独自の味の創造で食文化向上に貢献 (株)ハーヴィインターナショナル 社長 切山英彦氏(埼玉)

自社ブランドの開発で自立型企業へ

切山社長

 食への安全、安心への期待と同時に、「味」へのこだわりもかつてなく高まってきています。サラリーマン時代を含めて40余年、配合調味料製造に携わってきた(株)ハーヴィインターナショナル社長の切山英彦氏(埼玉同友会会員)にお話をうかがいました。

脱サラ、40歳の創業

アンテナショップ「ハーヴィーズ」のスープメニュー

 切山氏は北海道の農家出身。都内の大学で農芸化学を学び、就職先に選んだのがシカゴに本社を持つ配合香辛調味料製造の外資企業でした。

 同社は、日本でのスタート時は社員数名でしたが、調味料をブレンドする新しい味づくりは人気を呼び、急成長を遂げます。切山氏も経営陣に加わるのですが、突然M&A(企業の合併、買収)の話が持ち上がります。会社に一生を捧げようと企業戦士で頑張ってきた同氏にしてみれば、企業も商品のように「高値の時に売る」発想には我慢ができませんでした。

 やむなく1984年退職。同じ事業を継続しようとゼロからの再出発、40歳の時でした。資金も無いため、最初は「工場を持たないメーカー=委託製造」をめざします。事業は順調に展開しますが、客先から「工場を持たずに配合品の企業秘密は守れるのか」「迅速な対応ができないではないか」と指摘されます。そこで、1990年埼玉工場を竣工。氏の仕事ぶりを評価して、地元銀行支店長が担保なしで融資に応じてくれました。

「21世紀型中小企業」づくりに共鳴

スパイスキッチン「ハーヴィーズ」で開かれるキッチンセミナーの様子

 その間、過労が災いし、89年心筋梗塞で倒れたこともありました。「家族や会社のこと、やり残した仕事が脳裏を駆け巡り、絶対死ねない」と思ったとのこと。また「会社とは何か」を考える機会ともなりました。

 埼玉同友会への入会は92年、学生時代の友人の誘いでした。生真面目な氏は、所属する西部地区会の例会には欠かさず出席。同友会を心底見直したのは、93年の全国総会(北海道)で発表された「21世紀型中小企業」(注)づくりでした。

 今までも、ハウツーの勉強会には参加し、「企業は利益追求の場」と固く信じ込んできたのが、「地域社会から高く評価」され、「社員が誇りを持ち労使が高い次元で団結」する企業こそ、これからの時代に求められる企業であることに深く共鳴したのです。

 以来、同友会活動にはフル参加、地区会長、県理事、代表理事、中同協副会長も歴任することに。全国行事、特に総会、全研は皆勤です。97年経営指針を成文化し発表、2002年中小企業経営革新支援法に基づく経営革新計画の承認、04年食添GMP及びISO9001認定登録、06年埼玉県経営品質協議会推進賞受賞。工場も県内2工場に新増設しました。

求人と教育で土台づくり

 会社組織を継続的に発展させていくのは人材です。中小企業は「即戦力」を求め、中途採用を重視しがちです。経営指針の成文化に着手するころから、共同求人活動にも参加、求人と社員教育を一緒に進め、人材育成の土台をしっかりさせることに力点を置きます。

 97年から新卒採用を始め、毎年1~2名、男女を問わず定期採用を続けてきました。特に女性の新卒入社で結婚、出産後も働いている方が2人います。

 さらに、パート募集で入社した既婚女性が半年後、勤務ぶりを高く評価され、本人の希望もあって正社員となり、活躍する事例も生まれています。

アンテナショップ「ハーヴィーズ」をオープン

 日本の調味料市場は約1兆5000億円、そのうち配合調味料市場は約3300億円です。今後、少子・高齢化で食産業が狭くなり、他方でニーズ(味)の多様化、ファッション化、ボーダーレス化は進みます。同社の販売先は大手食品メーカーに大半を依存しており、今後、独自に提案、市場参入する自立型企業にしていくことが課題です。

 昨年6月、所沢市内にオープンしたアンテナショップ「ハーヴィーズ」は、同社のスパイスを使用した各種スープ類を目玉とするレストラン。ここは開発と営業を兼ね、同社製品のブランド化を目指しています。

 「ハーヴィーズ」では、定期的にキッチンセミナーを開き、スパイスを生かした家庭料理法を提案、今では口コミで地域の人たちに伝わり、ファンの要望でミニコンサートも開かれるようになりました。

 「現在、台湾への販売展開も予定。埼玉同友会の食品メーカーとも提携し、県産大豆などを使用した共同食品開発を進め、ネット直販を研究したい。ねらいは食文化向上に貢献すること」と語る切山氏。夢はさらに大きく広がります。

(注)「21世紀型中小企業」

 「第1に、自社の存在意義を改めて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応(こた)えられる企業。第2に、社員の創意や自発性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。」

 1993年7月、北海道で開かれた中同協第25回定時総会「総会宣言」に盛り込み、採択。

経営理念

1、食べ物の本質を見すえて独自の味を創造し、味をもって健康で豊かな食文化の向上に貢献します。
2、正直、素直、公正な経営に徹し、誇りと働き甲斐のある高次元経営をめざします。
3、味のトレンドを先取りし、顧客の個別ニーズに応える商品開発に全力を尽くします。
4、自発的こだわりの精神で専門分野を深めて、組織に貢献し、働くことを通して豊かな人間性を開発します。

会社概要

設立 1984年
資本金 1000万円
年商 11億円
社員数 54名(パート19名含)
業種 配合香辛調味料・ハーブ・乾燥野菜等製造販売
所在地 埼玉県所沢市御幸町
TEL 042-921-2071
http://www.harvey-j.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2008年 12月 25日号より