本当の自主性を引き出したい (株)グリーンシャワー 社長 高畑幸夫氏(千葉)

社員との葛藤から自分との葛藤へ

借金抱えた再スタート

 高畑氏は約20年間、大手寝具メーカーに勤務した後、1984年に独立しました。

 サラリーマン時代の後半は営業を経験し、常に優秀な成績を収めていた高畑氏。その経験を生かして、「営業社員の養成会社」としてのスタートでした。

 業績も順調に拡大しますが、当時起きた豊田商事事件などの影響で契約キャンセルが相次ぎ、仕事が激減。一大決心のもと、1989年、現在の観葉植物レンタル業に業種転換します。大きな借金を抱えての再スタートでした。

社員の採用で社員との葛藤が始まる

 当初は資金繰りに苦労しながらも売上は順調に伸び、1994年から社員の採用を開始します。高畑氏は「そこからが自分との闘い、社員との葛藤(かっとう)の始まりだった」と語ります。

 サラリーマン時代、自分はそれなりに努力もし、一定の成績も残してきた高畑氏は、思うとおりに動いてくれない社員に対して、「どうしてこんなことがわからないんだ」という思いが強く、社員に対して怒鳴ったり、ものを蹴飛ばすなどをしていました。「今思うと、自分の価値観を押し付けていたんですね」と高畑氏は振り返ります。

同友会と出合い、自分との葛藤へ

 社員の定着が悪く悩んでいたころ、同友会と出合い、2001年3月に入会しました。

 入会後、例会などに積極的に参加し、また中同協発行の『共に育つ』を読んだ高畑氏は、「人間は1人ひとり、それぞれ違う」ということに気づきます。

 「それに気づいて、自分との葛藤が始まりました。なぜなら、今までの自分を全面否定しなければならなくなったからです」という高畑氏。苦しくて、眠りたくても眠れない日々が続きました。

 「サラリーマン時代や、同友会入会前に行っていた社員教育は、いわば教育ではなく、特訓でした。いかに会社のレールの上に乗せるかというものでした」。

社員の自主性を引き出したいと指針セミナーに参加

 中小企業の一番の事業は、経営者も含めた「人育て」。社員の本当の自主性を引き出すような経営をしたいと考えるようになった高畑氏は、同友会の仲間に誘われて第11期経営指針成文化せみなーに参加。そこでは「相手の意見を傾聴すること、素直に聞く耳をもつことの大切さを学んだ」という高畑氏は、苦労しながらも経営指針を成文化します。

 成文化した経営指針を、財務分析の資料とともに取引銀行に提出すると、「中小企業でここまでやっている会社はあまりありませんよ」と担当者が驚き、その後の借り入れは本当に楽になったといいます。

 また、自動車ディーラーに対する営業の際に、「観葉植物を置いてその面倒を見ることで、社員に生命を大切にするという気持ちが生まれ、人に優しい社内風土がつくられていくのでは。私どもはそのお手伝いをしたい」と理念を語ったところ、相手が感動して70数店舗分の仕事を受注するなど、多くの成果が生まれました。

 ただ「社員との理念の共有化は簡単ではない」と高畑氏は言います。

社員に出てきた参画意識

 経営指針を成文化して3期目の現在、月例ミーティングなどを通して現状認識の一致や目標の共有化に取り組んできました。また年間予算も今期までは高畑氏が立てていたものを、次年度に向けては社員参加での計画づくりを進めています。その前提として経理も公開し、役員報酬もオープンにしてきました。商品管理のIT化に向けて昨年6月から勉強会も開始し、「社員にも少しずつ参画意識が出てきた」と言います。

命の大切さを心に刻む緑の供養祭

 同社では14年前から毎年3月9日に「緑の供養祭」を行ってきました(3月9日は、同社が定めた「緑の供養日」として、日本記念日協会が認定)。

 以前は、商品価値がなくなった植物は単に廃棄していましたが、命の大切さや感謝の気持ちを心に刻もうと始めたものです。同友会の仲間も多数招いて行われた今年の供養祭では、社員が運営を担当し、「社員さんが成長してきたね」との言葉も、同友会の仲間から聞かれました。

 「人間はいろいろな人がいるから、時間をかけて変化を待つしかない。自分も同友会活動を通じて自分磨きをしていきたい」と語る高畑氏です。

経営理念

私達は『緑と花』の商品を通して、お客様に感動と喜びをお届けします。そして、地域の人々がやすらぎと健康維持に、満足するサービス提供を第1の目的として社会に貢献し、社員と共に心豊かな幸せな生活を築きます。

会社概要

設立 1984年
資本金 1000万円
年商 8500万円
社員数 5名
業種 観葉植物・草花のレンタルサービス業
所在地 四街道市鹿放ヶ丘
TEL 043-422-1230

「中小企業家しんぶん」 2008年 4月 5日号より