13社が共同で製塩事業 おわせ深層水しお学舎(株)(三重)

13社が共同で製塩事業
尾鷲地域の活性化と学びの場へ
おわせ深層水しお学舎(株)(三重)

海洋深層水使った塩づくりで地域おこし

 7月に三重県尾鷲市にオープンした「おわせ深層水しお学舎(株)」(竹内健社長)は、三重同友会会員有志が三重県や尾鷲市からの呼びかけに賛同して設立した海洋深層水を使った製塩事業の会社です。農事組合法人伊賀の里モクモク手づくりファームや清酒醸造の宮崎本店、豆腐製造のミナミ産業、下津醤油など13社が共同出資しています。

 同社では、製塩設備を整え、そこで精製された塩を販売するだけでなく、その塩を使ってさまざまな加工食品に生かす事業を創造し、地域を活性化し、雇用の創出も目指しています。

「塩育」伝承販売事業

 工場は、海洋深層水の取水地の漁村、古江地区に残された小学校の木造廃校舎を活用したもので、工場としてだけでなく、塩に関する食育を進める施設にしたことが特徴です。8月からは、塩づくりや塩を精製する途中でできる「ニガリ」を使った「豆腐づくり」にも挑戦できる体験教室も始まりました。

 「塩は『食の基本』です。塩のでき方を体験し、人と塩との関わり・歴史・文化・塩を取り巻く自然循環などを学び、自然や海を大切にする心、そして地元の歴史文化を大切にする郷土愛を育てます。ただ塩を作って売るのではなく、健康文化『塩育』伝承販売産業として、ここ尾鷲市古江の地から発信していきます」(同社ホームページより)

付加価値の高い製品作りを

 原料となる海洋深層水は、尾鷲市の沖合12・5キロメートル地点の水深415メートルから取水。1日12トン引き込み、低温真空式2段濃縮製法方式でかん水(濃縮した塩水)を作り、その後、天日塩やミネラル塩といった製品に時間をかけて仕上げます。こうしてできあがった塩はミネラル分が豊富で、体にも自然環境にも配慮した「やさしい、まあるい味」になっているとのことです。

 また、精製施設は古江地区の環境に配慮し、建物を含め地域に溶け込むように配慮されていることも大きな特徴です。

 現在、海洋深層水を取り巻く状況は厳しいのが現状で全国的にも成功例が少なく、尾鷲の事業も楽観できる状況ではありません。しかし、事業に参加している会員企業は、自社で塩を活用した新商品作りをはじめ、さまざまな企業で付加価値の高い商品作りに生かしてもらえるよう、働きかけを進めています。

尾鷲地域活性化で始まった支部づくり

 三重同友会では、「しお学舎」開業に合わせ、尾鷲地域全体の活性化のために、観光面での協力について、市観光物産協会とも協議しています。

 また、昨年初めから尾鷲熊野地区での同友会づくりにも並行して取り組んできました。その結果、昨年12月に尾鷲グループが6名で発足し、現在は8名になっています。今後、尾鷲地区での同友会活動を発展させ、早急に30名の支部にしようと頑張っています。

 尾鷲地域では、この「しお学舎」開業が地域活性化に向けた新たな一歩になって欲しいという大きな期待も寄せられています。同時に、地域自らが変化するための取り組みも始まっています。この動きに同友会としても協力し、一緒に地域活性化に向けて歩んでいこうとしています。

*「しお学舎」ホームページ
http://www.shiogakusha.com/

「中小企業家しんぶん」 2007年 9月 25日号より