チューリップの球根で焼酎 (株)北信帆布 社長 福島一明氏(長野)

チューリップの球根で焼酎
異業種の連携で地域ブランド
(株)北信帆布 社長 福島一明氏(長野)

 異業種の連携で、チューリップの球根から焼酎ができました。商品名はTULP(チュルペ)、オランダ語でチューリップを意味します。500ミリリットルで1本1500円が小売価格。

 企画したのは、イベント用テント、倉庫用テントなどの設計施工を本業とする(株)北信帆布の福島一明社長(長野同友会会員)。きっかけは農業系の新聞の記事でした。

 200坪のビニールハウスでチューリップの水耕栽培を行い、1000万円の粗利をあげているとの記述に驚き、埼玉まで見学に行きました。年3回出荷し、球根は廃棄されている現場で、球根の成分はでんぷんであることを聞き、焼酎の原料のイモが不足しているという情報と結びつきました。

 「これはいけるかもしれない」と思い立った福島氏。地元へ帰り、蒸留装置を持っている酒屋さんに話を持ちかけたところ、「ぜひやらせてほしい」との返事。試作品は上出来でした。さっそく千曲市役所に相談し、無農薬でチューリップを作り続けている農業生産法人を紹介してもらいました。

 酒造りのアドバイザーとして(株)高野総本店の高野豊氏(長野同友会会員)も加わり、商品化を果たしました。千曲市内の上山田温泉で開いた「チュルペ」披露パーティーには、行政関係など多数が集まり、千曲市の地元ブランドとして大切にしていこうと盛り上がりました。その後、千曲市が開催した物産展に出展しましたが、ワイン好きの女性たちが、他のアルコールと飲み比べて買っていく姿が多く見受けられたとのことです。

 長野市近郊の千曲市は、あんずとともに、チューリップ栽培の盛んなところです。地域の産物を利用して、特産品が開発され、地域ブランドが確立できれば、と福島氏の夢が広がります。

 千曲市では、チュルペの開発をきっかけに、チューリップの球根を使った料理、菓子などの開発など、温泉旅館を中心に新しい交流の芽が生まれています。

 また、千曲市の真ん中を千曲川が流れていますが、その流域保全、経済活性化を目指した「千曲川流域学会」が長野大学大野教授を中心に、この3月スタートします。福島氏をはじめとした長野同友会会員は、学会の主力メンバーとして活躍が期待されています、チュルペの挑戦で、学会にも勢いがつきそうです。

「中小企業家しんぶん」 2007年 2月 25日号より