原料急騰には消費者本位の商品づくりで対抗 服部製紙(株)会長 服部豊正氏(愛媛)

服部製紙(株)会長 服部豊正氏(愛媛)

 「中国・四国ブロック同友会代表者会議」(6月6日、鳥取県米子市)で行われた各社の経営戦略の報告のうち、服部製紙(株)会長の服部豊正氏(愛媛同友会代表理事)の報告概要を紹介します。

コンセプトは「アメニティ&エコロジカルライフスタイル」

 製紙業界を概括的に紹介すると、2006年の生産量はアメリカ・8400万トン、中国・6500万トン、日本・3100万トンで、日本は近年あまり変化していませんが、中国は今年7000万トンを超える勢いです。

 国内の家庭紙の生産量では、トイレットペーパーが100万トン(大手32~35%、中小65~68%)、ティッシュが50万トン(大手85%、中小15%)となっています。

経営圧迫する原料等の値上がり

 ここへきての原料等の値上がりは大変経営を圧迫しています。

 5月にA重油が1リットルあたり9円50銭上がりましたが、当社はそれだけで利益が100万円吹っ飛びました。1カ月の油代が3年前350万円から400万円だったのが現在は1200万円になっています。

 油の値上がり以上にこたえているのが、主原料の値上がりです。3年前、パルプ1キログラム60円前後だったのが、現在は100円前後、古紙は3年前の11円が現在22~24円です。古紙は大手も大量に集めていますし、中国も集めているので、手に入りにくくなっています。

 こうした環境変化で、年商32億円の当社で、3億円のコストアップになりました。

 ある程度のコストアップであれば、企業努力で吸収できますが、ここまでくるとそれも限界です。最終的には値上げしかありません。大手も軒並み赤字で、価格修正が本格化しそうです。中小の製紙メーカーはすでに価格修正をしており、これから第4次の修正に入るところです。

使命感に基づく商品づくりで

 当然のことながら、コストアップをどう吸収するかが当社にとって大きな課題です。トイレットペーパーやティッシュだけでは生きていけません。当社のコストアップ対策の基本戦略は、地球環境保全のために家庭排水をきれいにする商品を提供することです。

 ここに至るまでには、同友会入会後20年以上にわたる学びと試行錯誤がありました。

 松山市で行われる同友会理事会への往復の5時間、同じく理事で同業の宇高昭造さん(泉製紙(株)社長)と車中でいろんな話をしたことが、現在の戦略の決め手になっています。

 愛媛同友会の元代表理事井浦さんが一貫して「寝たきり老人をなくす」ことを掲げて福祉機器の開発に取り組んでいるのを見て、宇高さんと私は「井浦さんのように目的、使命感を持って商売に打ち込めたらいいね。われわれの業界は価格競争ばかりでなかなか使命感を持ちにくい、なんとかしたい」と話していました。そんなやり取りから私は、“本当に消費者に喜んでもらえる商品をつくりたい”という思いを強くしていきました。

快適さの追求と地球環境をテーマに

 もう1つの決め手は、泉製紙とトイレットペーパーで競争しても技術的には勝てないということでした。16年前、幹部社員と1泊の会議を行い、今後の方向性を討論しました。そこでの結論は、「人間は明るいところが好きだし、快適な生活を望んでいる、そのための商品づくりを柱にしよう」ということでした。「アメニティ&エコロジカルライフスタイル」というコンセプトが確定しました。

 基本戦略が明確になると、いつも問題意識を持って物事を見ることができるようになります。社員も「健康と環境」というテーマをもって会社の方向を考えるようになりました。

 その後、たくさんの商品を開発してきました。ダイオキシンが問題になったときには、塩素を使わない無漂白のてんぷら敷き紙を開発。地球温暖化を配慮して木材の伐採を少しでも減らせるように、草を原料にした非木材紙、バガスや綿なども使っています。

“きれいな家庭排水”で商品開発に力

 当社にとっての最大のテーマが「水」です。家庭排水をきれいにするための商品開発にいちばん力を入れています。

 食器を洗う前に粗拭(あらぶ)きするための「キッチンかたづけペーパー」、廃油を下水に流さないための「かたづけポイ」などを開発。さらに酸化精製水と重曹電解水を使った商品開発に取り組んでいます。重曹電解水を使うと界面活性剤を使うよりも、油の乳化度は高くなります。重曹ですから体にも害がありません。

 環境負荷の少ない洗浄液を採用した商品を「sndek」と名付け、シリーズ化して開発しており、ブランドとして育てたいと考えています。製紙業界は厳しさが続きますが、世の中が求めている商品を開発しウエイトを高めていけば、生きていけると考えています。

経営理念

お客様の「感動」のために!/私たちは、製紙業を通じてお客様の生活改善と利便性そして社会貢献に取り組んでまいりました。しかし同時に「環境」という失ったものの大きさを感じそれを取り戻すべく「電解水」の事業化に挑戦しました。

お客様からのお手紙/私ども服部製紙は、このお手紙に元気づけられると共に私たちの事業の方向が間違っていないことに確信を持つことが出来ました。 これからもお客様へ「快適生活」の提供と同時に「環境への貢献」を果たし、「やさしさ」と「感動」を創り出す企業活動を目指し続けたいと考えております。

(編集部注:「お客様からの手紙」は同社ホームページで閲覧できます)

MOVE YOUR HEART!
水の力と紙の可能性を創り出し「感動」を明日に繋げる企業を目指します!

企業風土
みんなの思いが集い「わくわく」「どきどき」が渦巻く企業に!

(服部製紙(株)のホームページより)

会社概要

創業 1914年
設立 1950年
資本金 8600万円
社員数 115名
年商 32億円
業種 トイレットペーパー、キッチンペーパー、油こし紙、化粧品等製造
所在地 四国中央市金生町山田井
TEL 0896-58-3306
http://www.hattoripaper.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2008年 7月 25日号より