感動できる心でお客様に喜びを
「私の将来の夢は、営業をしなくても、お客様がたくさん来てくれ、行列を作って待ってくれる会社」という（株）染谷工務店社長の染谷正昭氏（茨城同友会会員）は、社員とともに「お客様が大喜びする経営」をめざしています。
「親孝行月間」「読書 月間」を実施
染谷工務店は、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションを主力商品とする総合建設会社です。 「自分が感動できる心を持っていなければ、お客様に喜んでもらうことはできない」と、人間性を豊かにする社員教育を心がけています。
その1つが親孝行です。親孝行をすることで親に喜ばれ、そのことが自分にはね返り、感動する心が養われる。また、家族が円満になれば、会社でもいい仕事ができる。そんな狙いから、同社では、4～5月を「親孝行月間」とし、全社員で親孝行を行っています。
今年4月に入社した松本健司さんは、「20歳になったので、親に感謝の手紙を書きました。営業の仕事は、一人ひとり対応が異なり難しいですが、親に感謝できたからこそ、お客様にも感謝できるようになった」と話します。
同じく山崎雅輝さんは「会社説明会で親孝行を知り、ここに入社したら自分は変われるんじゃないかと思い、染谷工務店を志望しました。親にも面と向かって、『今までありがとう』と言うことができました。今は周りの人から『いい会社に就職したね』と言われています」と、誇らしげに語ります。
また、同社では毎月1冊以上の本を読むことを経営方針書に掲げています。本は自分で考えながら読みすすめなければなりません。読書は想像力を広げ、作者の生き方や思想などを通して、どんな状況下で、どんな考え方を持ち、どんな判断をしたかを学ぶことができるとし、比較的仕事が少ない夏には、「読書月間」を設け、感想文を書き、文集にまとめています。
こうした取り組みは、社員一人ひとりの仕事の中にしっかり生かされ、「同じ現場監督にお願いしたい」「○○さんでお願いします」と、社員個人がお客様から指名されるようになってきたといいます。
ビジネスパートナーも一緒に環境整備
同じ現場で働く下請け会社をビジネスパートナーと位置づける同社では、行動基準などをまとめた信条「クレド」を全員に配布し、共にお客様の喜びを追求しています。ある建築会社では、お客様がいつ見学に来ても対応できるようにと、玄関に地鎮祭の時の写真を貼（は）って、だれでもお客様を案内できるようにしています。
同社は、規律、清潔、整頓、安全、衛生の5つの活動を「環境整備」といい、すべての活動の原点としています。社内では、朝の8～9時を清掃の時間とし、社員全員で取り組んでいます。徹底的に清掃に取り組むことで、細かいことに気づけるようになり、自分自身の心も磨けるといいます。
こうした環境整備をビジネスパートナーとも共有することで、建設業では難しいと言われる経営品質賞をめざしています。
明るく・楽しく・幸せに
新入社員の宮本裕之さんは、「目標を持ち、1日ごとに計画を立てながら仕事を進めていく中で、時間を上手に使えるようになりました。休みの日も、何をして過ごすか考えるようになり、充実した毎日を過ごせるようになりました」と、自身の変化を語ります。
「明るく・楽しく・幸せに」を経営理念に掲げ、社員やビジネスパートナー一人ひとりが誇りと自信を持ち、満足して働ける環境づくりを「働く仲間への約束」とする染谷工務店。行列のできる工務店の夢は、一歩ずつ着実に歩みを進めています。
【社員から】当たり前のことに感謝する心―営業担当 大高 葉月さん
私は入社して2年目ですが、初めての親孝行では、初給料で食事に誘い、家に帰ってから、今まで育ててもらったこと、無事就職でき初給料をもらったことなど感謝の気持ちを伝えました。
親だからこそ恥ずかしく、緊張もしますが、親孝行が経営方針書に書いてあったことが後押しとなって、きちんと伝えることができました。心で思っているだけでなく、実際に言葉にできたことは自信となり、ほかの人に対しても思っていることを言えるようになりました。
また、親孝行や環境整備を通して、当たり前のことが当たり前ではないと気づき、いろんなことに「感謝」できるようになりました。
営業の仕事では、これまで接することのなかった人たちとの出会いがあります。どのようにすれば、当社としてお客様一人ひとりと向き合っていけるのかを考える毎日です。
迷った時は経営方針書を振り返ります。会議の前にも、みんなで読んでいますが、自分がどう考えたらいいのか、どうしていきたいのかを経営方針書から見つけるのです。経営方針書は、読むたび、いろんなことが再認識でき、私を成長させてくれています。
会社概要
設立 1962年
資本金 6000万円
年商 21億円
社員数 84名
業種 建設業
所在地 茨城県常総市水海道淵頭町2982
TEL 0297-22-2871
「中小企業家しんぶん」 2007年 7月 15日号より
