地場産品の開発に力点―（株）アライ 社長 新井 俊雄氏（埼玉）
食材の値上げラッシュ
昨年より原油高騰が原因で、食材はすべて値上げ、さらに穀物類の代替エネルギーへの転換が拍車をかけています。
業務用卸専門の当社の売上の約半分はビールなのですが、ビールメーカーは2月から順次値上げの予定です。得意先である飲食店、外食産業は消費の低迷で、ほとんどの店でマイナス計上が続いています。特に、飲酒運転がきびしくなったことも、お酒の売上には大きく響いています。また、外食産業は大手によるM＆A（合併と買収）が盛んで地元業者は押されっ放し。当社も値上げの転嫁は、事情を説明し協力をいただいています。
当社は父の代に地場産業である味噌、醤油の卸小売業として創業、酒類・食材・調味料の業務用販売を手がけてきました。拠点の川口市を中心に、埼玉県南部、首都圏がエリアです。
もともと川口は江戸時代から味噌の生産基地であり、かつては味噌の生産量は全国第3位でした。今は味噌醸造元は1軒もありませんが。
地元店の生き残りを応援
食の「安心と安全」重視はもちろんですが、得意分野である醸造品（これにはお酒も入ります）、地場産品の開発に力を入れています。
埼玉県内には36の蔵元があり、県や経済団体の支援で最近「埼玉地酒応援団」を立ち上げました。20％と低迷している県産地酒の県内消費量を伸ばそうという運動です。
またオリジナル商品として、川越の芋を原料にした芋焼酎「紅」を開発、これは好調です。さらには、お店のロゴを入れたオリジナルラベルのお酒を考案し、約100軒で使っていただいています。これも、地元店の生き残り作戦のお手伝いです。大手チェーン店は仕入れも中央一括、地元志向は全くありません。地元店を元気にすることが私たちの使命なのです。取り扱い単位は小さくとも、地方ブランド品の方がナショナルブランド品より付加価値が高いというメリットもあるのです。
今年は当社にも共同求人活動を通して、新人2人が入社します。「地域貢献」の理念に共鳴する若い人が増えてきていることはうれしいことです。お客様に提案営業のできる人材を育てていくことが当面の課題です。
【会社概要】
設立 1975年
資本金 1000万円
年商 17億円
社員数 23名
業種 業務用酒食材卸、小売（香味亭）3店、ギフト販売
所在地 本社・埼玉県川口市
TEL 048-227-0711
http://www.arainet.co.jp/
寒冷地の靴開発で定評―（株）ダテハキ 社長 守 和彦氏（北海道）
専門店の廃業続く靴業界
北海道の消費動向は、労働人口の流出・減少、高齢化の進行により、低下傾向をたどっています。靴業界についていえば、元気に働いて靴を履きつぶす人が少なくなっていくということです。
近年の靴業界での顕著な現象は、大手スーパー、百貨店での売上シェアが増え、靴専門店での売上が減少してきていることです。札幌でも、老舗といわれる靴専門店の廃業・閉店が相次いでいます。
そうすると、当社のような製造卸業者は東京に進出し、東京で商談をまとめねば経営は成り立ちません。今やバイヤーは、東京にしかいないのです。そのことを見越して当社は、1986年東京支店を開設しました。
靴市場変化のもうひとつの特徴は、ネットマーケットが広がっていることと、異業種の大手（ユニクロ、しまむら等）が靴を雑貨として囲い込み、トータルで5000億とか1兆円の売上をめざしていることです。M＆Aも盛んで、靴の市場がさらに変わりつつあります。
冬の観光客増を追い風に
当社は長年にわたり、北海道の風土にあった靴の開発を進めてきました。今や、寒冷地、冬の季節の靴といえば「ダテハキ」との定評をいただけるようになりました。当社は1日約1万足の靴を扱っており、その内道内は3割です。どんなに良いアイデア商品であっても、3000～5000足のロットにまとめ、マスセールに乗せる価格設定ができないと市場化は不可能です。
新千歳空港は、週74便国際便が飛んでいます。200万人の来場がある札幌雪まつりの期間は、チャーター便が78便入ります。本州や海外の観光客は、冬の北海道用の履物情報を入手、準備の上で来道します。ですから当社の靴は、沖縄を含め全国の量販店でも入手できます。
現在、日本の靴の85％が輸入品で、内90％は中国製です。当社も、大半を中国で委託生産しており、検品の担当者を12名配置し、不良品のチェックには万全を期しています。
経営は人的資源の蓄積が大切で、当社は今春4名の大卒を採用しました。改めて教育の重要性、特に幹部社員が「人を育てる」意識を持って業務に臨むことを強調しているところです。
【会社概要】
設立 1941年
資本金 3500万円
年商 35億円
社員数 正社員30名、パート15名
業種 靴製造卸
所在地 本社・北海道札幌市
TEL 011-721-2181
http://www.datehaki.co.jp/
「中小企業家しんぶん」 2008年 2月 15日号から
