徹底的な「社員満足」が「顧客満足」へ~九州教具(株) 社長 船橋修一氏(長崎)

九州教具(株) 社長 船橋修一氏(長崎)

指針なくして経営なし

九州教具

 「経営者としていつも経営に不安を抱えています。しかし、力を与えてくれるのが経営指針であり、経営指針なしに経営はありません」と話すのは、九州教具(株)社長の船橋修一氏(長崎同友会会員)。1998年に専務となり、2005年社長に就任。1999年に経営指針を作成し、以来、毎年全社で検討し、今年で9年になります。

 「徹底的な『社員満足』の追求こそが『顧客満足』の向上につながる」と船橋氏。

 同社では年に2回、全社員が「従業員不満足アンケート」を提出。「その不満を解決することが、社内の変革につながっている」と言います。

 社内に経費削減委員会、社会貢献委員会など多数の「PDCA委員会」を組織し、全社員が何らかの委員会に所属しています。この仕組みが、時代の要請に対し、大胆な組織変更や現場での事業計画作成を可能にし、現場力の強化を実現。

 06年度は長崎県経営品質協議会の「奨励賞」、07年度「経営革新賞」受賞など、その実践は対外的にも認められるところとなっています。

社是追求し、文具店から脱皮

 文具店として創業された同社は、時代に合わせ事務機販売からOA化支援、そしてICT技術(IT+コミュニケーション)を手がける企業へと変化し、「顧客満足を追求するためには自らが実践・経験する必要がある」との信念から、ビジネスホテル事業などを手がけています。

 「誠実にして正確を旨とし以って社会に貢献すべし」という社是を、全社員で時間をかけて討議し、06年に策定した中期(3年)経営ビジョンで、「誠実とは『お客様の立場に立つ』という気持ち。正確とは『お客様の発展』に寄与するという心。私たちは『お客様の役に立つ企業』として社会に貢献する」と具体化しました。

現状否定から「変革」が生まれる

 「中小企業は時代に対応し、変革し続けなければ存続できません。会社を常に『否定する』ところから新たな発想が生まれます。たとえば、最も利益が出ている仕事が最も危ないという意識を持つこと。当社では売上の半分を占めていた文具販売をばっさりと捨てました。当初資金繰りは大変でしたが、慣習にとらわれて成り立っていた仕事でしたので、社内で議論して決断したことで、変革の意識を高めました」。

 また、「中小企業のICT支援事業が進む中、先行き厳しい物販業からサービス業への転換を意識し、システム導入の顧客満足を追求するための実験として、ホテル経営を始めました」と船橋氏。

 県内にある同社の3つのビジネスホテルは、楽天トラベルで06年度「九州地区ビジネスホテル部門お客様大賞」を受賞するなど、高い評価を得ています。

 また、ホテルでは、社員の提案で「長崎の地から平和を祈る1000羽鶴企画」を06年度から実施。客室に折り紙を置き、宿泊客の協力で折られた1000羽鶴を毎年8月9日に平和公園に奉納しています。「これは社員の声ではありますが、お客様の潜在的な気持ちなのです」と船橋氏。初年度は6270羽、翌07年度は1万1643羽の「お客様の祈り」を奉納しました。

理念の共有と実践

 同社では経営理念を共有するために、言葉1つひとつを社内で議論して定義づけ、認識を一致させるようにしています。 「売上は『価値』と呼び、『提供させていただいた商品・サービスにおいてのお客様が決定する価格』と考えます。粗利益は『お役立ち』と呼び、『提供させていただいた商品・サービスに対してのお客様の評価度』と定義した途端、粗利益が上がりました」といいます。

 また、「会社は劇場であり、共に学ぶ大学、『人の役に立つ人間になる』という大テーマを研究する研究所」と考え、社員の思いを大事にし、毎年すべての役職を立候補制で決定します。

 さらに、「質の高い仕事をしていく上で、働く個人には人生のイニシアチブを自らとる姿勢が求められる」とし、学校行事や地域活動などへの社員の積極的なかかわりを奨励。06年には女性の能力活用で長崎県労働局長賞を受賞。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の取り組みにも意欲を燃やしています。

会社概要

設立 1950年
資本金 6000万円
社員数 100名、パート・アルバイト10名
年商 23億5000万円
業種 文具・事務機販売、情報システム構築、ビジネスホテル
所在地 長崎県大村市桜馬場
http://www.q-bic.net/

「中小企業家しんぶん」 2008年 5月 5日号より