地域金融機関との新たな協力関係を

金融プラス中小企業の仕事づくり

 同友会景況調査(DOR)によれば、7~9月期の資金繰りDI(「余裕」から「窮屈」を引いた企業割合)は、2期連続で改善してマイナス11になりました。しかし、「高まる景気後退懸念を背景に、金融機関の貸出態度判断は相変わらず厳しく、資金需要が増える年末に向けて資金繰り不安の再燃が懸念される」(DOR88号)と厳しい見通しが示されています。

 このような状況の中、政府は10月30日、「中小企業金融円滑化法案」を閣議決定し、国会に提出しました。同法案は、金融機関に対して貸し付け条件の変更に応じる努力義務を課し、信用保証制度の拡充や不良債権の基準緩和などとあわせて中小企業等の資金繰りを支援するものです。

 これに先だつ10月28日、中同協は「中小企業の危機打開のための緊急政策提言」を政府に要請し、中山内閣総理大臣補佐官(中小企業担当)と懇談しました(本紙11月5日付)。

「政策提言」では、中小企業金融円滑化法案を「中小企業支援の心強い姿勢を歓迎したい」と積極的に受け止めつつ、「個別企業が金融機関と貸付条件の変更等を交渉するというスキームでは、貸付条件の変更が実現したとしても返済履歴に瑕疵の記録が残るとともに、問題が先延ばしになり、新規の追加融資が受けられない可能性もある」と指摘し、「借り換えが可能でリスケジュールと同じ効果をもたらす新しい融資制度を創設すること」を提案しています。

 前政権の下でもリーマンショック以降、緊急保証制度や「不良債権判定基準の緩和」など対応策が実施されてきました。緊急保証は保証総枠30兆円まで拡充されていますが、利用総額は現在約15兆円と余裕を残しています。新政権の返済猶予の一連の措置は中小企業の資金繰りを緩和するうえで有効でしょう。さらに、中同協の提言は将来に向けた新たな資金確保を確実なものにするための提案になっています。

 しかし、融資の手当だけでは中小企業経営は改善しません。中同協の提言では、「中小企業の仕事づくり、需要創出政策が金融政策とともに総合的に実施される必要がある。金融機関が中小企業の仕事づくり支援や需要創出にかかわることを国と自治体が支援する施策を実施するとともに、そのような取り組みを積極的に評価するシステムが求められる」と強調しています。

 今後、中小企業は金融機関の機能や資源を仕事づくり等に活用するなど、より緊密な関係を築くことが重要になります。地域の危機を打開する仕事づくりのための中小企業と金融機関とのアライアンス(同盟)が求められています。

 各同友会と金融機関の業務提携は最近5年間で大きく進展し、12道県の同友会が54の地元金融機関と業務提携や連携協力の関係を結んでいます。個々の企業の努力とともに、同友会のこのような取り組みを進化させていくことが期待されます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2009年 11月 15日号より