「企業変革支援プログラムステップ1」回答結果から

 昨年3月末に中同協が発刊した「企業変革支援プログラムステップ1」(以下、ステップ1)は、発刊から10カ月ほどで約8700部が普及されました。各同友会では、経営指針成文化セミナーの一過程に取り入れたり、支部例会のテーマをステップ1の項目に沿って設定するなど、積極的に活用されてきています。

 中同協では11月を企業の健康診断月間として、ステップ1の取り組みを訴え、1063社から回答が寄せられました。この集計結果と、これをもとに大野・中同協経営労働委員長が1月14日の中同協第3回幹事会で行った問題提起を紹介します。

 なお、この結果は、2月12日、中小企業問題全国研究集会(in京都)特別企画にも生かされます。

集計結果をどう生かすか 経営と活動の見直し、そして対外発信を

 中同協経営労働委員長 大野 栄一

中小企業は評価されているか

 昨年、政権交代とその後の金融円滑化法案等で、中小企業に焦点をあてた報道が相次ぎましたが、実態を正確に把握しないものが多く見受けられ、残念でした。

 また、新政権の「新成長戦略」では、「中小企業」の記述は3カ所で、いずれも中小企業の役割を反映したものではありません。中小企業の実態を十分に把握せずに政治が行われているのではないかと感じます。

ステップ1の回答結果に共通する課題

 では、私たちは何をすべきでしょうか。

 『企業変革支援プログラムステップ1』の集計結果からは、大項目「経営者の責任(経営理念の成文化とリーダーシッププロセス)」に属する各項目の平均ポイントが相対的に高い一方、大項目「付加価値を高める」の中の「新事業(第二創業や業態転換などを含む)の取り組みへの仕組みと体制」が最も低く、同じく大項目「付加価値を高める」の中の「間接部門(間接業務)サービスの運営」、大項目「経営理念を実践する過程(方針・計画策定プロセス)」の、「経営方針と経営計画の実行と評価」などが低いことがわかりました。

 「労使見解」(中小企業における労使関係の見解)の普及は、年月をかけて進んできましたが、企業経営に具体的にどう生かすかについては進んでいない、また経営指針は成文化したけれど、実践が不十分なことを示しています。

 全ての項目の平均ポイントは2・1です。この2という水準は継続的な取り組みがされていないことを現すものです。同友会会員企業はまだ取り組みが個別・部分的なものにとどまっているということであり、これこそ中小企業経営の問題点といえます。

経営指針成文化運動の弱点

 経営指針は期を経るごとにポイントが上昇しますが8~10期連続して作成してはじめて仕組みができ、本格的な成果が確認できること、ただしカテゴリー[5]「付加価値を高める」の「取引先(仕入先、協力企業、元請け等)との関係強化」やカテゴリー[4]「市場・顧客及び自社の理解と対応状況」の「苦情対応や顧客との関係強化」などは経年変化が大きくなく、経営指針の有無による差が生じないことも確認されました。

 この点については、同友会での経営指針成文化運動のあり方についての検討が必要です。「同友会で学んだつもりになっていないか」、全体として理論と実践の統一が大きな課題だといえます。

中小企業の実情を発信しよう

 同友会は日本が誇るべき自主的な経営者団体です。だからこそ、私たちの会員の実情を、国や地域に正確に伝え、施策に反映していく責任があります。

 憲章制定運動、経営指針成文化運動、景況調査が示すデータ、企業変革支援プログラムによるデータ、同友エコの環境経営の実践についてのデータ、それらがe.doyuなども用いて集約され、そして分析されたものを発信していく必要があります。

 各同友会で、会員の実践をすすめ、役員一人ひとりがそうした運動をリードしていく使命を持っていることを確認していただきたいと思います。

中同協第3回幹事会での問題提起から(1月14日)

「中小企業家しんぶん」 2010年 2月 5日号より