経営指針で目標設定「社会のために」楽しく(株)六甲歯研 社長 槙原 良樹氏(兵庫)

マイナス10%運動で最優秀賞を受賞

 2007年に「中小企業家の環境宣言」を採択した兵庫同友会が昨年実施した「省エネルギーマイナス10%運動」の「夏季コンテスト」で、電気18%、都市ガス24%、水道26%の削減を達成し、総合部門最優秀賞を受賞した(株)六甲歯研を紹介します。

経営指針でKEMS取得を目標に

 2007年暮れから神戸での環境サミット開催など、マスコミなどで環境問題が話題になっていました。当社は事務所のトイレに、興味のある雑誌の切り抜きや感動した新聞記事などが貼れるようにしてあるのですが、ある日、女性社員が、「レジ袋1枚は、原油にすると20ミリリットルです」「紙1トンのリサイクルで、立木20本分が節約できます」といった記事を貼りました。社内でも「ムダなことが多いな」といった話題がでるようになってきました。

 今なら、KEMS(神戸環境マネジメントシステム)取得が全社で取り組めるのではないかと考え、今期の経営指針書の方針の1つをKEMS取得とし、キックオフを6月の1泊研修で行いました。意識を高めるため、本社と加古川営業所の2カ所で取得することにしました。そんな時、兵庫同友会のマイナス10%運動を知り、モチベーションを上げるためにもと、参加することになりました。

キーワードは「楽しくやろう」

 当社は、経営指針書による運営という仕組みが浸透していますので、今期のテーマの1つがKEMSだと決まったら、「これでやろう」とすぐに動き出します。

 まずムダを減らすことから始めました。数字だけにこだわると社内の雰囲気も悪くなり、何のためにやっているのかわからなくなるので、「楽しくやろう」をキーワードにしました。

 具体的には、エアコンの温度を原則28℃に設定しました。機械的な設定では作業中の室内は大変暑くなり、作業能率も落ちるので、温度計を室内に設置し、28℃になるように調整。場所によって寒い所や暑い所があるので、温度計を置く場所についても調整しました。すると、去年まではエアコンが効き過ぎて注意することもあったのですが、今年は「温度をもう少し下げたら」ということの方が多かったのです。

 人がいない所のクーラーと電灯はつけないよう徹底し、昼休みも消灯。当社は石膏を使う作業が多く、水を流しっぱなしで練和作業をしていましたが、水を溜(た)め、その水で練和するように改善しました。特別なことをしたのではなく、個人個人が教えてもらったことを確実にやっていきました。

 去年よりも売上を伸ばしながら労働時間を短縮できたことも、大きかったです。労働時間短縮は昨年からの経営指針書の目標でした。

 今までも気がつくと注意していたのですが、徹底できませんでした。経営指針書で目標を掲げたことで、社内の意識がまとまり、徹底できたと思います。

社員・社内の変化

 社員の環境に対する意識が上がったと思います。会社の外の掃除は当番制にしたのですが、当番ではない人も手伝うようになっています。「町で掃除をしている人を見ると、地域のために頑張っているのだなーと思うようになった」と話してくれた社員もいました。「やれやれ」と言うのではなく、「社会のためになっていると気付かせてあげるのが教育なのでは」と、私自身気付きました。

 また、最初は、「暑いのに何で」という人もいましたが、なぜするのかを説明していく中で、「KEMS(ケムス)ル」を合言葉に、社員みんなが参加意識を持って、楽しみながら頑張るようになりました。やはり経営指針書を基に、決まったことはみんなでやろうという社風や、PDCAを回す土壌があったことが大きかったです。

 少しの努力でも成果が出たことから、仕事上でもムダがたくさんあるのでは、との意識も出てきました。

 今回マイナス10%運動に参加した企業のエネルギー削減量をCO2換算すると、すごい数値になると思います。1社でも多く参加して頂きたいものです。

会社概要

創業 1974年
設立 1980年
資本金 2000万円
社員数 55名
業種 歯科技工全般
所在地 神戸市灘区永手町
TEL 078-851-4449
http://www.e-108.com/

「中小企業家しんぶん」 2009年 1月 15日号より