度44期となる中、36期から経営指針を作成。経営指針を社員とともにつくり、実践していくことで、「インターネット事業を社員に任せ、経営理念を深めながら方針を実践しています」と大東氏。

 会社のキャッチフレーズは「快眠とくつろぎのためのパーソナルスタジオ(工房)」。本社にある店舗へ、神奈川などの遠方から、口コミで買い物に来る方もいるとのこと。

 小規模で技術力ある企業だからこそできる柔軟な対応と確かなものづくりは、伏見地域にあって、さらに今後の成長が期待されます。

*大東利幸氏は、9月13~14日に山口で開かれる第35回青年経営者全国交流会分科会報告者です。

【会社概要】
創業
 1925年
資本金 1000万円
社員数 19名(うちパート・アルバイト10名)
年商 3億5000万円
業種 寝具等製造卸販売
所在地 京都市伏見区横大路下三栖山殿66
TEL 075-603-6838
URL http://www.daitoushingu.com/

「中小企業家しんぶん」 2007年 7月 25日号より