各地で「企業変革支援プログラムステップ1」の取り組み~強み弱みを洗い出し、確実な企業変革を

 11月は「企業変革支援プログラムステップ1」(以下「ステップ1」)の普及月間でした。中同協では、本プログラムで「企業の健康診断」を行い、「経営実践を問いかけあい、1社でも多く逆境に耐えられる強じんな企業への変革を促そう」と、全国5000社のデータ登録を目標に、全同友会での取り組みを呼びかけました。「ステップ1」は4月の発行以来、すでに8000冊ほどが各同友会で普及され、それを活用した「企業の健康診断」が積極的に取り組まれています。今号では京都・北部地域会、愛知、香川での同友会の取り組みと、そこで学んだ会員の皆さんの実践を紹介します。

抜本的な変革へ、22社の実践に学ぶ~北部地域会で7回シリーズの取り組み

 京都同友会北部地域会(4支部163名)では、同会経営委員会の例会として「企業変革支援プログラムステップ1」にもとづく研修会を、6~12月まで月1回7回シリーズで行い、のべ145名が参加しました。

地域経済崩壊の危機の中で

 京都同友会北部地域会は、日本海に面した京都府北部に位置する5市2町(総人口約31万人)をエリアとし、丹後、宮津、舞鶴、福知山の4支部で構成されています。90年バブル崩壊から現在に至るまで長きにわたって、顕著な少子高齢化・人口減少に加え、地場産業や地域経済・社会の崩壊ともいえる衰退が続き、地域の活性化が重大な課題となっており、地元企業としても抜本的な企業変革が迫られています。

ハウツーに終わらせない取り組みに

 同地域会経営委員会では、「ステップ1」の取り組みにあたっては、その目的とする「同友会3つの目的」「労使見解(中小企業における労使関係の見解)」「21世紀型中小企業づくり」を深め、企業で具体的に実践することにつなげられるものにすることを確認しました。

 また、このプログラムを単なるハウツーやチェックマニュアルにせず、取り組みを通じて、先の目的が深まり、各会員や企業がその体現者となるものにしなければいけない、と議論しました。

 これまで同委員会では「労使見解」を学ぶ例会を重ね、ここ3~4年は労使見解、経営指針、社員教育の三位一体で具体的な実践に学ぶ例会を実施してきました。

 今回は、「ステップ1」を「長年にわたり取り組み、企業と同友会を発展させる大切な取り組みとしよう。丁寧にやろう」という意見が多くありました。

体系的に学べる研修

 実際の取り組みにあたっては「ステップ1」全体が体系的に一体のものとして把握されることが必要と考え、全7講座7カ月間にわたる研修会としました。

 まず初回を「ステップ1」の前提となる、「同友会3つの目的」「労使見解」「21世紀型中小企業づくり」の研修会を行い、その後、5つのカテゴリーごとに講座を行い、最後に総括するまとめの会を設けて、半年前とは違う気づきや理解を確認できるようにしました。

 もうひとつの特徴は、大項目ごとに5人の座長、小項目ごとに22人の報告者を割り当て、他社の診断・分析からも学び合う形式にしたことです。

 各カテゴリーの座長は、そこで問われていることについて問題提起し、小項目の報告者は、「自社の現状と課題」をまとめて各十分間で報告しました。

22の実践事例に学ぶ

 プログラムは「セルフ」アセスメントですが、他社の詳細な事例や診断・分析を聞くことによって、より「客観的な」セルフアセスメントとなり、あるべき姿や課題をより具体的に描くこともできるようになっていきました。

 各報告では、通常の例会での大まかなテーマによる報告と違い、「ステップ1」に基づく詳細で個別の課題に焦点が当たる分、報告者は事業内容の資料などの準備とともに自社を深く見直し、具体的で詳細な内容となりました。

 参加者は研修会を通して、全5項目での22社の経営課題の詳細な生きた実例と資料を手に入れることができました。

勇気づけられ、覚悟を促される学び

 大変な経済・社会情勢のもと、時代の転換期として、抜本的な「企業変革」が求められています。しかし大企業を中心とした不況打開策、企業変革はいまだにコスト削減、大リストラ敢行でしかありません。

 その中で、「ステップ1」では、その企業変革を、「付加価値を高める」(最終項目V)ことで打開していこう、さらなる発展をめざそうとしています。このことは、この「ステップ1」に取り組んだ多くの会員が勇気づけられ、誇りに思える点となりました。

 第I項目「経営者の責任」で、座長である廣岡健二さんは次のようにまとめています。

「経営者は、このプログラムによれば、全ての指標をレベル『5』にしなければならない責任がある。社員の働きがい生きがい、企業の発展、また地域や社会への貢献のため『5』をめざす。その気概、志を、経営者の責任として問われている。心に刻むことは、みんな自ら望んで経営者になった(そうでないなら今すぐ経営者は辞めるべき)。ここでは、その経営者の覚悟が問われている」。

社員との評価の違いが経営課題~理事が率先して活用し、半年で800冊普及

 愛知同友会(会員数2968名)では、経営労働委員会が中心となり、昨年のテスト版を理事会で実施するなど、中心役員がまず使いながら、活用を進めていきました。

 今年度は「ステップ1」発売開始直後の4月21日に、県総会の分科会で取り上げ、テスト版による自社課題発見の体験談を副代表理事2名から聞くとともに、参加者全員がその場で診断を実施しました。

 この分科会を通じて支部・地区の役員層への理解・浸透をはかり、プログラム普及の足がかりとしました。

 これ以後、各地区役員会や例会などでプログラム体験の取り組みが始まっており、「ステップ1」販売数は800冊(11月末時点)となっています。

 10月7日の「あいち経営フォーラム」の分科会では、プログラムを「知る・触れる」から一歩進んで「自社に活(い)かす」内容とすることを目的に実施。八嶋・中同協経営労働委員会副委員長(富山同友会理事)の活用事例の報告に学びました。

 八嶋氏は自社診断をただ行うのではなく、それによって課題を発見し、具体的実践につなげてはじめて意味があることや、社内コミュニケーションのツールとしての活用事例などを報告しました。

 さらに、この分科会では、参加者全員がフォーラム当日までに「ステップ1」を実施し、自社課題を抽出。当日は課題を記入したシートを参加者が持ち寄り、グループ討論で掘り下げるという試みを行いました。これにより、活動にプログラムをどう生かすか、可能性が示されました。

 この間の会員の活用事例の特徴として、社員も「ステップ1」で自社の診断を行い、経営者の評価と比較分析し、課題をより鮮明にする取り組みがよく見られるようになりました。

 経営者の自己診断に他の方からも意見を得ることで客観性が増すとともに、具体的に経営を語り合うためのコミュニケーションツールとしても役立っています。愛知同友会では今後、会員同士での活用を進めていく予定です。

「指針創る会」から各支部の取り組みへ~第2弾はe.doyuへの200社登録

 香川同友会では、「ステップ1」の啓蒙活動として、今年4月の理事会より冊子のPRを開始し、「第5期経営指針を創(つく)る会」(2009年4~9月)の第1講で、受講生、助言者の総勢66名に配布し、実際に冊子に記入しました。

 最終講では再度チェックを進め、経営課題を明らかにし、実践にむけた取り組みをしてきました。

 10月より全国5000件(香川の自主目標200件)のデータ登録をめざして、県内各支部の目標を設定し、役員会や例会で、内容の説明および、冊子の販売を行ってきました。

 11月14日の全県行事である経営研究集会では、総計230冊以上の販売を達成することができました。

 販売に続く第2弾の活動として、各支部購入者一覧を作成し、e.doyuへの未登録者へ個別に登録の依頼をするとともに、役員及び登録済みの方、創る会メンバーには、未登録者へのフォローをお願いし、200社登録に向けた活動を進めています。

 冊子からの気づきは、「労使見解」や「自主・民主・連帯の精神」など、同友会での活動の中心的なテーマに沿うもので、支部例会、経営指針を創る会で、実践報告等をしていきたいとの声もあり、今後の活用の広がりに期待が高まっています。

香川同友会経営労働委員長(株)みつば 社長 太田勝英

「中小企業家しんぶん」 2009年 12月 5日号より