デフレ発想と事業モデル転換が求められる

新しいタイプの不況に立ち向かう

 最近の新聞の経済関連記事では、「○○年ぶり」という表現が目につきます。「日本経済新聞」の記事で見ると、「企業物価27年ぶり上昇幅」(2008年4月11日)、「消費者物価1・5%上昇、10年ぶり伸び率」(6月27日)など。極め付きは、「日経平均株価、54年ぶり12日続落」(7月5日)でした。

 さらに、「初の」もあります。「NY原油、初めて145ドル台に乗せ過去最高値を更新」(7月4日)、「自動車保有、初の減少」(5月16日)などの記事が目立ちました。どうやら日本経済は、物価高と経済の縮小が進行し、本格的不況の門口に立っているようです。

 同友会景況調査(DOR)4~6月期調査(速報)によれば、業況判断DI(好転マイナス悪化割合、前年同期比)が1~3月期のマイナス22からマイナス30にさらに後退しました。DORの経験値では、今後、34半期以上続いて下降する可能性があり、来年にかけて厳しい不況局面を迎えそうです。特に、採算DIと1人当たり付加価値DIは、前回の2001、02年の不況時と同じ水準にすでに下降しています。

 DORの調査結果を分析する判定会議では、「今、仕事のほとんどは価格転嫁の交渉。1カ月転嫁するのが遅れたら1年分の利益が吹っ飛ぶ」、「値上げ交渉に行ったら、値下げを切り出された。秋口からは取引先の与信管理が大変だ」などの切実な声が聞かれました。

 判定会議の議論で焦点になったのは、景気後退下の物価高(スタグフレーション)をどうとらえ、対応するのか、でした。

 物価が上がっても賃金が大幅に上がった第1次石油ショックとは違い、今回は賃金が上がらないためにインフレ圧力が直接に消費の縮小に拍車をかける新しいタイプの不況になっており、経済政策の大転換が必要であることが議論されました。また、中小企業も緊急避難的対応の準備とともに、デフレ時代の発想と事業モデルの転換が求められていることが焦点となりました。

 今回のDORの記述回答からも、同様の問題意識が読み取れます。

 「金属全般の業界そのものが縮んでいくのが止まらない時代では、今後、今までの見方ではダメ。自分では付加価値と思っていたものが、付加価値でもなんでもなかったのに気づいた。今後は信頼できる同友会の仲間とお互いがもっている経営資源を持ちより全く新しい仕事を創造し、そこから、各自の強みを見つめ直すようにしていかなければならない」(大阪、金属材料・金属加工品販売)。

 「地域同業者とも、加工部門、配送部門の共同化を模索している。これにより各社の業務部分のコストを下げ採算性確保、向上させたうえで、各社の営業を中心とする競争に移行し、サービスの提供を維持、継続できるよう取組みたい」(北海道、ファインスチール成型加工品販売)。

 不況の嵐に耐える強靭(きょうじん)な企業づくりとともに、新たな知恵と連帯の輪を広げていくことが求められています(詳しくは、『DOR第83号』を参照)。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2008年 7月 15日号より