新たな6次産業で北海道を活性化しよう―第6回全道農業関連部会交流会inだて【北海道】

「農業者も自立した経営者に」と始まった農経部会―地元の食材つかった創作メニューに舌鼓

 地域経済が疲弊する中、地域を元気にしたい、若者が希望を持って働けるような地域にしていきたいと、その地に生きる中小企業家たちが同友会に参集し、第 1次産業を営む方の入会も増えています。北海道同友会では、第1次産業に携わる会員が255名。帯広支部はじめ6支部に農業経営部会があり、2月4日には「第6回全道農業関連部会交流会」が開かれましたので紹介します。本紙では5月から、地域再生に向けた第1次産業と中小企業家の連携や新たな仕事づくりへの挑戦などの連載を始めます。

会員数の4・7%が1次産業

 北海道同友会が2月4日、「第6回全道農業関連部会交流会」を伊達市のホテルローヤルで開き、88名が参加しました。

 会員数が5300社を超える北海道同友会。1次産業の会員は255名で、会員数の4・7%を占めています。

 農業者も自立した経営者を目指そうと、帯広支部に農業経営部会が初めて作られたのが、1989年3月のことです。以来、旭川支部、札幌支部、しりべし小樽支部、西胆振支部、オホーツク支部の6支部に農業に関連する部会が生まれ、収穫交歓会やフードフェスタなどを積極的に行っています。

 一言で農業といっても分野はさまざま。経営の取り組みもずいぶん違います。部会の活動も地域の特性にあった、特徴的な活動を繰り広げてきました。

 時間とともに、農業経営の実践と部会の取り組みを交流しようとの機運が高まり、2000年に初めて3支部の農業経営部会の交流会を開き、現在の「全道農業関連部会交流会」へと発展してきました。

農業は地域を支える基幹産業

 今回で6回目となる交流会は、室蘭、登別、伊達地域を範囲とする西胆振(にしいぶり)支部が設営を担当しました。

 開催地となった伊達市は、北海道の南部に位置し、明治維新で土地や家禄を失った亘理伊達家領主と家臣団の集団移住による開拓に始まり、北海道農業発祥の地ともいわれています。

 現在も農業は地域を支える産業であることから、「“志民”のまち『だて』で原点回帰~われら、新しい時代の開拓使~」をスローガンに掲げました。

市民から“志民”へ

 はじめに、元広島県総領町の教育長を務めた人間幸学研究所所長の和田芳治氏が、「市民から“志民”へ」をテーマに基調講演。

 和田氏は、「天気が悪い、政治が悪いと今の自分の環境を他の人のせいにしていませんか。どの時代にも、どんな困難にも負けず、道を切り開いてきた人がいます。問題はできるのにやろうとしないこと。皆さんの会社や家庭に笑顔があふれていますか。ありがとうの言葉があふれていますか。殺伐とした世の中だからこそ、笑顔やありがとうがまちや会社に元気をもたらします。笑顔もありがとうも、自分で作り出せるのです」と呼びかけました。

 続いて、伊達市長の菊谷秀吉氏が「伊達はなぜ元気なのか~挑戦なくして未来なし」と題して基調講演を行いました(要旨別掲)。

 基調講演を受けて、9つのテーブルに分かれてグループ討論に入りました。参加者は、それぞれの地域での取り組みとともに、自らの実践を出し合いながら、農業経営や企業の事例について具体的に突っ込んだ意見交換が行われました。

懇親会は、地域の食自慢で大盛況

 各支部が持ち回りで開催する交流会。開催地として力が入るのが懇親会です。今回は、“食の宝庫・西胆振”を満喫いただこうと、会員12社から寄せられた農産物や加工品も使い、ホテルの料理長がご当地らしい創作メニューで腕をふるいました。

 “カチョカバロ((株)牧家)のオントースト”“ホタテ((株)北海スキャロップ)のポワレ柚子胡椒風味のブールブランソース添え”“ななつぼし(前田農園)の炊き込みごはん”など、地元の食材がすばらしい料理に姿を変えて運ばれます。

 壇上では、食材を提供した会員が、自社の商品について大いにアピール。テーブルいっぱいに並んだ料理に舌鼓を打ち、会場のあちこちから「おいしい」と大好評でした。

6次産業で地域と産業の発展を

 食料自給率(カロリーベース)が200%を超える北海道ですが、国産農産物に対する消費者のニーズの高まりを感じる一方、WTO・EPA等国際農業交渉の今後の行方もあり、農業を取り巻く環境は不透明な中にあります。

 「1次産業を担う皆さんと、2次産業、3次産業を担う会員とがしっかりと連携し、新しい6次産業で北海道を活性化しよう」(守和彦・北海道同友会代表理事)。産業連携による地域の活性化が、交流会の場からスタートしています。

【基調講演 伊達はなぜ元気なのか~挑戦なくして未来なし

伊達市長 菊谷 秀吉氏

 財政が厳しい中でも「夢を与えてほしい」という市民の声にどうこたえるか、悩みぬいて行き着いたのがウェルシーランド構想(だれもが豊かに生きれるまちづくり)でした。高齢者の方々のための新しい「生活直結型サービス」を民間事業として創出してゆくことで、安心・安全に暮らせるまちづくりと地域経済の活性化を目指した官民協働のまちづくりの取り組みです。

 伊達市の人口は約3万7000人。1985年以降ほぼ横ばいで推移しており、北海道ではまれな人口が減らないまち、道内外からの移住者が多いまちといわれてきました。一方、若年層の都市部への人口流出が続いており、高齢化が切実な課題となっています。人口推計をみても、2030年には75歳以上の高齢者が現在の6割増しになるとの結果でした。

 高齢化が進むと、外出がおっくうになる人が増えます。特に男性の高齢者は顕著です。また先日調べてみると、高齢者の44%が1人または2人の高齢者世帯で、人と話す時間が1日3~5分だというのです。移住計画から住宅、そして高齢者の交通手段というように取り組んできましたが、次の課題は地域の人々のコミュニケーションだと思うのです。

 そこで、今考えているのが、高齢者には伊達の基幹産業である農業にかかわってもらうことです。といっても、出面取りといった重労働というわけにはいきません。年配の方々はまじめで丁寧に仕事をしますので、軽作業で手間のかかるものなどです。

 これからは、高齢者の方々が産業の面でも生活の面でも鍵になります。お1人おひとりに役割を持っていただき、集団で作業に取り掛かることで頻繁なコミュニケーションをとることができ、それが地域の元気のもとになっていきます。このような活動に支援をするというのが行政のやるべきことだと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2010年 4月 5日号より