人生をかけがえのないものと思える会社に―やわらぎ住宅（株）　社長　山崎　裕基氏（滋賀）

お客様と共に社員を育てる

「理念経営」でなければ生き残れない

　「同友会で学べば学ぶほど、学び不足を知らされる。企業が生きるか死ぬかの瀬戸際で生まれてきた『労使見解』（中同協「中小企業における労使関係の見解」）は、『芸術』の域に入る文章であり、実践に裏づけされた重みを感じています」というのは、やわらぎ住宅（株）社長の山崎裕基氏（滋賀同友会会員）です。

　また、山崎氏は「社員と共に地域で暮らす。地域経済をよくするために会社をよくする。社会貢献するために利益を出し、人を育て、会社を維持・発展させていかなければならない。社員と経営理念を共有し実践する『理念経営』でなければ、これからの時代は生き残っていけない」と強調します。

　山崎氏は2004年4月に滋賀同友会に入会し、翌5月の例会では、共育委員に指名されました。そこで委員会だけでなく所属する支部はもちろん、他支部の例会にまで参加し、同友会での社員教育の考え方を学びました。また、社内では『人間尊重の経営』（赤石義博著、宮崎同友会発行）と『中小企業の経営課題』（大久保尚孝著、北海道同友会発行）をテキストに、10名のグループを4つ作り、山崎氏自らがチューターとなって勉強会を行いました。

　その後も同友会の例会案内を全社員に回覧し、希望する社員と共に例会に出席、全国行事では幹部社員と共に学んでいます。

　また、今日的課題をまとめ、軸づくりや「共育」を柱に、「経営者のめあて」を体系化して、自らにも課しています。

建てた後の関係を大切に

　やわらぎ住宅は、子育て世代へ向けた住宅「パリアス」の企画、設計、施工、販売を行い、商品戦略を単純化し、1品で勝負しています。以前は建売住宅を中心とし、山崎氏自身がいい土地を見出すことで勝負していましたが、「土地事業で失敗し、経営理念もなく、人が育っていなかったことで内部崩壊してしまいました」。

　今では、社員自身が何のために仕事をしているのかが明確になり、仕事への態度が大きく変わりました。お客様の要望を丁寧に聞き出し、少子化に対応した「暮らしを守る」生活を提案しています。住宅を建てた後、建物への評価や担当者の対応など45項目にわたるお客様アンケートをとり、「かわら版」を毎月お客様に届け、時々のお客様の要望には即座に対応することで、信頼関係を強化。今ではお客様からの口コミで仕事が入るようになりましたが、アフターケアを大事にするため、営業エリアは近江八幡と彦根の半径15キロ以内としています。

社員の一人ひとりの生き方に寄り添って

　現在、週1回午前中を使って幹部社員研修を行い、幹部自身が担当部署や部下とのかかわりを見つめる機会としています。入社が内定した学生には10月から入社前まで月1回内定者研修を行い、学生と社会人との違い、生きるとは、働くとはどういうことかなどを深めるようにしています。

　今年4月に入社した7名の新入社員は、すぐには現場に入らず、1カ月半、毎日社長と共に理念研修を行い、各々が生い立ちを語りあい、お互いをよく理解しあうことで、同期の連帯感を強めています。

　入社した社員を営業に出したところ、「おとなし過ぎて、愛想がよくない」と、お客様から「社長へのホットライン」FAXや電話でクレームが入りました。

　その社員が周囲との関係で臆病になっているのは、これまでの家庭の事情があったからでした。そのことをよく理解していた山崎氏は客先に出向き、社員のことを伝えるとともに「一緒に社員を育てていただけませんか」と話し、共感を得ました。それからその社員は見違えるように自信を持ち、今では大きな戦力になっています。

　「一人ひとりがかけがえのない存在。同友会で学ばなければ、お客様と一緒に社員を育てるなんて考えもしなかった」と山崎氏は笑います。

　自己資本比率が高く、財務体質では滋賀県内の上位にランキングされるやわらぎ住宅。営業では女性も活躍しています。「営業、設計、事務のそれぞれの女性社員が一緒に考え企画して、経営会議に提案してきたときはびっくりしました。社員の成長に自分が追いかけられるようです」とうれしそうに語ります。