経営理念の継承と発展を軸に―福岡コミプラサービス(株) 社長 時枝 寛氏(福岡)

時枝家は同友会ファミリー

 創業者である時枝正昭氏(取締役会長、寛社長の父君)が福岡同友会に入会したのは1987年、ほぼ20年になろうとしています。会では支部長や県の会員拡大委員長などを歴任、全国行事への参加も欠かしたことはありません。

 「当社の歩みは同友会抜きには語れない」というほど、同友会と共に企業づくりを進めてきました。現在は、長男の寛社長、会長夫人の訓子専務、関連会社である(株)コミプラエージェントを任せる次男の憲司社長、4人全員が同友会会員。まさに時枝家は同友会ファミリーなのです。

息子に継がせられる会社にしよう

 勤めていた会社が倒産したのを契機に独立を決意したのが1974年、正昭氏31歳の時でした。以来、夫人と共に浄化槽管理、貯水槽清掃業一筋に事業を着実に拡大してきました。

 「若い人材が欲しい」と共同求人活動に参加したのは92年から。翌年専門学校から新卒第1号を迎えることができました。その彼は現在中堅社員です。

 しかし、長男の寛氏を会社に入れるにはためらいがありました。現場は危険、汚い、きつい。業界の体質も古い。ところが、同友会では後継者問題をあいまいにはしません。「息子にも継がせたくない会社を貴方は経営しているのですか」「経営指針できれいごとを並べているのでは社員に対して失礼だ」と容赦なく批判を受けることに。

 寛氏は「継いで欲しいといわれたら覚悟しなければならない」との意識はあったそうです。熊本の工科系大学に進学、夏休中はアルバイトも貯水槽や排水管の清掃に従事、同友会のセミナーに参加する機会もありました。卒業後は東京で電気設備関係の会社に就職。その間、本社では新社屋の建設プランや社内諸規定の見直しなど、企業改革が次々と実施されていきました。

時代にふさわしい社内改革に着手

 寛氏が帰郷、入社したのは98年、29歳で平社員からのスタートでした。経営理念も確立し、経営指針に基づき会社は運営されているはずなのですが、気になることが少なくありません。前にいた会社は社員に責任を持たせ、きびしい社風でしたが、社員の自立意識が強かった。当社はクレームも多く、一人ひとりがバラバラでまとまりがない。これでは将来が危ぶまれるとの危機感を持ちました。

 寛氏が社内改革に本格的に着手するのは2年前常務になってからでした(今春社長就任)。組織を見直し、主力の工事部の3人の主任をグループリーダーとして権限委譲をはかり、責任もきっちりとらせる。主任以上のミーティング、営業会議の定例化などで社内のコミュニケーションを良くする。

 「経営指針の発表会を実施して16年になりますから、理念が社風として定着しつつありました。さらに、時代の変化をリーダーが自覚し、スピードとパワーを増すことが大切です」と寛社長。「会長がコツコツ築いてきた信用の土台の上に現在があります。社長の若さを中心に、時代を切りひらくことに期待したい」と訓子専務。「会社の目標と個人の人生計画を併せて考え、両方を真剣に追求するコミプラスピリットを育てていきたい」と正昭会長。

 同社は、社内合意を固めつつ企業革新を続行中。寛社長は、福岡同友会共同求人委員会副委員長としても活躍しています。

【社員から】個人の成長が会社の成長に―工事部係長 中村和夫さん(95年入社)

 出身は山口県で大分の日本文理大学に学び、福岡同友会の合同企業説明会への参加が当社との出会いでした。現会長の話がとても良く入社を決めました。現場の仕事は、正直きつかったですが、親から「若い時は苦労が大事だ」といわれて育ったのが効いたのかもしれません。

 仕事のやりがいは、現場で困っているお客様の修理をして「ありがとう」と感謝されることです。

 一般社員の時は、指示されたことをきちんとやればよかったのですが、グループリーダーになってからは、会社の方針を理解し、部下を引っ張っていくことの大変さを味わっています。

 当社は会社の目標だけでなく、個人の人生目標も大切にします。このことは人間として成長するために勉強しようということで、自己成長なくして会社の成長もないのだと理解しています。

経営理念

・我社はお客様に安心と信頼をお届けする
・仕事を通じ立派な社会人に成長する
・絶えず革新に挑戦し、社員の幸福追求と社会貢献を行う

会社概要

創業 1974年
資本金 1000万円
年商 3億1700万円
社員数 23名
業種 浄化槽、産業排水処理、給排水設備維持管理
所在地 福岡市南区花畑
TEL 092-565-7766
http://www.comipura.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2006年 6月 15日号より