私たち一人ひとりが環境行動宣言を~環境文化を発信し続けて19年(株)エステム会長 鋤柄 修氏(中同協会長)

熱き企業家精神で持続可能な社会と企業をつくろう

 「私たち一人ひとりが環境行動宣言を」をテーマに10月15~16日、神奈川で開かれた「第5回環境問題交流会」。鋤柄修・(株)エステム会長(中同協会長)の基調講演を中心に、4~5面で紹介します。

「水を中心とする環境文化の創造」を理念に

 当社は現在、100年先の未来に向けた環境創造企業として、水処理施設などの各種環境プラントの設計開発、調査分析を行う会社で、植林活動や環境フォーラム開催、地球を守る意識の取り組みをすすめています。

 1970年に水処理業として始まった当社が、環境問題解決型企業への取り組みを始めたのは、設立20年後の90年。世間はバブルで浮かれていた当時、同友会の仲間からA4の1枚の企業ビジョンを見せてもらったことからです。

 そこで、21世紀に生き残れる企業づくりを目指して、1年半にわたり全社員をまきこんで2001年ビジョンをつくりました。そこで「水を中心とする環境文化の創造」という理念を掲げ、方針を10項目つくりました。環境を守り、さらに文化まで高める方向をつくったお陰で、世界のキーワードが環境になった21世紀にも対応できる企業となったのです。

 私が社長の時代には実現できなかった環境問題研究センターも、次の社長が2年前に実現してくれました。ビジョンをつくったからできたのです。

大卒求人から始まった「環境フォーラム」

 21世紀に生き残る企業になるために、さらに大卒の定期採用に取り組みました。90年から共同求人に参加しました。学生をホテルに集め、先生に環境問題を講演していただいて、私が夢を語った。でも飛行機代まで負担したのに、採用できませんでした。

 そこで91年に再出発として、社名も「エステム」に変更、ホテルではなく公共の施設で環境問題に真剣に取り組んだ社員の報告をしました。先生とも一緒に学ぶようにしたところ、大学生が採用できました。今ではこれが環境フォーラムに大きく成長しています。

 全て社員が企画から運営まで自主的に取り組んでおり、トップクラスの先生も講師にきていただき、参加者も400~500名もきてくれるものになっています。

 入社すると、水処理の仕事ですから、現場のきついニオイを体験してもらうことから始めます。俗に言う3Kの現場ですが、環境破壊に目をつぶらないためにもこの仕事がしたい、子どものためにここで働きたい、能力あるから働いてみたいという会社が実現できました。入社した先輩が後輩に「誇りがもてる企業だよ」というような企業になりました。

環境文化の理念を外部発信

 「環境技術」を「環境文化」にまで高めるには、意識改革が必要と考えました。技術だけでなく、一人ひとりの社員がスキルアップし、人間性を向上させバランスをもった人間になる、そこから生き方も考えていく。さらに、持続可能な社会をつくるには、まず当社が持続可能企業にならないといけないと、環境文化の外部発信にも取り組みました。

 環境文化の外部発信は、90年の会社周辺のゴミ拾いから始まりました。そこからつげ野の森や木曽水源への植林活動に参加、05年からはタイのチェンマイでの植林活動に参加しています。チェンマイでそれまで行われていた「ケシ」の栽培から転換させるためのもので、七夕の日に梅の木を植えます。96年からは、鳥取大学の遠山先生に協力して、中国の内モンゴル自治区で砂漠の緑化活動に取り組んでいます。

 さらに05年から棚田を復活させようと四谷千枚田に田植えをしています。若手が参加して、収穫して食べることの大事さを実感するために行っています。

 これらの活動には、交通費以外は社員の手弁当で、それぞれが知恵をだし、覚悟してやる、それがボランティアだとして進めています。このことで自立社員がつくられ、「環境は自分で守る」という心構えができてくるようになりました。

 04年、ISO14000を取得して毎年環境活動レポートを出しています。同友会も「同友エコ」を宣言しましたが、環境を守るためにどんな企業もまず自社のデータをとらないとできません。ISO14000をとらなくても、環境に負荷をかけるものは明確にしておくことが必要です。

「環境」「エネルギー」「食料」を正三角形で考える

 環境問題をビジネスにしていくことも重要です。「環境」だけでなく、「エネルギー」「食料」と正三角形にしたら、アイデアがでてきます。最初は小さなことからでも取り組んでください。また他のマネからでも進めてください。エステムでは「水」に特化していますが、この水の分野の隣に「ゴミ」と「食料」があります。

 先日開かれた愛知同友会の経営フォーラムには1000名が参加しましたが、懇親会では料理も酒も持ち込み、コップも箸も自分の名前を書いて最後まで使い、懇親会終了後は、みなでゴミ分別までしました。日本人の原点は「もったいない」です。これをビジネスにしていけばいいのです。江戸時代は肥料と野菜を交換する「循環型社会」でした。地産地消も考えれば、中小企業の時代です。ぜひ環境問題に取り組み、そこからビジネスも見つけましょう。

「中小企業家しんぶん」 2009年 11月 15日号より