APEC 女性リーダーズネットワーク(シンガポール)~中同協から2名代表派遣

 8月4~5日、シンガポールのラッフルズシティコンベンションセンターで「第14回APEC(アジア太平洋経済協力会議)女性リーダーズ・ネットワーク会合(WLN)」が開かれ、APECの21カ国・地域から600名を超える女性の代表が参加。「女性と持続可能な開発」をテーマに、分科会やパネルディスカッションなどで議論・交流されました。この会議には、日本から内閣府や中同協などの11名が参加し、来年日本で開かれるこの会議の開催に向けて、イメージをふくらませました。

 中同協では2007年に東京で開かれた「女性経営者全国交流会」に、内閣府男女共同参画局の後援を得て以来、内閣府の男女共同参画推進連携会議議員(糸数久美子氏)を推薦し、ワーク・ライフ・バランスのシンポジウムなど内閣府との共催行事を東京、鹿児島、広島などで行ってきました。これらを通じて、優れた企業実践の教訓を持つ、自主的組織の同友会に対し、信頼が高まってきました。

 来年、議長国となる日本で開かれるAPEC、その会合の1つ、WLNを内閣府男女共同参画局が担当することとなり、その企画検討に中同協も協力してきたことから、同局の依頼により、糸数久美子・中同協女性部連絡会代表と平田美穂・中同協事務局次長をシンガポールに派遣することとなりました。

 WLNは、APECのメンバーである21カ国・地域の産業界、政府、学界、市民団体等の女性から構成されるネットワークで、APEC期間中に議長国で開催し、会合の成果として政策提言を、APEC首脳や各種大臣会合等へ提出しています。

 今回の会合は、1日目にシンガポール大統領のコメントやシンガポール大使の基調講演、世界銀行や国連婦人開発基金関係者らによるパネル討論、カナダ、チリ、ロシア、日本などから働く女性に関する報告がありました。

 2日目は国連アジア太平洋経済社会委員会の事務局長が基調報告し、3つの分科会が持たれ、最後にWLNとして、APEC首脳に向けた10の政策提言(後掲)を確認し、閉会しました。

APEC首脳への政策提言

 APEC首脳に提案されたWLNからの政策提言は、以下の通りです。(中同協訳)

(1)女性に対する職業能力の開発と教育を含むプログラムを充実させ、より多くの女性がその恩恵にあずかるようにすること。
(2)政策の恩恵を受けていない劣悪な環境にいる女性の雇用創出プログラムを推進すること。
(3)特に零細企業や小規模企業に向けて資金調達がしやすいようにすること。
(4)女性のために社会的セーフティーネット(最低の生活が保障される福祉計画)を確立すること。
(5)事業者登録とプロセスを簡素化すること。
(6)科学技術の使用を、女性のために、さらに有用に平等に使えるように、促進すること。
(7)情報機器・サービスの提供や使いこなすための教育を通して女性、中でも地方に長く住んでいる女性が情報通信技術を利用できるように支援すること。
(8)女性がより多く経済に貢献できるように市民社会を含む官民のパートナーシップを奨励すること。
(9)女性のビジネスモデルと持続可能な開発をおこなう社会的企業をサポートすること。
(10)子どもの養育や弱者のケアをする人への支援のような仕事と生活の調和、気候変動のような環境問題に関する方策などのような分野への支援、投資、奨励の政策が経済的、社会的な価値があることを認識すること。

【APEC WLNに参加して】国際的にも通ずる同友会理念に確信 中同協女性部連絡会代表 糸数 久美子

 8月3日夕方、シンガポールチャンギ空港に到着しました。飛行機から降りるとすぐ国賓待遇の出迎えがあり、入国審査も手荷物受け取りも自分ですることなく、「車でホテルまでご案内します」と言われた時には、荷物は車の中でした。

 驚くのはこれだけではありません。ホテルに着くなり片言の日本語で「イトカズサン」と声をかけられ「私はユリです」と自己紹介をされ、そのユリさんがこの4日間のスケジュールに沿ってお世話をして下さる担当者でした。平田中同協次長と私のために。

 その後、ウエルカム・ディナーで早速世界各国の方々とテーブルを囲みました。

 翌日は、朝8時から会議がはじまると思いきや、ウエルカム・ブレックファーストで会場入り口に朝食が並べられており、バンドの生演奏がありました。

 いよいよ開会。シンガポール大統領が、「過去には1夫多妻であったが、現在は1夫1婦制で残念な」というように、ユーモアを交えながらも「これからの時代は女性が持続可能な社会づくりに重要な役割を果たすであろうことを期待し、そのための支援もサポートしたい」と歓迎のあいさつ。その後国務大臣もあいさつしました。

 本会議は昨年の「第13回APEC WLN会合」開催国のペルーより報告。基調講演「APECの女性~未来への挑戦と切望」から始まり、「APECにおける女性と持続可能な開発」「キャリアウーマン」についての公開討論会。質問者が行列となり、時間切れとなったため、全員が質問することはできませんでした。

 会議の最後に「第14回APEC WLN」推薦のプレゼンテーションとレポートが承認されました。

 女性に対する職業能力の開発と教育を含むプログラムを充実させ、より多くの女性がその恩恵にあずかるようにすることや、零細企業や小規模企業の資金調達がしやすいようにすることなど、女性のために社会的セーフティーネットの確立など10の政策提言が承認されました。

 これらは同友会で掲げてきた内容とも共通する部分も多く、来年の本会合の分科会を担当することになっても十分担える手ごたえを感じました。

 会議終了の翌日は、午前中の観光と昼食が付いたツアー。3回のディナーと昼食、4回のティータイムにおやつ、そしてツアー。帰りの飛行機時間に合わせた空港までの車の手配、最後まで驚きと感動でした。

 今回、参加する中で学んだことは次の3点です。

(1)国際的視点に立って、同友会運動や女性部連絡会の活動を考えるいい機会となったこと。
(2)女性部連絡会として意識的に進めてきた、生活者の視点に立った企業づくりやワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)、平和、ジェンダーの問題、中小企業憲章学習への取り組みは、国際的にも発信すべきものであり、次回の開催に当たって同友会で企画の一端を担うことは、APEC各国・地域にとっても十分意義のある内容となり、国際貢献できること。
(3)女性部連絡会でこの内容を報告するとともに、連絡会の学びの内容をさらに深めていけること。

 同友会理念が国際的にも通ずるものであったことに確信を得ることができ、参加させていただいたことに心より感謝申し上げます。

「中小企業家しんぶん」 2009年 9月 5日号より