【特集】第35回青年経営者全国交流会(分科会)

<分科会紹介>
 ●第8分科会 私たちが郷土(ふるさと)の未来にできること
 ●第10分科会 経営のことはすべて同友会で学んだ!
 ●第12分科会 金子みすゞ、詩とその心

第8分科会 私たちが郷土(ふるさと)の未来にできること

報告者 (有)アンドーコーポレーション 社長 安藤 陸男氏(岩手)

 今回、初めて座長を務めるにあたり、発表者との打ち合わせを大切にしました。発表者の安藤氏とは、岩手同友会の「第2期経営指針を創(つく)る会」の仲間でもあり、お互いのことはある程度分かっていると思っていましたが、改めて深くかかわり、知らないことがたくさん分かっていきます。

 特に、安藤氏が経営されているハンバーグレストランへ訪問した際、スタッフの笑顔、お店に来店されるお客様の喜ぶ顔、子どもたちの楽しそうな会話を伺い、本当に地域に愛される素敵なお店であることを確信しました。楽しそうに接客してくれるスタッフは「お店に来る方々の笑顔を見れるのがうれしい」と話します。

 2回、3回と事前打ち合わせを重ねるにつれ、安藤氏の実践型経営、社員と真剣に向き合うことのすばらしさ、社員と一緒に苦悩しながら乗り越えてきた数々の壁、つらく苦しい時代を乗り越え今、まさに大きく変化・成長しようという気持ちを、私は体で感じ始めます。

 実践現場の生の声が、そこにはありました。「実は先日こんなことがあって頭痛いんだよ。でも、止まってはダメだから社員と合宿して幹部と理念を1からつくってみたんだよ」と、ついここ数日で、新たな実践をすばやく進めていく姿に私は、驚き感動しました。

 当日、安藤氏は、社員一丸となってつくり上げる感動の数々を発表。思わず目頭が熱くなりました。

 熱い討論は大いに盛り上がり、全国の方々からたくさんの気づきを頂きました。そして、座長という立場から発表者とのかかわり、そこから生まれるあらたな発見・感動を得ることができました。

 すばらしい機会を頂いたことを心から感謝しております。

住工房森の音(有)美建工業 社長 桜田文昭(座長)

第10分科会 経営のことはすべて同友会で学んだ!

報告者 (有)広和化成工業所 社長 山俊壱氏(愛知)

 父の経営する広和化成工業所に戻り、1年も経たないうちに父が急逝。そんな中で、社員が「先代社長に恩返しをしたい」と全員残ってくれたので、「この会社を守りたい」と決意しました。

 同友会には、ほかの勉強会で知り合った方の紹介で入会。最初は、会社の仕事から逃げるために同友会に参加し、役を受けてはまた同友会へ行く、という毎日でした。

 同友会活動から学んだことは、第1に、本質的なモノの考え方。青年同友会(青同)では常に、「どうやって」ではなく「何のために」を議論しました。第2に、リーダーシップ。青年部が青同になり、自分が地区会長になると同時に、会社も法人化し、社長に就任。「自分で変える」という決意がありました。第3に、経営指針。地区会長として地区の方針を考えながら、会社に置き換えて自社の経営指針を作成するきっかけになりました。第4に、自社の長期ビジョン。三河青同ビジョン作成の過程から、単年度では書き切れない長期の「あるべき姿」を示す必要性を痛感。その自社ビジョン作成から3年、目標にしていた新工場の建設も手が届くところに来ています。

 学んだことを実践し、結果を出すところが同友会ではないでしょうか。

(報告要旨)

第12分科会 金子みすゞ、詩とその心

報告者 梅光学院生涯学習センター講師 木原 豊美氏

 第12分科会のテーマは「金子みすゞ、詩とその心」、報告者は金子みすゞ研究家の木原豊美さんです。参加者の中には「みんなちがってみんないい。ちがいを認めたうえで、どうするかという自分なりのテーマをもって臨んだ」人も。

 木原さんの報告は、金子家の複雑な家族構成や繰り返される家族の離別から始まり、みすゞの生きた時代の背景として、下関の繁栄ぶり、大正7年創刊の童話・童謡集「赤い鳥」などを紹介していきます。詩人金子みすゞ誕生の大きな要因になった童話の本、下関で親せきが営む書店から、みすゞの生家が営む書店へ贈られてくるものでした。

 報告は、作品の紹介と詩のこころに入ります。この日、木原さんは、「雀のおやど」「海とかもめ」「ながい夢」「土と草」「杉の木」「私と小鳥と鈴と」という6編の詩を用意しました。

 1編1編、参加者といっしょに朗読しながら解説していきます。

「海とかもめ」

海は青いとおもってた、
かもめは白いと思ってた。

だのに、今見る、この海も、
かもめの翅も、ねずみ色。

みな知ってるとおもってた、
だけどもそれはうそでした。

空は青いと知ってます、
雪は白いと知ってます。

みんな見てます、知ってます、
けれどもそれもうそか知ら。

 今、木原さんがいちばん好きな詩だといいます。思い込みで人を見てはいけない、人を固定観念でみると人のいい所が見えてこない。人はたくさんのチャンネルを持っているが、知っているのはその人の持つチャンネルのほんの一部だけ。そんなことをこの詩から読み取っています。

 6編の詩から学ぶものとして、私たち人間も自然界の一員であることを謙虚に受け止めた時、土や草、海やかもめ、鈴や小鳥などの自分とまったく異質なものを対比させ、認めることができる、と強調しました。「共に学びあうことは難しいが、異質な人格、感性だが自分にない良さを持っていると認めることで、それは可能になる。“みんなちがってみんないい”とは、そういうことではないか」としめくくりました。

 グループ討論の発表では「心が豊かになった」「会社に安らぎが必要だと感じた」「詩を通して自分がおとなにも子どもにもなれることがわかった」など、みすゞの世界を自分や自社に引きつけて学んだことがよく現れていました。

 討論の発表を聞いた木原さんの評価は、心温まるものでした。「みすゞの詩への経営者の皆さんの柔軟性のある解釈はすごいですね。討論の発表の後の拍手もうるわしいと感じ、仲間がいることの素晴らしさから私も学ぶことができました。経営者でありながら社員の立場に立って考えている皆さんの発言を聞いて、日本の未来は明るいと思いました」。

「中小企業家しんぶん」 2007年 10月 5日号から