地元食材の高級お好み焼き店に若者の列~(株)GOOD FIELD 社長 芳野 裕士氏(愛媛)

ニコニコ、イキイキ、ランランランと4店舗

芳野社長

 愛媛県松山で、若者や女性に人気の、お好み焼き店「すみれ」は、地場産素材や食材の自社栽培など、「ニコニコ、イキイキ、ランランラン」と挑戦を続けています。

 お好み焼き1枚800~1000円ほどする店の前に、若者が並んで待っている。「ちょっとがんばって(お金を出して)、おしゃれにお好み焼きを食べたい」という若者や女性に人気の、松山で噂のお好み焼き店「すみれ」。(株)GOOD FIELD(グッドフィールド、芳野裕士社長、愛媛同友会会員)は、愛媛県内に3店舗、岡山・倉敷に1店舗、「すみれ(スマイルの日本語読み)」を展開しています。

30歳で公務員から独立創業

すみれR11BP店

 松山市役所に勤める公務員だった芳野氏は、7年前、高校時代の後輩が若くして事故で亡くなったことで、「彼の分まで生きよう」と、起業を決意。 30歳で現在の会社を創業しました。

 「なにも特技はないが、食べるのは好きだった。松山にはない新しい形のお好み焼き屋をやろう」と、家賃6万円、12坪の裏路地にある小さなお店からスタート。「何も知らなかったから、好きなようにやってみたんです」と言いながら、今では生産量日本一を誇る「はだか麦」などの愛媛県産食材を活用し、「地域密着型ビジネス創出事業」(2009年)にも選ばれています。

 新規オープンするという「笑顔咲く『すみれ』R11BP店」のプレオープン時に取材(4月21日)。高級なログハウスに夕陽が見える大きな窓、厨房では招待客に広島風お好み焼きを焼き、ホールスタッフは客席のお客様の目線まで足を折って、にこやかに対応していました。

 生地は高級薄力粉を使用、オリジナルソースは甘辛で深みがあります。麺は広島の専用生麺を使用し、釜でゆでています。現在、無添加で化学調味料の入っていない、原料の野菜も無農薬というソースを開発中です。

ニコニコ、イキイキ、ランランラン

すみれのお好み焼き

 (株)GOOD FIELDでは、「ニコニコ、イキイキ、ランランラン」を会社の行動指針としています。

 「ニコニコはいつも笑顔で、イキイキは自由闊達(かったつ)に、そして主体的に、ランランランは手をつないでスキップするイメージで、分かち合い、助け合い、協力しあう関係づくりです」と芳野氏。

 この行動指針が採用基準ともなってます。正社員11名中5名が女性で、統括マネージャーも女性。「スタッフ教育や店づくりに女性の感性、気配りはとても大切」と、波がある対応にも全社員と毎月面談して解決していきました。

 すみれでつかっている食材はほとんどが地場産材。しかしメニューや案内には地元産との表示はありません。

 「地場のものを使えば、材料費は高くなる。でも、そのことをうたうことで独自性を追求しているわけではなく、『おいしいお好み焼きだけど、どうして?』と聞かれたときに、そのことがお客様に知られて、それが口コミで伝わっていくことを大事にしています。そのためには、『すみれで働くのが好き』で、社員が心の扉を開けて、主体的に仕事をするようにならないとお客様には伝えられません」と芳野氏。

自分たちで食材を栽培したい

 2008年に愛媛同友会に入会し、さまざまな分野の経営者に刺激をもらえるのが楽しいと、積極的に例会にも参加しています。

 食材を自分でも栽培しようとトマトに挑戦したこともありましたが、1200本の苗を植えたものの、温度管理に失敗。いまでは自然の好きなマネージャーが先頭に立って無農薬栽培の農業を学び、社員全員で野菜を作り収穫できるようになってきました。

 年間通じて自然栽培のキャベツを使うことにより美しい自然を取り戻せると、志高い地元農家と契約、魚介類や肉なども地元のものを使っています。

夢は地球規模

 経営状態が良くても悪くても、金融機関の支店長に毎月経営状況を報告し、相談に乗ってもらうとともに支援も得ています。

 「グレーな世の中で、暗いイメージがあるが、すみれに来たお客様は、おなかがいっぱいになるだけでなく、自らの持つエネルギーが自然に出てくるようになってほしい」と、地元のはだか麦を使った新メニュー「えーかお焼き」を発表。

 「当社のメニューはビールにあうからベルギーやドイツに出店してはどうか」と、スタッフは地球規模で夢を膨らませています。

会社概要

創業 2003年
設立 2005年
資本金 300万円
社員数 正規11名、パート・アルバイト50名
業種 お好み鉄板焼き店
電話 089-934-2525
URL http://kk-goodfield.com

「中小企業家しんぶん」 2010年 6月 25日号より