郷土愛を呼び覚まし住民に理解広げる

注目される個性的な表現の中小企業振興基本条例

 9月に北海道・帯広で開催された第37回青年経営者全国交流会の第十分科会「地域づくりと中小企業振興条例の果たす役割」には150名が参加し、活発に運動を交流しました(本紙10月5日付参照)。

 分科会では、北海道同友会の帯広、釧路、旭川各支部の特徴ある事例が報告され、戦略を練りながら地道に取り組んできた経験がリアルに語られました。また、この取り組みのなかで、地域での同友会の存在感を高め、同友会組織の強化にもつながることも確認できました。

 中小企業振興基本条例(以下、振興条例)は全国に100以上の自治体にあります。その中には企業誘致施策のみ規定するなど古いタイプのものが多く、私たちが進めている理念がきちんと位置付けられた総合政策型の振興条例が制定されている自治体は限られます。県レベルでは、2002年に「埼玉県中小企業振興基本条例」が初めて制定されて以降、14道県が振興条例を制定しています。

 また、市区町村レベルでも、40を超える市区町村で理念型・総合政策型の条例が制定されていますが、最近は個性的な表現の振興条例が目立ちます。

 たとえば、釧路市の振興条例の前文では、「かつて幕末の探検家松浦武四郎はくすり場所を訪れたとき、『東蝦夷地第一の都会たるべし』と将来の経済的な発展を予見した。以来100年有余の間に、武四郎の言葉どおり、釧路市は幾多の先人たちが重ねた労苦を礎として、都市規模を拡大し様々な産業を根付かせ、まちに灯(あか)りをともしてきた」と郷土の歴史を格調高く謳(うた)い、「市民と行政が、地元への愛着と郷土への誇りを胸に、地域経済活性化の核である中小企業の振興」をめざそうと呼びかけています。

 また、山口県ふるさと産業振興条例では、「地域の活力を高めて将来にわたり本県が持続的な発展を遂げるためには、県民がふるさとを愛しはぐくむ意識を持って、ふるさと産業の重要性について理解を深めるとともに、生産物及び製品の消費及び利用並びに事業者が提供するサービスを利用するなどの自発的な取組を進めていくことが重要である」と「ふるさと産業」を支援する意義を述べつつ、「この取組は、安心で安全な県民生活の確保及び食料自給率の向上に資するとともに、生産物及び製品の輸送に伴い排出される二酸化炭素等の削減による地球温暖化の防止等に寄与することからも、推進されるべきものである」とし、食料自給率の向上や二酸化炭素等の削減など今日的課題にも貢献することを強調していることが注目されます。

 振興条例は、中小企業者や行政の責務を規定するだけでなく、住民にも理解を広げることを謳っていることが多く、地元の住民により親しみを持ってもらう1つの工夫としても、「思い」のこもった個性的な表現の振興条例が今後増えるものと期待されます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2009年 10月 15日号より