特集【中同協第12回女性経営者全国交流会】6月7~8日 東京

女性のパワーが企業を、地域を支える

 6月7~8日、「第12回女性経営者全国交流会」(中同協主催)が東京で開かれ、42同友会から756名が参加しました。「生命(いのち)育(はぐく)む女性の愛(パワー)で 地域とともに 社員とともに」をメインテーマに、記念講演と10の分科会を行いました。記念講演と、2日目の全体会で座長などから報告された各分科会のまとめを紹介します。

 なお、女性経営者全国交流会報告集は8月上旬に発行予定(頒価300円。参加者は無料)です。同友会事務局でお求め下さい。

【問題提起】

女性が活躍できる社会の推進を
中同協幹事長 鋤柄 修氏((株)エステム会長)

 「行事を仕切るのは全部女生徒です」と、高校の先生の話を聞いたのは、今から15~20年前。「これからは、女性の力をいかに発揮してもらうかだ」と思い、1990年、採用難の折、国立大学卒の女性を採用しました。これを機に、男女の賃金格差を無くし、産休明けで職場に復帰すると元の給料に戻る、という環境を整備しました。彼女は子どもを3人生み、現在、課長として立派に仕事をしてくれています。

 女性が能力を発揮し、成長する機会を与えられる企業となっているか。これが1つの大きなキーワードになると思います。

 アメリカの女性経営者の割合は、約25%だったと思います。日本の女性経営者の数は6万7000人。社長の数は100万人とされていますから、1割ぐらいは女性が社長になる世の中がもう目の前です。一番多いのは徳島県で8%、その後青森、東京、大分、奈良がほとんど7%台。少なくとも10%、そして20%、アメリカ並みの25%の女性経営者が活躍できる世の中にしましょう。

 その推進役はやはり同友会です。中同協幹事会には約160名の幹事が集まっていますが、女性幹事は10名に満たない。まず、各県の理事に女性を一定数選んでください。そういうことも含めて、女性の経営者が増えることを期待します。

 私は、中小企業の役割を4つの「K」(起業、雇用、教育、環境づくり)で表しますが、中でも環境は職場環境であり、家庭の生活環境も含めて地域の環境、大きくいえば自然環境、地球環境を守ろうという大いなる展望です。

 今度のサミットも環境問題抜きには今後のグローバル経済は考えられない、というところまできたわけです。地域の環境、自然環境も含めて、生活環境をどうやって守っていくかを考えることが、ビジネスチャンスなんだと思います。

【記念講演】(要旨)

勇気をもって崖っぷちに立ちなさい
愛され続ける老舗テーラーめざして
(株)銀座テーラーグループ 社長 鰐渕 美恵子氏

父親から教わった商売の基本

 大阪の菓子問屋で生まれた私は、両親から大切に育てられました。父親には「タバコが欲しいと言われたら、マッチと灰皿も持っていく気遣いが大切だよ」と、商売の基本を教わりました。私が12歳のとき父が亡くなり、これを契機にメーカーから相次いで特約店を解除されるなど、社会の厳しさをかみしめる日々でした。

 母親に「25歳までに結婚しなさい」と言われていたこともあり、お見合い結婚をした相手が銀座テーラーの先代社長でした。夫は、お金を使うことは知っていても稼ぐことは知らないような人で、「この人とやっていけるのかな?」と不安になったこともありました。夫は創業者である父親の跡を継いで社長になったものの、本業そっちのけで高額な絵画のコレクションに没頭していました。当時は、何をしなくてもスーツが飛ぶように売れる状況だったのです。

「崖っぷち」に立って

 しかし、バブル崩壊で不況の到来。売上が落ちるなか、私は銀座テーラーに入社して新規開拓の営業をやるようになります。このとき44歳でした。

 社内では大反対にあいながらも、レディースを売り出したり、各種会合に出て行って会社をアピールしたりと、攻勢的に展開しました。とりわけ、会社の核となる幹部体制を確立し、「かけがえのない幸せづくりを、最高の一着で」という経営理念をつくり、社員全員と懇談したことは本格的な改革の第一歩でした。

 ところが、ここで大事件が起こります。長く勤めていた専務が辞めたと同時に、別会社に超多額の借金があることが分かったのです。震えが止まらず、夜も眠れず、どうしてよいのかわからなくなりました。今から思えば、人生で最もつらい時期でした。

 このとき、1つの言葉に出合ったのです。「勇気を持って崖っぷちに立ちなさい。彼は遂に意を決して前に進み絶壁の上に立った。ギリシャの神アポリネールは軽く彼の肩を押した。すると彼は大空にはばたいていった」。この文章を読んで、「そうだ、絶壁に立とう。ここからしか始まらない」と決意しました。

「新しい老舗」への挑戦

 まず、営業マンを私も含めて3人まで絞り込み、手のひらにのる経営にしました。そして、次々と改革を実行しました。

 広く皆様から愛される銀座テーラーをめざし、それまで30万円以上のスーツが中心だったものを、半額程度の商品を押し出しました。西陣織や漆塗りといった日本古来の文化を取り入れた「サムライ」がそれで、今では、売り上げの3割から4割を占めます。シャネルやエルメスも100万円からの商品を売っていますが、それを支えるのは3000円の口紅や2万円のスカーフの売上です。また、オーダージーンズの開始、店舗と音楽スタジオ・ギャラリーの融合、技術者養成のための「日本テーラー技術学院」の設立、男性専用美容サロンの展開など、次々と手を打つなかで顧客の拡大に成功してきました。

社員と共に進化めざしたい

 今の会社があるのは、銀座テーラーの中核である職人さんあってこそです。彼らのために、私はこの仕事を辞めるわけにいきません。今後も、イノベーションテーラーとして進化していきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2007年 7月 5日号より