広島の木で広島に住もう! 永本建設(株) 社長 永本 清三氏(広島)

広島の木で広島に住もう!
林業・製材・加工・建築一環体制の太田川流域SGECネットワーク
永本建設(株) 社長 永本 清三氏(広島)

日本の木を使いたい

 そこには、目を覆いたくなるような光景が広がっていました。外国産材を運んできたコンテナの扉から、霧のような蒸気と強い刺激臭。蒸気の正体は、木食い虫を殺すための薫蒸剤でした。永本建設(株)社長の永本清三さん(広島同友会会員)は、「この木材は、使いたくない」と思ったものの、輸入材も国産材も区別無く一緒に加工品とされているのが現状でした。

 「日本の文化である木の住まいづくりを進めたい」とこだわる永本さん。輸入材を使うのには、抵抗感がありました。

 そんなとき、「きれいな海を山から作ろう」と、10年にわたって植林を続けてきた地御前漁協の牡蠣業者から、「だれか林業家を紹介してもらえないか」と声がかかります。永本さんは、地域の環境を守るとともに、木の文化を子どもたちに伝えたいと、「漁民の森づくり」運動を立ち上げ、山の専門家として迎えたのが、安田林業の安田孝さんでした。

 安田さんは、樹齢の異なる木が混在し、植生を多様化させた多層林づくりと、流通経路を見直し、直接販売するなどで、日本の林業を蘇らせようと情熱を注ぐ新進気鋭の林業家でした。

 山林を荒れさせたくない安田さんと、地元の木を使いたい永本さん。肝胆あい照らすに、時間はかかりませんでした。

緑の循環、森林認証制度SGEC

 安田さんは、「美しい自然と森づくりの名人を育てる、日本にふさわしい森林認証制度」として、2003年に始まった「『緑の循環』森林認証制度」(SGEC(エスジェック))の認証をめざして動き始めていました。

 SGECは、森林認証システムと認証林産物流通システムから成り立っており、林業経営者は、基準に従って持続可能な森林管理を行い、伐採した日時や場所、伐採従事者などを明記した産地証明書を木材に添えて出荷。製材・加工業者らも証明書を添付することで、消費者は証明書を通じて木材の履歴を確認できるというものです。

 この認証をめざしたのは、日本で最も多くの森林を有する住友林業が真っ先に取得しており、「木への信頼を得、独自性を打ち出すには不可欠」と判断したからでした。

 しかも、需要の拡大と、地球環境への配慮から、輸入木材の値上げが続き、国産材との差が確実に小さくなっていることも追い風となりました。

 当初は、「そんな面倒なことはできない」と冷ややかだった林業家も、流通業界・加工業界を巻き込むことで参加が増え、林業・製材・加工・流通・工務店が一環の流れを作るネットワーク「太田川流域SGECネットワーク」が完成。2006年12月26日には、「SGEC」の認証も受けることができました。製販一環ネットワークでの認証は、全国初となりました。

 現在、設立記念事業として、太田川地域材(主にSGEC認証材)を使って自宅を新築する方5人に、1棟分の柱材(3メートルの管柱約60本)をプレゼントするキャンペーンを行っています(応募期日5月末)。

利益を山の木に還元したい

 永本建設の経営理念には、「利益を山の木に還元しよう」がありますが、これまでは山林保護活動に寄付をするのが精一杯でした。

 「この太田川流域SGECネットワークは、地域の木で地域に安心な家を建てる運動。これが軌道に乗れば、新たな仕事作りが進むとともに、木の文化を守ることにもつながると思っています。やっと、本当の意味で、利益を山の木に還元できます。地域に目を向けて自らの事業活動を構築すること、環境を守ること、文化を守ること、これらはまさに中小企業憲章の精神ではないでしょうか」と話す永本さん。

 「本物の木を使えば、技術が必要になる。だから、林業を支える活動は、技術とそれを担う人々の生活を下支えする。地域の経済を支えるものになりうる」とも。夢はふくらみます。

▼太田川流域SGECネットワーク
(事務局・中本造林(株)内、TEL 0829-40-1131)
[認証林]
(有)安田林業、中本造林(株)、村上造林(有)、西山林業組合、
日新林業(株)
[認定事業体]
(有)安田林業、中本造林(株)、湯戸産業(有)、(株)河本組、
永本建設(株)、佐伯森林組合

【会社概要】
設立
 1988年
資本金 1000万円
年商 6億5000万円
社員数 13名
業種 注文住宅設計・施工、リフォーム、店舗づくり
所在地 広島県廿日市市新宮
TEL 0829-31-6655
URL http://www.Nagamoto-home.com/
*太田川流域SGECネットワーク設立キャンペーン
URL
 http://yasuda-t.com/~sgec/

「中小企業家しんぶん」 2007年 5月 5日号から