【呉支部】雇用・教育軸に広がる地域連携~企業の発展基礎に地域貢献へ

 年の暮れせまる12月27日、呉市内の居酒屋にて、広島同友会呉支部の求人・社員教育委員会の忘年会が行われ、会員20名、会外から14名が参加しました。

 会外とは、海上自衛隊援護業務課、(独)雇用・能力開発機構広島センター、県立呉工業高校、県立呉高等技術専門校、呉市商工振興課、呉市教育委員会、広島国際大学の方々で、この忘年会は、地域の雇用と教育の問題に関する非公式なネットワークづくりの場になっています。

人材の採用と育成は長期的視点で

 こういう関係の元をたどると、呉支部で1990年にスタートした共同求人活動にたどりつきます。

 バブル最盛期で、中小企業の新卒採用は難しく、まして製造業が多い呉で理工系の生徒を採用するなどムリと思われた時期。それでも共同求人活動参加企業の一部はあきらめず、「若者にとって魅力ある会社づくり」をめざし、就業規則等社内体制の整備を進め、「呉工部会」(呉工業高校卒業生の採用をめざす有志の会)を結成するなど粘り強く活動しました。

 バブル崩壊後、求人の追い風が吹き、呉工業高校の生徒を含め、ある程度新卒採用ができました。逆に参加企業が減少し、呉支部での共同求人活動の存続が危ぶまれ、「バブル時代の苦労を忘れるな」、「求人は長期的視点で。いま採用しなくても共同求人活動に参加を」と声をかけあいました。

 呉支部では、共同求人活動の一環として1990年より「高校の先生方の企業見学」(春)と「高校の先生方と経営者との懇談会」(春と秋)を続けています。

 始めたころは「人を採りたい」という意図を前面に出した内容でしたが、求人・就職の「需給バランス」の変動をくぐる中で、「地域の若者を学校と企業が、共にどう育てるか」といった、より普遍的なテーマでの意見交換の場になりました。先生方の苦労も理解できるようになりました。就職する生徒・学生当人にとって、1度きりの人生における重要な就職が、「需給バランス」で決まっていいのかという疑問も生まれました。

 新卒を受け入れるため、呉支部では1994年から2泊3日の新入社員研修を始めました。寝食を共にする中で、参加した経営者の多くは、社員を会社の戦力としてだけでなく、人間として見る視点、また他社の社員をわがことのように見る視点を身につけました。

雇用、教育の問題で地域にかかわる

 呉支部の求人・社員教育活動の特徴は、「人を採りたい」という切実な願望から出発し、求人活動を同友会の仲間と共にやっていく(自社だけでなく他社の利益も尊重する)、人材の確保と育成の問題を長期的に広い視点で考える、という緩やかな合意ができていることです。

 同友会が「金融アセスメント法」の制定を求める署名活動に取り組んだ2002年ごろから、会内では、地域における中小企業の役割についての認識が深まりました。また、地元の金融機関や行政等とのおつきあいが広がりました。

 呉支部の「2011年に実現をめざす第3次中期ビジョン」では、「[5] 地域のネットワークづくり」として、(1)雇用、教育の問題に取り組む、(2)地域経済の活性化に貢献する、(3)「中小企業憲章」制定をめざす、とうたっています。呉支部の強みの分野で地域にかかわっていこうという考えです。同時に「会員各社の発展を基礎として地域に貢献」するというスタンスを明確にしています。

 来年度は、空白地域に同友会をと、2005年に合併で呉市に入った音戸・倉橋方面に新しい地区会をつくろうと準備を進めています。

(広島・竹河内)

呉市人口約24万9000人/呉支部会員数約380名

「中小企業家しんぶん」 2008年 1月 15日号から